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JMRA創立30周年記念カンファレンス「JMRA“30・而立”」報告


11月9日(水) JMRA創立30周年記念事業として「JMRA “30・而立” ~マーケティング・リサーチ・プロフェッショナル~」と題したカンファレンスが帝国ホテルで開催されました。 
第一部(会場:富士の間)では、30周年記念事業実行委員会の牧田孝業務執行委員の挨拶に続き、ほぼ満席の会場の中、公募で選ばれた6題の調査分析事例にもとづくプレゼンテーションが行われました。また今回の創立30周年に寄せて、特別基調講演をトヨタ自動車副会長の張富士夫氏からいただいたほか、リサーチユーザーとしてリサーチに対する期待と課題についてメッセージもお二方よりいただきました。海外からは韓国・中国それぞれの市場調査協会の会長スピーチもあり、多彩な講演が続くカンファレンスとなりました。 最後に、JMRA田下会長より30周年を新たなスタートとする特別アピールが宣言されました。

1.特別基調講演「人づくりとトヨタウェイ」
基調講演にはトヨタ自動車の張富士夫副会長が登壇し、戦後の自動車産業の歴史とともに歩んだ自らの経験を踏まえ、人を大切にする経営、育てる文化、たゆまぬ改善の大切さを話されました。また、市場調査を用いた例として、トヨタの環境への取り組みに対する評価が低いという結果を受けて、社内にエコ・プロジェクトを立ち上げられました。そして97年にプリウスを発売して以降は、環境への取り組みに関してはトップの評価を受け続けていることを、変化を先取りできた例として挙げられました。リサーチも新しい時代、環境の変化に対応するためには、調査手法のたゆまぬ改善はもちろん、「人づくり」が肝要である、と締めくくられました。 

トヨタ自動車(株)
代表取締役副会長 張富士夫氏

2.公募によって選ばれた研究発表 6つのプレゼンテーション

昨年に引き続き、新しい調査手法や現代のマーケティング課題に対応した分析技術などについて、多数の応募の中から厳選された6題の研究発表が行われました。

1.携帯電話を利用した調査の有効性
Ipsos日本統計調査(株) 中村聡氏、四方田祐介氏
  携帯電話と固定電話、携帯インターネットとPCインターネットとの間で調査の回収状況を比較されました。いずれも携帯を使った方が回収ピッチは早かったものの、携帯による電話調査では不通による回収率の低さ、携帯を使ったインターネット調査では調査ボリュームの小ささがネックとなることが分かりました。
   
2.Personalized Questionnaireによるブランド・イメージ分析法
(株)インタースコープ 佐藤俊雄氏
 
インターネット調査で商品選好の理由(パーソナル・メリット)を抽出し、その重要度を判断させることで、パーソナル・メリット・インデックス(PMI)を作成することができます。このPMIを用いて各ブランドの独自性や、そのカテゴリーの必要条件を分析する手法を提案されました。 

カンファレンス会場風景(帝国ホテル)
   
3.Blogを利用したインタラクティブリサーチの活用について 
(PDF 245K)

(株)電通リサーチ 芦沢広直氏
  毎日使う家庭日用品のホームユーステストにおいて、Blog日記を使って対象者に商品の使用法や使用感を報告してもらう事例を紹介されました。リアルタイムにデータが見られる、調査企画者との対話が可能、情報がデジタルで蓄積されるなどのメリットがあることが分かりました。
   
4.消費者視点のブランド価値分析 
(PDF 42K)

(株)インテージ 高山佳子氏
  コンビニエンスストアのブランド連想構造分析を例に、ブランドの強み、差別化ポイント、浸透させたい差別化ポイント、保証ベネフィットを抽出できるフレームを紹介されました。また、この分析手法がブランドの強みとポテンシャルを抽出するのに必要な要件を幅広く満たしていることを強調されました。
   
5.価値観の多様性に考慮したセグメンテーション
(株)ビデオリサーチ 塚原新一氏、田村玄氏
  ビデオリサーチのACRデータを用いた潜在クラス分析によって、各メディアの嗜好特性に応じたセグメンテーションを行う事例を紹介されました。その結果、マルチメディア性向と情報性向の2つの因子が抽出され、態度や意識のデータに対しても、潜在クラス分析が有効となる可能性を見出されました。
   
6.今、求められるCS経営におけるマーケティング・リサーチの役割:
  分譲マンション事業のリサーチ活用事例

三井不動産(株) 弥富健一氏
(株)リサーチ・アンド・ディベロプメント 小田宣夫氏
  三井不動産の住宅事業において、CS調査とCS向上施策との連動によって評価レベルを向上させていく事例を紹介されました。また、業務アクションとの連動性向上とフィードバック・サイクルの確立を今後の課題として上げ、顧客を起点としたビジネスモデルへと洗練されていくだろうと展望されました。

