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マーケティング・リサーチ業界リーダー達の新思潮


世界経済の変化は、マーケティングリサーチ業界に新たな需要、機会、そして課題をもたらしている。 新しい技術の開発、地理的な境界線の拡大、マーケティングリサーチャーの役割の変化、連続的な業界再編・M&Aのうねりは、この業界の世界の構図に変革を起こしている。 世界のマーケティングリサーチ業界の趨勢やトレンドに加え、業界リーダーへのインタビューによって、この業界の鼓動を感じ取ることは非常に興味深いものとなるだろう。

インタビュー協力者
Frank Martell: Global COO / CEO EMEA, AC Nielsen/VNU
Tony Cowling: President and Special Advisor TNS
Klaus Wübbenhorst: CEO GfK
Eric Salama: CEO Kantar
Robert Dossin: Vice President IMS Health 
彼らはオープンに、この業界が直面している課題やチャンスについての見解を提供してくれた。また、彼ら自身のビジネス戦略についての見解についても語ってくれた。

業界の成長について

TNSのTony Cowling、VNUのFrank Martell、GfKのKlaus Wübbenhorst、KantarのEric Salamaは、マーケティングリサーチ業界の成長率は、一桁なかばの範囲で推移し、健全な成長を続けると予測している。
Tony CowlingとFrank Martellは、トップ10企業は今後、マーケティングリサーチ業界内での自らのシェアを毎年2-3%増加させ、5年後にこれらトップ10企業のシェアは、業界全体の3分の2、10年後には4分の3を占めるようになるだろうと予測している。

Frank Martellが指摘しているのは特定の地域と部門での強力な成長の可能性だ。

「アジア太平洋地域、ラテンアメリカ、東ヨーロッパは、北米や西欧の大部分が低成長や一桁なかばでの成長に留まるのとは対照的に、二桁で成長していくと確信しています。 また、食料雑貨品や小売業界といった分野では、およそ4%成長するでしょう。また、メディア、金融、保健医療サービスといった分野も非常に早い成長を遂げると思います。」

Eric Salamaは、短期的に見て、成長が一桁台中間になりそうな理由を述べている。

「8~9%の成長を遂げる時代に戻らないと思う理由の一つは、いくつかの市場は既にリサーチされ尽くしてしまったからです。 またクライアントはビジネスをもっとグローバルな視点で捉えるようになったので、リサーチを削減するでしょう。 二つ目はインターネットの普及でデータ収集コストが下がっているため、収益率も下がると見られるからです。 もちろん地域によって大きな違いはあるでしょう。アジア、ラテンアメリカ、東欧、中東では大きく成長すると見込んでおります。 Kanterでは2005年に6.4%、収益が増加しました。これは業界全体の平均成長率を上回っています。

業界内再編(M&A)について

Tony Cowlingは業界内再編(M&A)時代の終わりを予期している。

「大企業は世界規模での合併(M&A)に終止符を打つでしょう。その他の企業にとって、大企業と競争するにはもはや手遅れです。 買収は、特定の部門でのアドバイス、インサイト、分析、モデル化を専門とする会社に特化されるでしょう。 従来のマーケティングリサーチ会社に対し、コンサルタント業のような要素の需要が高まっていると思います。」

Eric Salamaは対照的な見解を示している。

「他のマーケティングサービス業と比較すると、マーケティングリサーチは最も合併が進んでいない業界です。 ですから合併はまだ行なわれると見ています。 5年後もIpsos、SynovateやTNSが現在と同じ状態のままだったり、VNUが現在と同じ構造だったりしたらそれは非常に驚くべきことでしょう。」

彼はまた規模が大きいことの利点を語る。

「実際、今、明らかになりつつあることは、規模という観点からだけではなく、質という観点からも、クライアントに何を提供できるかということについて、大企業 と中小企業の格差が広がっているということです。 高品質のオペレーション設備の維持費、世界規模でサービスを提供するための費用、良い人材を採用・維持するための費用などで大企業と中小企業の格差があることは明白ですし、私にはこの格差がますます広がっているとしか思えません。」

