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ほんぶん

第2部 組織の変革を推進する
第14章 内向的な人のための影響力スキル

JMRAインターネット調査品質委員
リサーチ・コンサルタント
岸田 典子


金曜日の午前11時、毎週恒例のライン・マネージャーとの1対1の会議まであと三時間だ。週末までに終わらせなければならない仕事が山ほどあるのに、つかまってしまったよ! なんてこと…

今日は何をするように言われるんだろう。もちろん、これまで取り組んできた市場シェア分析についての議論もあるけど。あ、そういえば、彼女は来週休暇でいないんだった。…代役で役員会にプレゼンしろとか言われないといいけど。それからセグメント別の製品売上に関する分析もある。このプロジェクトはとても楽しかったけど、プロダクト担当ディレクターと直接会って議論をしなかったと彼女はまた僕に文句を言うんだろうな。

それから、昨日のチームミーティングで彼女が話していた市場調査のカンファレンスがある。彼女はボランティアを募集していたけど、テーブルを見回してチームの何人かはネットワーク作りのスキルを向上させなければならないと言ったとき、彼女が僕をそのボランティアにしようと考えているかもしれないと恐怖を感じた。ああひどい! ほんと待ちきれないよ…。

外向的な人たちの世界で働くこと

告白すると、私は内向的な人間だ。もちろんそれは珍しいことではない。心理学者によると、人口の約3分の1は外向的というより内向的だという。ロンドンのインサイトフォーラムの非公式な調査や議論によると、インサイト専門家はそれよりはるかに内向的な人の割合が高いことを示している。

外向的な人と内向的な人の技術的な違いは、どれくらい大きな声をだすのが好きかということではなく、エネルギーとインスピレーションの源に関することだ。私たちは、何かに行き詰まったとき隣の人に話しかけるのが自然な傾向だろうか、それとも一人で散歩に出かけて静かに考え事をするのが好きだろうか。

数年前にバークレー銀行で行われた分析によると、インサイトチームにはマーケティング部門や経営幹部よりもはるかに多く生来の内向的な人がいることがわかった。その傾向は顧客分析部門が最も顕著で、市場調査部門よりもずっと内向的だった。

チーム内の内向的な人と外向的な人の比率は、アナリストとマーケットリサーチャーの比率が影響しているかもしれない。アナリストや定量調査のリサーチャーは大抵内向的で、その性格のタイプは、内省やクリティカルシンキングに適していることが多い。しかし、どのようなタイプのインサイト専門家でも、マーケティング担当者やそしてもちろん私たちが報告し影響を与えようとしている経営陣よりも内向的である可能性が高いのだ。

内向的な人にとって、会社生活は必ずしも快適ではない。問題は、過去数十年間に職場で発展してきたさ多くの働き方が、内向的な人よりも外向的な人にそれとなく有利に働くことだ。私たちが当たり前のように思っていることについて考えてみよう。新しいオフィスを設計する? では、小部屋のないオープンプランにしよう。プロジェクトに新しいアイデアが必要? では、チームでブレストをしよう。昇進のチャンスを増やしたい? では、注目を集めるプレゼンをボランティアでやろう。市場調査について学ぶカンファレンスに参加する? 参加者が同業者とネットワークを作れるよう十分に時間を確保しようというふうになる。スーザン・ケインのような作家は、この問題に対する標準的なアプローチは、まるで外向的な人が他の外向的な人のために考案したように感じることがあると強く主張している。内向的な人、生まれつき内気な人、社交性に欠ける人たちは、こうしたアプローチに強く違和感を覚えるだろう。

内向的な人が外向的な人の世界でうまくやっていくには?

IMAのジュリア・ジョスキー氏は、この課題について、特にインサイト部門のリーダーがチーム内の内向的な人からどのようにすれば最大の成果を得ることができるかを検討してきた。まずは、内向的な人が自然と有利になる状況がたくさんあることを認識してほしい。例えば、お客様の声に耳を傾け、お客様のニーズを反映することが挙げられる。厄介なビジネス課題に直面しているときに選択肢を批判的に検討することもできる。

しかし、チームメンバー全員を最大限に活用するために、無意識的に内向的な人を差別しないように留意しなければならない。インサイトリーダーは、私たちがアナリストやリサーチャーに期待する仕事の社会的側面についてよく考えるべきだ。これは、特に人に影響を与えるスキルと関連している。チーム内に混在する内向的な人と外向的な人を、前章で述べたようなチームがより優れたビジネスインフルエンサーになるニーズとどのように折り合いをつけるべきだろうかするのか?

インサイト部門のリーダーのためのヒント:

  • まず、インサイト部門の多くのメンバーが、経営幹部に影響を与えるという考え方に本能的に居心地の悪さを感じることを理解することから始めよう。
  • 誰もが他の部門とのネットワーク作りに時間を使いたいものだと思い込み、そうでない人を無意識に差別しないように注意しよう。
  • プレゼンテーションをしたり、会議を設定したり、電話を取ったりすることに対する社会的なニーズを考慮しよう。 外向的な人が内向的な人を助けるために何ができるだろうか?
  • メンバーの長所を生かす方法を見つけ、内向的な人にはステークホルダーの意見に耳を傾け、彼らのニーズを反映し、部署全体がより説得力をもつようにするための計画を立てる責任をもたせるようにしよう。
  • 長期的には、職場での社会的信頼を高めるために、メンバー全員にできることがあるかもしれない。しかし、変化を促すためには、インサイトチームの内向的な人と外向的な人の組み合わせを変える必要があることを認識する必要があるかもしれない。
何よりもっと思いやりを持とう。次回、同僚が思うようにコミュニケーションできないことに不満を感じたら、「私の最大の課題は、アナリストに他のビジネス部門と話をするよう仕向けることだ」と、その行動の背景にあるものを考え、自分の行動を変えることで状況を改善できるかを考えるてみるべきだ。
成功するインサイトチームの14番目の秘密は、どのようにして内向的な人の力を利用するかその方法を学ぶことだ。
重要ポイント:
  1. インサイトチームは、企業の他の事業部門よりも内向的な人が多い傾向がある。特にアナリストが多くいる部門ではその傾向が強い。
  2. 私たちが影響を与えようとするマーケティング部門や経営幹部は、おそらく外向的な人の割合が高い。
  3. 過去数十年に職場で行われるようになった仕事の慣習の多くは、内向的な人よりも外向的な人に知らず知らずのうちに有利に働いている。
  4. 内向的な人の多くは、他人に影響を与えるという場面を居心地が悪く感じている。
  5. しかし、内向的な人が非常に得意とする影響力もあるので、内向的な人も含めたすべての人から最大限に力を引き出せるようにしよう。

 

第12章から第14章まで、インサイトチームがより優れたビジネスインフルエンサーになることで、変化を推進するための戦略的な方法について見てきた。しかし戦術に知恵を絞ることも必要だ。第15章では、その方法を説明する。

エディタV2

2023.3.22掲載


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