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補足報告:
ESOMAR Asia Pacific Conference 2023(2023.11.08~10・シンガポール)

 

本文

ESOMAR APAC2023に参加して

JMRAキャリアアップ委員会
インサイト・コア株式会社 代表
岸田典子

 

ESOMAR APACは、ESOMARがAPAC地域で年に一度主催するインサイト(リサーチ)業界のカンファレンスです。2023年11月8~10日、シンガポールで開催され、各国から業界関係者が最新情報とネットワーキングを求めて集まりました。前号の長田様からのご報告に続いて、今回登壇した視点から少し補足したいと思います。

発表者はアジア・パシフィックを中心に世界中の応募者の中から選ばれた23組。日本からは、(株)ヴァリューズの子安さんと齋藤さんからFMOT(真実の瞬間)を可視化し顧客獲得するビッグデータのパワーについて(Crystallizing Digital First Moment Of Truth Of Unknown Targets)のプレゼン、そしてJMRAより私が、イノベーションを引き出す発想法と未来から現在へのバックキャストによるSF思考を用いたプロジェクト事例を発表しました。

今後、日本のリサーチ業界から、より多くの人にチャレンジしてもらいたいと思い、その準備や得られることを共有したいと思います。

ESOMAR APACの特徴

リサーチ・インサイト業界のグローバル・カンファレンスには、他にもありますが、ESOMARのものはPaper(論文)の提出が必須のため、より準備に時間がかり、審査も厳しいと言われます。

今回のカンファレンスのテーマ「Art and Innovation」との関連性を大切にしつつ、オーディエンスであるインサイト業界の人々に役立つかということに重点がおかれます。また、クライアントと発表やクライアントと一緒の登壇が歓迎されます。そういう点が学術系のカンファレンスとは、やや異なります。業界共通の課題、最新のテクノロジーや課題解決手法、またわかりやすく相手に響くプレゼンであることが重視される一方、セールスピッチで自社のケイパビリティプレゼン的にならないよう注意が必要です。

詳しくはESOMARのカンファレンスの応募要項やESOMAR会員がアクセスできる過去の発表資料に一度目を通していただければと思いますが、2023年ESOMAR APACの発表の準備は、4月下旬に3000文字程度の内容の要約など応募書類を提出から始まり、6月初旬に合否の連絡、8月中旬にPaper(論文)の締切り、10月プレゼン用のPPTやビデオ資料の提出、11月上旬、オンライン・リハーサルを経て、現地で登壇とかなりの準備期間が必要でした。

プレゼン内容は、Paper(論文)とは異なり、発表内容を絞り込み、相手に伝わる話し方に留意した準備が必要でした。プレゼンを作成するにあたっては、ストーリーテリングの要素がとても大切なことを実感しました。

2023年の発表の特徴と世界の業界情報
今年の発表は、最新テクノロジーを活用した発表に注目が集まりました。

リサーチ業務の各段階、企画書、見積り、調査票作成、報告書などがAIによってあっという間に作成される様子も発表されました。オンライン調査のデータのクオリティが世界的に大きな問題になっています。さまざまなアバターに調査内容を説明させ、それがデータクオリティに貢献するかの実験結果も披露されました。メタバースによる化粧品の接客販売の効果調査もありました。インドの企業による日本の渋谷の飲食店とアルコール飲料の消費についてオンライン上のビッグデータからの分析もありました。日本の調査はすでに、日本にある調査会社ではなくても深い分析が可能であることに気づかされます。

システムやサービスの開発においては、日本国内だけをターゲットにするのではなく、グローバルに利用できるものでないと生き残りが難しくなる可能性があります。

JMRAではESOMARのグローバル情報を発信していますが、業界の皆さん一人一人が、業界の世界的な動きにも目を向ける必要があることを意識していただきたいと思います。

AIが急速に私たちの仕事を変化させています。ESOMARでは、「AIベースのサービスのバイヤーのための22の質問(暫定版)」も出しています。どのような情報を提供すべき、確認すべきなのかの指針になる資料となります。

みなさんの社内にESOMAR 会員の方がおられるなら、発表資料などの情報共有を求めるとよいと思います。また、ESOMARでは業界の若手のために年会費を低めに設定したYoung ESOMAR(YES)会員という制度を設けています。ご検討いただければと思います。

ESOMAR APACでは、プレジデントのレイ・ポインターさん、インテージ・タイのオーム・アナンタチャイさん、JMRA定性委員会の吉田朋子委員長が、英語が母国語ではない人向けに英語でプレゼンをする人に向けたワークショップを実施しました。

なぜESOMARに世界中のインサイト・リサーチ業界から発表者が集まるのかといえば、そこで発表することがグローバルの業界内のブランド力につながるからといえます。

今後、日本から海外に発信することにチャレンジする人があれば、JMRAとしてもサポートしていきますので、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。

以上

2024.01.23掲載