Frank Martellはこの点について更に強調する。

「この業界内での再編(統合・M&A)の動きは今後も確実に続くと思われます。 地理的境界を超えて幅広いサービスを提供、統合できる能力と規模をもった企業が勝者となるでしょう。 これは絶対的に必要なことです。また、世界のマーケットをリードするブランド力のあるビジネスも必要です。 つまり、クライアントを常に惹きつけるオリジナル商品を提供することです。 我々の持っている国際的な規模は重要なセールスポイントであり、我々の手法は、サービスを提供しているすべての市場で、ナンバー1、2、3に匹敵するものです。」

クライアントについて

Klaus Wübbenhorstはマーケティングリサーチをクライアント志向のビジネスと位置付ける。

「ですから、クライアントのニーズをより良く把握し続け、情報システムの中の不可欠な一部とならなくてはなりません。 我々はクライアントと長期的な関係を築き上げたいですし、彼らのビジネスの成功に貢献したいと思っています。 クライアントは国際的な質も持ち、ローカル市場にも基づいたデータを必要としているのです。」

彼はまた、製品サイクルがより短くなったためにリサーチに対する要求が高まることも予測している。

「この業界については非常に楽観的に見ております。 その理由の一つは、消費者の行動の変化が非常に早く、製品サイクルもどんどん短くなっている競争の激しい市場では、地域の消費者、市場、クライアントの商品をしっかりと把握することの出来る専門家が必要とされているからです。 それがマーケティングリサーチの強みだと思いますし、またクライアントにとっても自分たちだけでそれをするのは困難だからです。」

Frank Martellはクライアントをもっとよく理解しなくてはならないと語る。

「未来はクライアントとクライアントのニーズを把握することにすべてかかっています。 言うは易く行なうは難しですが! クライアントは、彼ら特有のニーズと状況にカスタマイズした、インサイトに満ちた解決策を必要としています。 また、それを使いやすいツールで早く提供されることを望んでいます。 またこれらすべては低価格で提供されなくてはなりません。 クライアントの戦略策定や戦術の実施にもっと関わることが出来れば、我々の価値を更に高めることができます。 これはすべての人々にとっての根本的な課題です。」

Eric Salamaは、クライアントはデータ過剰に陥っており、もっと必要なのはインサイトだと感じているはずだと確信している。 また、クライアントは調査の質にもっと重点を置くべきだと考えている。

「私の知っているクライアントは皆、データが過剰であると感じています。 彼らは自分たちのシステムの中に多くの情報を所有しているので、更なるインサイトや、意思決定の際に頼りに出来るパートナーを必要としているのです。 このように考えていないクライアントは私の知っている中ではいません。 その一方、クライア ントは現場(オペレーションサイド)に対して、すこし寛容になりすぎてはいまいかと感じることもあります。 例えば、データ収集での拙いやり方とか得られた情報に質の悪いものがなかったかどうかといったことについて、もっと気を配る必要があるでしょうし、おそらくは今後、この種の懸念はもっと大きなものになるのではないかと思います。 しかしながら、オペレーションの問題、実査、データ収集の問題は今後なくならないとは思いますが、今のところこのような問題はクライアントにとって最重要問題ではありません。 たとえ、ごく一部の鋭いクライアントが、データ収集の観点から見て、データの質こそが、インサイトの基盤であるということを理解しているとしてもです。」

Robert Dossinは、多くのクライアントからの国際的なカバーレッジの要求が高まっていることの重要性の見解を示している。

「マーケティングリサーチ会社が直面している重要な課題の一つはクライアントと同じスケールでオペレーションをしなくてはいけないことです。 メーカーは統合を続け、ますます巨大化しているので、同じスケールで同じ範囲をカバーする情報提供者を必要としているのです。 マーケティングリサーチ会社はクライアントについて行かなければなりません。 他に選択肢はないのです。 クライアントのグローバルなリサーチとコンサルティングへの高まる要求に対応しなくてはなりません。」

予算について

Tony Cowlingはクライアントの予算が危機に瀕しているとは思っていない。

「彼らの予算が苦しい状態だとは思いません。 クライアントは情報の重要性をしっかりと認識していますし、定期的な早いアップデートを必要としています。 ですから予算自体は変わっていません。 クライアントは、データ収集には少なく、分析や考察に多くの予算を配分しているのです。 彼らは予算を最大限に生かそうとしており、データ収集や納品をインターネットで行なっているのはそういう傾向の現れです。 今や彼らは直ぐに行動を取ることが出来る正確なデータを持っているのです。 後ろを振り返る代わりに前を見ることが出来るのです。」

