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たいとる

Withコロナ時代に向けたリサーチ業界の準備 第10回

さぶたいとる

 オンラインでのコミュニケーションの活性化

ほんぶん

JMRAインターネット調査品質委員
リサーチ・コンサルタント
岸田 典子

コロナ感染拡大中で、リモートワークの必要性がますます高まっています。そんな中でリモートワーク化が難しい部署があります。 多くのリサーチ会社においても、個人情報を扱う部署、調査の実施関連、管理部門では対面で出社が必要な仕事がまだ多く残っているようです。また人間関係がまだできていなかった新人や異動や役職が変わったばかりの人にとっては、オンライン中心の仕事はとりわけ大変だったことと思います。
リモートワークによって無駄な会議が減り、効率的に時間を使うようになったという声が聞かれる一方で、悩みを相談しにくい、新しい発想を生み出しにくいという弊害も生まれています。

定期的に社内のオンライン・ミーティングが行われているところも多いと思いますが、いわゆる情報伝達中心のミーティングが多いようです。社内のオンラインのコミュニケーションをもっと活発にアイディア豊かなものにするにはどうしたらよいのでしょうか。
オンライン・ミーティング中、誰もが遠慮なく自発的に会話できる雰囲気をつくること大切です。 今回は、チーム・ビルディングやコミュニケーション活性化のためのオンライン・ワークショップの運営から学んだオンラインでの社内のチーム作り、オンライン・コミュニケーションのヒントを共有します。

1.環境づくり

リモートワークでは、PCと通信環境を整え、一人で集中できる場所をもつことが必須です。しかし必ずしもすべての人がもっているものではありませんでした。リモートワークを余儀なくされ、あらためて自宅の環境について考え直した人も多かったと思います。逆にPCと通信環境さえ整えられれば、ワーケーションなど遠方のリラックスできる環境からも通常通り仕事ができることが広く認知されるようになりました。
その中で、今課題とされているのはオンラインでのコミュニケーションの取り方です。悩みを相談しにくい、新しい発想を生み出しにくいといった問題は、オンラインでのコミュニケーションが業務連絡中心となり、雑談が減少していることが原因となっているようです。一見無駄に見える自由な会話からの刺激は、アイディア、発想、課題の発見につながるだけでなく、新しいやり方を試みるモチベーションにもなり、メリハリのあるリモートワークを行うためにも大切です。リモートワークが長期化する中では、「雑談」の意義を認め、意識的にそのための時間を作ることが必要になっています。

2.「顔出し」は重要

通信状況が不安定なときや外出先からなどを除き、可能なかぎり顔出しをしてもらうことは大切です。対面と比べ、オンラインでは顔色や表情、動作などの非言語のコミュニケーションがどうしても不足します。単なる業務連絡から一歩踏み込んだ会話をするためには、黒い画面に向かって話しづらいものです。カメラをオンにできない通信環境の人以外は原則「顔出し」にするルールにしたほうがよいでしょう。

3.チェックイン、チェックアウトの時間をとる

オンライン・ミーティングを活性化するには、要件の伝達だけでなく、参加した全員が必ず声を出す機会をもつこと、そしてそれを習慣化することが大切です。
「今、関心をもっていること」「やりたいこと」「気になること」などの雑談をお互いに話し合ったり、それについて反応したり、ちょっと質問したりといったリアクションは参加者全員が自然にできているでしょうか? 悩み事を相談をするのは勇気がいるものです。「悩みがあれば言えよ」というだけでは、言わないよりもいいですが、相手は言い出しにくいものです。安心、安全の場というのは、日常のコミュニケーションを通して作られます。話をするきっかけとなる場や雰囲気を作ることが必要です。

4.少人数のグループで話をする

話を聞かせるだけでなくお互いに話しあう時間をとったほうが、参加者の満足度は大幅にあがります。人数が多い場合は、参加者全員に話をしてもらうために、ブレイクアウトルームで3~5人程度の小グループに分けて話をする時間をもつことが有効です。同じ組み合わせを繰り返しても、いろいろな組み合わせで話をするのもよいと思います。

5.全部自分で仕切ろうとしないで、プロセス(場)に任せる

ミーティングを設定するホスト自身が忙しくて十分に時間がとれないこともあります。ホストを他の人に譲ってもミーティングは継続できます。自分が参加できない日もチームのコミュニケーションの時間は大切です。上司やホストが全部仕切ろうとがんばる必要はなく、ルールだけを決めて参加メンバー主体で実施可能です。そのような自由で余白の部分があることが参加者の自発性を引き出すことにつながります。

6.チャット、クラウド、ビデオ(動画)による情報共有の活用

社内コミュニケーションツールとしては、メールが正式な伝達として情報が一か所に集約されるので便利ですが、関係者全員に開封され返信されるまでに時間がかかります。チャット機能を使った情報共有で即時の情報伝達が可能になりました。アジャイルな組織づくりには欠かせない存在です。
クラウドサービスは、大容量のデータ保存や受け渡しツールとして幅広く使われるようになりました。またGoogleのドキュメント、スプレッドシート、スライド、ジャムボードなどのサービスは、関係者と共有しながら継続的にアップデートできます。オンラインのミーティングでの協同作業では、非常に便利でよく利用されます。
会議に参加できない人がいるオンライン・ミーティングでは、参加者に断って録画をさせてもらい、その動画を共有します。その動画をYouTube🄬の限定公開などを使って関係者に共有すれば、長いミーティングであっても再生速度を早くして時間短縮でき、後から見る人に抜けもれなく情報が伝わります。議事録やメモ作成の時間が不要になるだけでなく、通常議事録では書かれないような意思決定者の懸念や実施可能性の本音などまで、より正確な情報を共有できます。終了した会議の情報共有のために使う時間を最小化できます。
このように私たちは、情報の伝達や共有のしくみの大きな変化の中にいます。この新しい時代に合ったセキュリティのしくみも同時に考えていく必要があります。リサーチ業界の生き残りのキーワードは「アジャイル」です。組織やしくみとしてすばやく決断し、動くことが必要とされています。

 


コロナ禍の中、オンライン・コミュニケーションは使い方しだいでもっと便利で楽しいものになります。ぜひ積極的に楽しんでいただければと思います。

2021.1.5掲載