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たいとる

Withコロナ時代に向けたリサーチ業界の準備 第22回

さぶたいとる

No.1調査と調査の信頼性について

ほんぶん

JMRAインターネット調査品質委員
リサーチ・コンサルタント
岸田 典子


 今回は、No.1調査の問題点について取り上げます。調査の信頼性のために、私たちリサーチャーや調査業界に何ができるのかを一緒に考えてみましょう。

No.1調査の問題点

 「当社の商品〇〇は、〇〇のカテゴリーで1位を獲得しました。」と書かれた広告を目にしたことはあるでしょうか。No.1調査とは、このような比較広告で使用するための調査のことを指します。このNo.1調査が今、客観的ではない、非公正な調査が多いのではないかと問題になっています。No.1の結果が欲しくて実施する調査であり、本当かどうか検証できない形でクライアントの広告内で調査結果が独り歩きしているケースがあります。

 テレビなどでキャンペーンを打って数字が伸びたタイミングで実施し、No.1になったところで調査を終了するといった恣意的で、結果ありきの調査もあるようです。また、1位になることを請け負う営業スタイルもあるようです。調査で1位にしようと思えばいろいろな方法が可能です。困ったことに、広告上には実際にどのような調査が行われたのか、何の記載もないものがほとんどです。

非公正な調査の例として、こんなものがあります。

  • 調査設計についての記載がない。
  • 母集団の構成比がゆがんでいる(若い人に受けている商品なら、構成比を若い方を多くするような操作が可能)
  • 十分なサンプル数がない。
  • 回収状況を見て、結果が1位になったところで恣意的に調査を終了する。
  • 2位との間に有意な差がない。
  • とにかくカテゴリーを細分化して、無理やり1位になれる商品カテゴリーを作る。 

 このような作為のあるやり方は、情報のターゲットとなっている最終的な顧客、つまりクライアントにとっての顧客である消費者に対して、信頼できる情報を提供していないと言われても仕方ないのではないでしょうか。「いや、そこまではしていないよ」と言ったところで、どこかにそれを保証するものがあるでしょうか。

リサーチの倫理

 マーケティング・リサーチにおいては、誰に、どのような価値を提供するのかを明確にするSTP、「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」を見つけ出すように調査を企画することは、通常の仕事です。そのような調査と「No.1となるカテゴリーを見つけ出す」ことは、一見近いことのように感じられるかもしれません。
 多くのリサーチャー、よい営業担当は、いつもクライアントを見て、その要望に応えようとしています。それ自体はよいことですし、目先の売上も大事ですが、クライアントの先にいる最終的な顧客、つまり情報の受け手である消費者(一般の市民)、調査協力者も含めた社会全体に対して責任があるというもっと大きな視点をもっているでしょうか。

 どこまでが許容範囲で、どこからが倫理的に問題なのでしょうか。結果だけを欲しがる気持ちも理解できますが、恣意的な情報で消費者を惑わしていないかという視点で調査を見直すことが必要でしょう。調査の信頼性を軽視し、安さと手軽さに流されることは、調査の存在意義に傷をつけることになってしまう危険があります。

 調査結果をどう扱うかは、クライアントの自由という考え方をする人もありますが、クライアントも間違うことも失敗することもあります。調査会社は、いつでもクライアントの意向に従えばよいわけではない ことがあります。リサーチャーとしては、いつでも「間違ったことは間違ったことだ」と言え、クライアントに対しても正しい調査、よりよい提案ができる自分でありたいと思います。

調査の信頼性に向けて

 では、どうすれば調査会社は、提供する調査の信頼性を保証し、その調査結果に責任をもてるでしょうか。
例えば、以下のような案があります。

  • 検証可能で、信頼性ある調査を提案し、実施する。  (十分なサンプル数をとり、サンプル構成比に配慮し、検証方法について記載するなど)
  • 調査結果が誤解されることがないよう、調査設計や調査結果に関する情報を必ずきちんとクライアントに説明する。
  • 調査設計についての情報を必ず広告の中または企業サイト上に掲載してもらう。
  • 非公正な調査の具体例や問題点をクライアントに理解してもらえるようJMRAから発信する。
  • 非公正な調査は、マーケティング・リサーチ綱領に違反し、調査に対する社会的信頼を損なうとJMRAから発信する

みなさんもどうぞ一緒に考えてみてください。

2022.1.14掲載