Frank Martellは予算配分の変化に注目する。

「今日のクライアントはもちろん費用はかけるのですが、同じ費用で更に多くのことを期待しています。 情報収集や集計はより生産性の問題になりつつあります。外部委託やインターネットといった構造的な要素はこの傾向を更に助長しています。 クライアントの投資収益率をあげるような分析とデータにこそ真の価値(及び収益)があるのです。 こういったことに伴って食料雑貨品業界では予算が戦術の実施へ移行している傾向が見られます。

技術について

Robert Dossinは技術的な進歩がマーケティングリサーチの役割にどれ程変化をもたらしたかを強調する。

「変化したのはマーケティングリサーチの定義です。今日、すべては知識を応用し、クライアントのビジネスにそれを組み込むことにかかっています。 リサーチ会社はデータ分析に最も精通していなくてはなりません。 そしてそれをもとにどんなアドバイスをしたら良いかも理解していなくてはならないのです。 これはマーケティングリサーチの付加価値はどんなものであるかということを考え、その周りに戦略的なサービスを築き上げるというリサーチ会社の任務でもあり、またチャンスでもあるのです。」

Tony Cowlingはビジネスの意思決定の情報提供にリサーチの独立性がいかに重要であるかを指摘する。

「技術はマーケティングリサーチ業界に全く新しい筋書きをもたらしました。 過去を振り返るのではなく、前を見てすぐに変化や競争に対応することが出来るようになるのです。 マーケティングリサーチはデータ収集において、まだ重要な役割を担っています。 クライアント企業は自分たちのクライアントデータベースを所有していますが、国ごとに同じような情報を得るのは困難です。 マーケティングリサーチ会社の付加価値はそういった情報をグローバルベースで提供することができることです。 また、顧客満足度調査や主要な実績の指標測定のような、企業の実績を評価するという大きな役割も担っています。 もちろんこれは独立した第三者によって行なわれるべきことであり、クライアント自身が内輪で行うような調査では信用出来ません。 この業界でのこの分野は、その他の部分の2倍の速さで成長しています。 マーケティングリサーチ会社は誰もが信頼を置ける、正確で独立した情報を提供するという巨大なサービスを行なっているのです。」

Klaus Wübbenhorstは、インターネット調査はマーケティングリサーチ業界にとってほとんどが良いことであったと言う。

「我々は少しテクノロジーに対して警戒する必要がありますし、オンラインリサーチというような言葉が単なる流行り言葉にならないようにしなくてはなりません。 オンラインに何百万のパネリストを有していると言っている企業もありますし、それほどいないと言っている企業もあります。 しかし、アメリカのインターネット浸透度はヨーロッパの一部よりも高く、アメリカ人は電話インタビューに参加したがらない傾向があることを考慮しなくてはなりません。 ですからインターネットについては国ごとの基準で検証しなくてはならないのです。 二つ目に私が感じるのは、テレビの視聴率パネルと同じ意味合いでオンライン上にパネリストを“保有する”というようなことは決してありえないということです。

一方、新技術で情報収集が容易になったため、集計のコストを低く抑え、簡単に行なうことが可能になりました。 ですからその分をクライアントに還元することが出来るのです。 しかし、最も重要なのはその情報で何をするかということです。 7、8年前はIT企業がマーケティングリサーチ会社からこの事業を奪うのではないかと恐れられていました。 けれどもデータを本物のインサイトに変換する能力を備えているのはマーケティングリサーチ会社であるということが我々には分かりましたし、それは全く確かなことなのです。」

リサーチャーに求められるスキルセットの変化について

Tony Cowlingは、リサーチャーに必要とされるスキルが変化してきていることについて分析する。

「今起きているのは、データの収集と分析との乖離です。 数年前まではマーケティングリサーチャーは両方の技術を要求されていました。 同じリサーチャーがデータ収集を行い、その後で分析を行なっていたのです。 しかし今は、優れたマーケティングリサーチャーはより多くのデータの分析に更に重点を置くことが出来ます。 この観点から、彼らはクライアントのコンサルタントのようになりつつあります。」

