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たいとる

Withコロナ時代に向けたリサーチ業界の準備 第11回

さぶたいとる

ハイブリッドオンライン

ほんぶん

JMRAインターネット調査品質委員
リサーチ・コンサルタント
岸田 典子

1.ハイブリッドオンラインとは

ハイブリッドオンラインとは、どのようなものでしょうか?
ハイブリッドチームFを主宰する福島毅氏は、自身のサイト『ハイブリッドオンラインの世界』で次のように述べています。
「ハイブリッドオンラインとは、リアルのイベントをオンラインに配信するだけではなく、オンライン側からの質問、意見、感想などをリアル会場にフィードバックする双方向のコミュニケーション技術です。イベントの単なる中継は今まででもありました。しかし、ハイブリッドオンラインでは、テレビのように見る一方、聞く一方で、会場とは一体感がとれなかったイベントを、リアルとオンラインが一体感を持って双方向に交流できるものに変える画期的な仕組みです。」
https://hybridteamf.jimdofree.com/

コロナ禍で、距離や時間、金額的な制約を超えて参加者を集められるオンライン開催イベントのメリットが知られてくるにつれ、リアルに加えてオンラインも同時に扱うハイブリッドで提供したいというニーズが強くなってきました。オンラインでのコミュニケーションは一般的になってきましたが、ハイブリッドオンラインはそれなりに難易度が高くなります。2018年に私は、IAF(国際ファシリテーター協会)大阪大会のハイブリッドオンラインのオンラインファシリテーターをしたことがあります。リアル会場の様子が世界各地の参加会員にライブ中継されるのを体験し、ハイブリッドオンラインの難しさをはじめて知ると同時にその可能性を感じました。その後ハイブリッドオンラインを数多く手掛けているハイブリッドチームFに所属して私が実践から学んだことを共有したいと思います。

2.ハイブリッドオンラインにはいろいろなタイプがある

リアルの会場とオンラインの参加者数、講師の人数や講師のハイブリッドオンラインへの習熟度、会場の機材の整備状況によって、さまざまなバリエーションがあります。今後もコロナの状況により、リアル会場とオンライン会場の参加者比率は変化します。また、イベントの目的に合わせどの程度、双方向性の要素を入れるかによって、どのような準備で備えるかが変わってきます。ハイブリッドオンラインでは、リアル会場とオンラインの両方に気を配らなければならないことから、講師のハイブリッドへの理解とサポートスタッフの準備の必要度がより高まります。

 1) リアル会場に講師、大人数のリアル会場参加者、少人数のオンライン参加者のケース 
  講師は会場を中心に考え、オンラインはサブ的な存在として進行しがちです。オンライン参加者がテレビを見ているような感覚になってしまうと当事者意識が薄れてしまいます。聞くだけにとどまらない、飽きさせない工夫が求められます。
 2) リアル会場に講師、少人数のリアル会場参加者、大人数のオンライン参加者のケース
  講師は、オンライン参加者によりしっかりと目を向けて語る必要があります。さらに会場参加者がせっかく来たのにと失望しないよう、会場ならではライブ感も伝えたいポイントです。
3) 進行役のみが中継会場、講師や参加者はすべてオンライン参加のケース(無観客試合風)
  講師はリモートで参加し、参加者もオンライン参加のケースです。このような場合は、進行役が欠かせません。講師のオンラインオペレーションをリモートでしっかりサポートするための事前準備やリハーサルを入念に行っておきましょう。

3.ハイブリッドオンラインでの留意点

ハイブリッドオンラインでは、どのような留意点があるでしょうか?
目指したいのは、リアルとオンラインの一体感、双方向感です。

 1)  オンライン参加者に配慮する 
   オンライン参加者に向けて単に一方向で中継するだけでなく、講師も会場参加者もオンライン参加者の存在を忘れないようにする工夫が必要です。例えば、会場の大画面にオンライン参加者の顔を映すことで、講師もリアル会場の参加者にもオンライン参加者にも意識が向きます。
 2) ライブ感を失わせない

講師がパソコンを向いてまったく動かないのでは、せっかく会場にきた会場参加者にとっては残念です。演習やワークのあるイベントの場合、講師から会場やオンラインの参加者に呼びかけるような進行を心掛けるとよいです。またサポートスタッフが、会場のカメラワークで講師や参加者の動きを追い、オンライン参加者へ臨場感を伝えることが効果的です。
 3) オンラインファシリテーターを置く

オンライン参加者対応をするオンラインファシリテーターと協同することで、リアル会場との有機的な動きが可能になります。オンラインファシリテーターは、リアル会場の進行に合わせて、会場での問いをオンライン参加者にチャットなどで問いかけ、意見を求めます。また会場でグループディスカッションを行う時には、オンライン上でもZoomなどのブレイクアウト機能を使って小グループに分け、オンライン参加者同士で話し合ってもらうこともできます。さらにオンラインファシリテーターがオンラインのグループが話し合った結果をリアル会場につないだり、オンライン参加者に会場に向けて発言を促したりすることで会場とオンラインの双方の交流が活性化します。このような役割を会場の講師だけで行うのは難しいのです。
 4) 事前準備やミーティングを入念に行う

リアル会場とオンラインでの一体感を出すためには、事前に進行や時間配分を検討し、リアル会場の講師とオンラインファシリテーターが事前に情報共有をしておく必要があります。双方向の交流があるハイブリッドオンラインの価値を高めるためには、事前の準備が欠かせません。
 5) 機材の知識と現場経験

ハイブリッドオンラインでは、リアル会場とオンラインとの間で音声と映像がスムーズに流れ、必要なシーンが適切に切り替えられるかなどの機材オペレーションがとても重要です。音声と映像の品質が悪ければ、参加者の不満やストレスが高まり、リアル会場のみ、またはオンラインのみで実施をした方がましだという感想につながりかねません。機材の知識や現場経験がものを言います。

 
さて、ここまでハイブリッドオンラインについて述べてきましたが、いかがでしたでしょうか?

最近はイベントをYouTubeライブやFacebookライブにつなげ、さらに大規模な視聴者に配信するようなものも多くなりました。このような大規模の企画が、個人や小規模な団体でも実現可能になってきたことは時代の変化といえるでしょう。二年前JMRAのある委員会で、リサーチやリサーチ業界についてもっと世の中に知ってもらうためにはどうしたらよいかというブレストをしたことがあります。その中の一つに、リサーチャーがYouTuberになって世の中に発信するというアイディアがありました。そのアイディアはすでに実現可能なものになっています。 JMRA発信のオンラインイベントも増えています。今後のリサーチ・インサイト業界で新しいチャレンジが広がるのが楽しみです。

2021.2.9掲載