3.ベストプレゼンテーション賞芦沢広直氏、ベストペーパー賞高山佳子氏が選出
カンファレンス参加者の投票によって決まる優秀プレゼンには、ベストプレゼンテーション賞に芦沢広直氏(株式会社電通リサーチ)「Blogを利用したインタラクティブリサーチの活用について」が、ベストペーパー賞には高山佳子氏(株式会社インテージ)「消費者視点のブランド価値分析」がそれぞれ選ばれ、第2部の情報交流会で表彰されました。

ベストプレゼンテーション賞を受賞した
(株)電通リサーチ 芦沢広直氏

ベストペーパー賞を受賞した
(株)インテージ 高山佳子氏

4.リサーチユーザーからのメッセージ
市場調査のユーザーの立場からも、お二人の方からメッセージをいただきました。

明治乳業の高見裕博氏は、リサーチの目的は失敗の確率を減らすことだとした上で、リサーチ会社へのお願いとして、調査目的の共有化、適切な手法の選択、分析結果からの「方向違い」の提案、パネルの管理などを挙げ、現状では“諸刃の剣”であるリサーチを“金棒”にと訴えられました。 

明治乳業(株) 高見裕博氏
花王の宮脇賢治氏は、コストをかけてリサーチを行っても新商品の成功の確率は3割から4割程度であるとの現状を踏まえた上で、リサーチャーは参謀としてマーケターをより強力にサポートして欲しいと訴え、お互いがプロフェッショナルとしての強い意識を持てば多少の葛藤は乗り越えられるはずだと結ばれました。

花王(株) 宮脇賢治氏

5.海外からのメッセージ" 
今回のカンファレンスには、KOSOMAR(韓国世論・市場調査協会)とCMRA(中国市場調査協会)からそれぞれの会長が参加され、自国の市場調査の現状を踏まえたスピーチを行いました。 
KOSOMARのHugh Kwon会長は、韓国の市場調査業界の状況を説明され、また、会員社合同の運動会を開いたことを紹介されました。氏は、招待への感謝と共に、これをきっかけに日韓中3カ国の協力を呼びかけられました。


KOSOMAR会長 Hugh Kwon氏

CMRAのHuixin Ke氏は日本語で自己紹介をされた後、中国の市場調査業界の特徴を整理し、経済発展に伴ってニーズの激増などの「チャンス」と、サービス水準の向上など課題への「挑戦」が同時にあることを説明されました。また、ESOMARの綱領を基に中国市場調査業界のガイドラインを制定したことも紹介されました。

CMRA会長 Huixin Ke氏

6.30周年記念カンファレンス特別アピール (PDF 16K)
第一部の最後に、田下JMRA会長が登壇し、「これまでの30年」に対する感謝と、「これからの30年」に対する決意を述べました。 
会長は、マーケティング・リサーチ業界の関係者やお客様への感謝を述べた後、我々はいま転換点にいるとし、ある定点観測調査で不適切な調査がなされた事件を挙げました。この事件に対する協会の認識を示した上で、市場調査業界は変化への対応を求められており、「変えるべきこと」と「変えてはいけないこと」を見据えて、変化に対して勇気をもって対応したいと宣言いたしました。併せて「内から外へ」情報発信のできる協会活動を目指すとして、今年は3つのテーマで調査研究を始めていることや

(社)日本マーケティング・リサーチ協会
会長 田下憲雄氏
このカンファレンスをアニュアル・カンファレンスとして定例化すること、また、日韓中の情報交流を進めていくことなどを説明いたしました。 

7.第二部 情報交流会(会場:光の間)
会場を移しての情報交流会にも多くの参加者が来場され、こちらも会場は盛況となりました。 
30周年記念事業実行委員会の上田滋統括の挨拶で始まり、日韓中3カ国の市場調査協会会長による鏡開きが行われました。第一部で発表された研究発表に対して、会場参加者の投票により優秀プレゼンの表彰がおこなわれ、また、小林和夫氏へのJMRA功労賞の特別表彰がされました。

情報交流会 会場風景(帝国ホテル)

会場は終始和やかな雰囲気のなか、リサーチャーとお客様との情報交流の場として熱心な会話が弾んでいました。 
なお、JMRA創立30周年記念カンファレンスの参加者は、221社 680名(正会員社73社443名、賛助会員48社88名、一般59社101名、海外12社13名、招待29社35名)でした。