2022令和4年
「非公正な『No.1 調査』への抗議状」を発信
「ランキング広告表示に使用する調査データ開示ガイドライン」発表
「比較広告のための調査実施の手引き」発表
2023(令和5)年「満足度No.1」等の広告表示の根拠とする調査に関する提言」を消費者庁へ報告
「No.1 調査」とは、商品やサービスの広告表示に“No.1”を表記しても「不当景品類及び不当表示防止法」に抵触しないよう、客観的な根拠資料を得るために市場調査会社に依頼する調査である。この調査は客観的で適切な科学的諸原則に基づいていれば問題ない。
しかし非公正な「No.1 調査」では、「No.1を取れる自信がないが相談に乗ってもらえるのか」というような顧客をターゲットに、あたかもNo.1の取得を前提とするように調査対象者や質問票を恣意(しい)的に設定する不正が行われていた。
2022(令和4)年1月、JMRAは「非公正な『No.1 調査』への抗議状」を発信し、「マーケティング・リサーチ綱領」に違反し市場調査の社会的信頼を損なうもので到底看過できないと非難、これを仲介する事業者に厳重に抗議を行った。
非公正な「No.1 調査」を以前から注視していたJMRAだったが、不正の手口についての具体的な情報を入手できずにいた。ところが2021(令和3)年の10月、会員社にNo.1 を前提とした調査依頼があったことから、ようやく非公正な「No.1 調査」の手の内を知ることができ抗議状の発信につながったのである。
[非公正な「No.1 調査」が社会問題化]
これに対する反響は大きく、1カ月でネットメディアを中心に多くの取材を受けたことで、一時Yahoo! JAPANの検索ランキング2位になるなど注目を集めた。NHK 「クローズアップ現代」でも報じられて一挙に社会問題化していった。そこで5月の定時総会に向けて「ランキング広告表示に使用する調査データ開示ガイドライン」と「比較広告のための調査実施の手引き」を急ピッチで制作し対外的なアピールを込めて発表した。本ガイドラインは「ランキング広告(No.1 表示を含む商品・サービスのランキングや比較優位を表示する広告)」が、消費者にとって有意義になり、マーケティング・リサーチの社会的信頼性が維持されることを目的に、裏付けとなる調査の公開基準を示した。手引きは、比較広告のためのデータ収集・検証を目的とする調査を公正で客観的に行うための留意事項をまとめたものである。
定時総会以降、(公社)日本広告審査機構(JARO)や(一社)日本新聞協会などから講師に招かれるなど、社会的関心はより高まっていった。2022(令和4)年6月には、会員社である楽天インサイト(株)が消費者庁より措置命令を受けるが、その前に打診があったことから消費者庁とJMRAの間に接点ができ、JMRAは何度か説明を行った。この交流が消費者庁の理解を促し、対応が進展する契機ともなった。
さらにJMRAは2023(令和5)年8月に「『満足度No.1』等の広告表示の根拠とする調査に関する提言」を実施する。これには広告主や広告代理店に対し「イメージ調査」を用いたNo.1表示の禁止を訴える目的があった。「イメージ調査」とは、対象商品や比較する商品を掲載したWEBサイトを閲覧した上で質問する調査である。消費者庁が翌2024(令和6)年9月に発表した「No.1 表示に関する実態調査報告書」では、この「イメージ調査」によるNo.1表示について「対象商品等や比較対象商品の利用経験の有無を問わずに調査対象者が集められる」と記すなど否定的に扱われており、JMRAの提言内容が反映されたと考えられる。
この調査の実施前後には非公正な「No.1 調査」は減少したが、再び増加に転じたことで、2024(令和6)年2~3月には、消費者庁による措置命令が相次ぐこととなった。措置命令が下されるケースは地方企業の広告に多く、JMRAは、不正の手法をまとめた動画を商工会議所・青年会議所を通じて全国の企業に認知してもらうプランを検討中だ。また、1日のみの調査やキャンペーン直後の期間を対象にNo.1を誇示するいわゆる“瞬間風速”的な広告などの規制も含めたガイドライン改訂も進行中である。