2026年度の活動方針
2026年5月26日
一般社団法人 日本マーケティング・リサーチ協会
会長 五十嵐 幹

世界経済の見通し
2026年度の世界経済は、引き続き不確実性の高い局面が見込まれます。米国における自国優先政策に起因する関税の影響や、長期化する地政学的リスクは、サプライチェーンおよび消費者マインドに直接的な影響を及ぼしています。 一方で、このような環境下においてこそ、正確な生活者理解とデータに基づく意思決定支援、すなわち「インサイト」の重要性は一層高まっています。インフレの沈静化に伴う金融政策の安定化を背景に、企業活動は守りから攻めへと転換しつつあり、我々インサイト産業には、その意思決定を支える羅針盤としての役割が強く求められています。
テクノロジーの実装と深化、および人材への展開
2025年までの「AI実装フェーズ」を経て、2026年は「AIネイティブな業務プロセスの定着」が重要なテーマとなります。生成AIは単なる効率化ツールにとどまらず、人間の思考を補完・拡張するパートナーへと進化しています。 加えて、AIの急速な進化と業務への実装が各企業で加速する中、インサイト産業においても業務・案件の高度化およびスピード化は不可逆的に進展しています。こうした環境変化に確実に追随し、伴走できる人材の育成、すなわちAIリテラシーを含む実践的スキルの底上げは喫緊の課題です。同時に、これまで蓄積してきたノウハウや知的財産を体系的に継承し、若手・中堅層への知の移転と業界全体の活性化を実現することが不可欠となります。
インサイト産業の展望と情報価値の最大化
50周年を契機として策定した新ビジョン「ありたい未来を創る探究主体として 人を・企業を・社会をインスパイアする」に基づき、本産業の定義は大きく拡張されました。 我々はもはや従来の「調査」の枠にとどまらず、テクノロジー、デザイン、コンサルティングを融合した「未来創造のパートナー」としての役割を担っています。この概念拡張の核心は、あらゆるデータをインサイトへと昇華させ、クライアントや社会にとっての「情報価値を最大化」することにあります。2026年度は、この拡張された概念を具体的な会員構成および事業活動へと反映させるとともに、産業としての社会的プレゼンスを一段と高める段階へ移行します。
2026年度スローガン
「広がる領域、深まる探究、インサイトの価値を次なる高みへ」
2026年度における重点施策
1.新産業ビジョンに基づく会員基盤の拡張
「探究主体」という新たな定義に基づき、より開かれた協会組織への転換を推進します。テクノロジー企業、データサイエンス企業、コンサルティングファーム、デザイン領域のプレイヤー等、従来の枠組みを超えた新規会員の獲得を強化します。これにより、多様な主体が相互に連携することで、インサイト産業における新たなエコシステムの構築を図ります。
2.概念拡張を具現化するコンテンツ開発
新ビジョンが示す「探究活動」を、既存会員および新規会員双方にとって具体的な価値として提供できるよう、コンテンツの高度化および多様化を推進します。 オープンデータやAI、さらに会員各社の得意領域を掛け合わせたナレッジ共有基盤の整備を通じて、多角的な知見の創出を進めます。また、50周年カンファレンスで提示した“ART(人間特有の創造性)”の視点を実務に落とし込むための教育プログラムの開発や事例紹介の充実を図るとともに、新領域の会員ニーズにも対応した、実践的かつ導入しやすい手法開発を推進します。
3.インサイト・プロフェッショナルの育成と継承
業界全体の人材価値の向上を目的として、若手・中堅層の育成を体系的に推進します。AIを活用しながらも、本質的な問いを立て、深い洞察を導き出す「探究スキル」の習得を支援する学習環境の整備およびナレッジ共有を進めます。 また、若手人材が主体的に参画するプロジェクト機会を拡充し、ベテラン層が持つノウハウの継承と業界横断的なキャリア形成を促進することで、人材の定着および活性化を図ります。
4.業界のオープン化およびガバナンスの高度化
透明性および機動性の高い組織運営を実現するとともに、社会に対する発信力を強化します。新産業ビジョンおよび業界の価値を広く社会へ浸透させるため、積極的な広報活動を展開し、インサイト産業の認知向上を図ります。 あわせて、改訂された「マーケティング・リサーチ綱領」の普及・定着を推進し、AI時代における倫理および品質の確保において、国際的にも先導的な役割を果たします。
5.各種委員会の再編
委員会運営の効率化および業務負担の軽減を図るとともに、中期ビジョンに基づいた組織再編を実施します。各委員会の機能をビジョン実現に直結する形で再定義し、意思決定の迅速化を図ります。また、会員各社の負担の最適化を図りつつ、より付加価値の高い活動に集中できる体制を構築します。
6.グローバル・パートナーシップの実装
アジア地域を中心とした国際連携を、従来の情報交換にとどめることなく、具体的なビジネス機会および知見の創出へと発展させます。APRC(アジア・太平洋調査連盟)等との連携を強化し、多国間での共同実証や、地域特性を踏まえたインサイト手法の高度化および標準化を推進します。
以上