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たいとる

Withコロナ時代に向けたリサーチ業界の準備 第21回

さぶたいとる

多様性・平等性・包括性DEI(Diversity, Equality & Inclusion)グローバル調査

ほんぶん

JMRAインターネット調査品質委員
リサーチ・コンサルタント
岸田 典子


 

多様性・平等性・包括性(DEI)は、欧米を中心にクライアント企業に最重視されるマーケティング課題の1つとなっており、リサーチ・インサイト業界が今後どう対応していくべきか真摯に検討し、向き合うことが求められています。みなさんもぜひ一緒に考えてみましょう。

「多様性・平等性・包括性(DEI: Diversity, Equality & Inclusion)」調査
GRBN(Global Research Business Network) は、調査業界団体の中で特に事業者を中心とした業界団体の国際的な組織で、JMRAも参画しています。
APRC(Asia Pacific Research Committee)についてはご存じの方が多いかもしれませんが、これはGRBNのアジア・太平洋地域の組織です。
https://grbn.org/

 

今年10月~11月にかけて、「多様性・平等性・包括性(DEI: Diversity, Equality & Inclusion)」に関する調査へのご協力をJMRAより業界関係者のみなさまにお願いしました。
実施や回答にご協力くださったみなさま、大変ありがとうございました。
JMRA: GRBN「多様性・平等性・包括性調査」(実施は終了)
https://www.jmra-net.or.jp/activities/trend/international/20211010.html

この調査は、GRBN に参画している業界団体の13ヵ国で実施され、各国のリサーチ業界関係者と一般市民(勤労者)を対象にしています。
多様性・平等性・包括性(DEI)は、欧米を中心に大きな社会問題にもなりましたが、クライアント企業に最重視されるマーケティング課題の1つです。働く人みんなが生き生きと力を発揮するために、そしてイノベーションの可能な組織であるために必須の重要な要素でもあります。
この調査はこの問題についての業界の現状と課題を把握し、リサーチ・インサイト業界が今後どのように対応していくべきかを検討し、向き合うきっかけとなることを目的としています。

今回は、DEI調査でどのような内容が取り上げられているのか、少し質問例をご紹介したいと思います。この調査は内容的に「要配慮個人情報」が含まれるため、調査では初めに調査目的と個人情報に関して厳重に対応することを明示し、回答したくないという回答を許容するものになっています。
この調査では、性自認、性的指向のほか、人種、宗教、学歴、企業規模、勤務形態、年収、また障がいや健康状態、育児・育児休業の取得とそれらがキャリアに影響を与えたかについても質問しています。

(質問例:平等について)
Qお勤めの業界では、以下の条件に関わらず、誰もが同じように昇進の機会を得て、公平に報酬を得ていると思いますか? (※1項目ずつランダムに呈示)

  • 年齢
  • 家族の状況/扶養責任
  • 民族/人種
  • 出身国
  • 宗教
  • 障がいの状態
  • 性的指向/性の自認

 

(質問例:帰属意識について)
Q以下の記述は、あなたの現在の(または直近の)役割についてあなたがどのように感じているかを測る内容になっています。帰属意識に関するこれらの記述について、どの程度強く同意しますか、または同意しませんか?(※各項目5段階 ランダムに呈示)

  • 私の会社に帰属していると感じる
  • 自分は所属部門にとって評価され不可欠な存在である
  • 自分は会社にとって評価され不可欠な存在である
  • 職場で感情面でも社交的にも支援されている
  • 自分独自の特性、性格、スキル、経験、そして背景は、会社で評価されている
  • 学習し昇進する機会と支援が与えられている
  • 仕事ぶりが十分認められている
  • フレキシブルに働く機会とリソースが与えられている

 

(質問例:組織のダイバーシティ・インクルージョン・平等への対応について)
Q 以下の記述は、あなたが現在(または直近)の会社がダイバーシティ、インクルージョン、平等に関連してどのように対応していると考えるかを測る質問です。
企業文化に関するこれらの記述について、どの程度強く同意しますか、または同意しませんか?
(※各項目5段階 ランダムに呈示)