Eric Salamaはこれをこの業界が直面している最大の課題と捉えている。

「我々が直面している最大の課題は、自分たち自身の基本能力を向上させること、クライアントと課題について話し合う際、彼らに自信を持たせるよう手助けすること、そして彼らに対し提案をすることです。 データの後ろに隠れるのではなく、早急に対応する能力です。我々は他のマーケティングサービス産業と同じようにサービス業に属しているのです。 クライアントは自分たちへの対応について一定の水準を期待しているのです。

マーケティングリサーチ会社はまた、新卒を採用し、訓練し、実際に彼らの能力を活かすための投資をする必要があります。 人材確保という点で忘れてならないのは、我々が他の魅力的な多くの産業との競争の真っ只中にいるということです。 皆、この人材という問題に真剣に取り組んで来ませんでしたし、自分たちの採用した人材の能力を伸ばそうともしてきませんでした。 それはまた単に人材を採用するというだけの問題ではありません。 一度採用したならば、その後にも支援していくことが重要なのです。 それは、最大の能力を引き出し、成功する最大のチャンスを彼らに与えることにつながるのです。」

Robert Dossinは優秀な人材を選び、引き止めておくことが課題だと言う。

「IMSでは、業界での経験とコンサルタント能力を有する人材を探しています。 我々は製薬業界で、情報サービス面での戦略的パートナーと認識されたいのです。 その目標に到達するため、マーケティングリサーチを理解し、その応用の方法を知っている、突出した才能をもつ人物を必要としています。 会社として明確なミッションと戦略を有することは、とりもなおさず、そういった優秀な人材を引き止めておくのに役立つのです。」

Frank Martellは、継続的な社員教育の必要性を感じている。

「高い能力を持つ人材を見つけることはいつでも大変なことですが、近年はますます大変になってきています。 彼らを引き止め、彼らが成長することを確実にするために必要なことは何よりも社員教育です。 VNUでは、いつも世界レベルの技術研修や、商品の扱い方についての研修を重視してきました。 将来、我々の人材により良い能力を身に付けてもらうため、リーダーシップや情報管理、サービス業務やその他の社員教育のための予算を増やし始めました。 我々の国際的ビジネスで得た豊富な知識と経験は、社員に対して提供している独自の強みの一つです。」

Klaus Wübbenhorstは社員が会社の第一の資産と考えている。

「クライアントとの持続的な良い関係を築くことが重要なので、我々は社員の教育、研修に入念に取り組まなくてはなりません。 社員には自分の才能を見つけ、発展させる自由があります。 我々はクライアントの利益のために積極的、献身的に一生懸命取り組むことを奨励し、そういった取り組みに対して報いています。

アウトソーシングについて

Tony Cowlingが指摘するのはアウトソーシングの限界についてだ。

「データ集計は最近、インド、東欧、アフリカに大規模に外部委託されています。 しかし、アウトソーシングには限界があります。 マーケティングリサーチは、ずっと文化理解に依存してきましたし、これからもそうでしょう。 例えば電話インタビューについては、しばしば地元に委託しなくてはなりませんでした。 地元の人でないと質問の背景を理解できなかったり、質問者のアクセントが強すぎたりする場合もあるかもしれません。 単純な情報はアウトソーシング可能ですが、文化は翻訳不可能な場合が多いのです。」

Klaus Wübbenhorstは、アウトソーシングは問題を解決すると同時に、新たな問題を作り出すということを強調する。

「なぜ企業が事務的業務をアウトソーシングしたいのかという理由はわかります。 それは収集した情報の集計コストを削減するためです。 しかしそれは少し短絡的ではないかというように感じることが時々あります。 つまり、もし事務的な業務を遠くに委託しても、その過程は自分で整理や管理をしなくてはなりませんし、アウトソーシングをした業務でさえも自分自身で確認しなくてはなりません。 アウトソーシングに完全に頼り切ることは出来ないのです。
例えば、電話インタビュー設備のすべてをアウトソーシングしたとします。 そこで突然それが中断してしまうような何かが起きたとします。 そうすると大問題を抱える結果となるでしょう。 ですからアウトソーシングとは、コスト削減と効率性向上を期待して行なうものですが、それは気をつけて行なわなくてはいけませんし、完全にそれに依存することは出来ないということを忘れてはなりません。」



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