  • 私の会社の全従業員は、個々の違いを評価されている。
  • どの従業員も、帰属意識を感じている。
  • 会社では、どの従業員にも平等に機会が与えられている。
  • 会社では昇進の決定は公正に行われている。
  • 経営陣は障がいのある従業員のニーズに応える取り組みを実際に行っている。
  • 会社には、従業員の構成に文化的多様性がある。
  • 会社には、従業員の構成に性別の多様性がある。
  • 組織の経営陣には多様性がある。
  • 会社は文化的多様性を重視すべく幅広く人材を募集している。
  • 会社は、ダイバーシティ、平等、インクルージョンの促進にむけ、正式なプログラムを用意しているか、努力している。
  • ダイバーシティ、平等、インクルージョンの促進に向けた会社の努力は、効果的であり成功している。
  • ダイバーシティ、平等、インクルージョンの促進に向けた会社の努力は誠実である。

 

(質問例:個人的に体験した直接的差別について)
Q 次に、現在(または直近)の職場で、他の従業員からあなたが個人的に体験あるいは目撃した可能性のある直接的差別について質問いたします。過去12ヵ月間で、職場で以下のような体験を個人的にしたことがありますか?

  • 会議中、発言を不当に遮られた、あるいは無視された。
  • 同じ能力の同僚と比べて過少評価されていると感じた。
  • 共同で成し遂げた手柄を同僚が独り占めした。
  • 馬鹿にされた、固定観念を押し付けられた、中傷された、他に傷つくようなことを言われた。
  • いじめ、身体的嫌がらせ、あるいは暴力に遭った。
  • 性的嫌がらせまたは不適切な行為に遭った。
  • イベントや活動から外された。
  • 職場で居心地の悪い思いをした。
  • 昇進が見送られた。
  • 自分のスキルや賃金等級以下の仕事にいつも従事させられる。

 

その他、日本だけのオリジナル質問を2問追加しています。
(日本のみ:問題を提起しにくい「空気」について)
 Q あなたの現在の(または直近の)職場では、差別や、ダイバーシティ、インクルージョンおよび平等の欠如に関連した懸念を抱えた人が、問題を提起しにくい「空気」があると思いますか?

(日本のみ:女性の地位向上について)
Q日本は世界の中でも女性の地位が低いと言われていますが、あなたは女性の地位をさらに向上させる必要があると思いますか?

さて、みなさんは、上記の質問にどのように回答されますか?
日本のリサーチ・インサイト業界の結果はどうなっているでしょうか。
日本の産業全体の中ではどうなのか、世界13か国で比較するとどうなのか、おそらく2月初旬には結果をみなさんに共有できると思います。
どうぞお楽しみに。

みなさんは、以下の言葉をご存じでしょうか。
DEI調査では、以下のテーマも取り扱っています。

性自認 シスジェンダーとトランスジェンダー
性自認とは、自分の性をどのように認識しているかを表す概念です。 生まれ持った性別と心の性が一致している人も、一致していない人もいます。 一致している人をシスジェンダー、一致していない人をトランスジェンダーといいます。

性的指向(セクシュアルオリエンテーション)
性的指向とは,人の恋愛・性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念を言います。具体的には,恋愛・性愛の対象が異性に向かう異性愛(ヘテロセクシュアル),同性に向かう同性愛(ホモセクシュアル),男女両方に向かう両性愛(バイセクシュアル)を指します。
同性愛者,両性愛者の人々は,少数派であるがために,場合によっては職場を追われることさえあります。このような性的指向を理由とする差別的取扱いについては,現在では,不当なことであるという認識が広がっていますが,いまだ偏見や差別が起きているのが現状です。
(法務省サイトより:https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00126.html

ジェンダー代名詞(Pronounce)
最近、外国人や海外との仕事やつきあいの多い人々の間では、名刺、SNSのプロフィール、メールの名前のところに、(She/her)や(He/his)と書き込んでいる人を見かけるようになりました。
英語の代名詞は、(She/her)(He/his)や、Mr.や Ms.のように常に性別を表現する言語ですが、自分の呼ばれたい性別を表記することによって、お互いに不快な思いをしなくてすむようになっています。
欧米のジェンダー代名詞を表記する習慣は、このような話題が日常的であり、インクルージョンの必要が一般に認識されている状況と言えるのではないでしょうか。
日本語では、「〇〇さん」といえば男女関係なく使えますが、性自認や性的指向についてはあまり日常的に話題にのぼることはないように思います。そういった問題が少ないからではなく、より自分の性自認や性的指向に対する偏見、バッシングや、プレッシャーが強い社会なのかもしれません。


2021.12.14掲載