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ほんぶん

第3部 インサイトの戦略と人材をリードする
第23章 あなたの野心を定義する

JMRAインターネット調査品質委員
リサーチ・コンサルタント
岸田 典子


前章で見たように、現状を把握することは戦略策定プロセスの重要な部分であるが、それだけではインサイトが目指すべきビジョンを定義することはできない。インサイト機能が成功するためのビジョンを描くには、インサイトが組織のパフォーマンスに変化をもたらす可能性と、インサイトがその機会を実際につかむ野心の両面から検討する必要がある。

「野心」は、インサイトの世界ではあまり議論されないテーマだ。もちろん、チームの個々のメンバーは野心的だと認識されているかもしれないし、1対1や自己啓発のセッションで同僚と野心について話すこともあるだろう。しかし、あなたの会社では、インサイトという機能やコンセプトに対して、どのような野心を抱いているだろうか? あなた自身の個人的な野心は、インサイトがどれだけ変革的な役割を果たせるかについて楽観的にしているのだろうか?それとも、あなたのキャリアに対する野心が足りないのだろうか? 慎重なインサイトリーダーほど、自分自身のさらなる昇進に興味がないために、チームの真の可能性を認識できないことがある。

正当な理由かもしれないが、インサイトの可能性を検討するとき、それが思考を妨げているのではないだろうか?

IMAと最も緊密に連携しているグローバル小売企業のインサイト担当リーダーは、インサイトリーダーの個人的な野心と、彼らが社内で定義するインサイトのビジョンとの間には、非常に強い関連があると考えている。野心的な人は、まだ飛び立つ準備ができていないうちからチームが星のように高い目標を目指すよう仕向けることができる。同様に、戦略策定プロセスについて、考えてみてほしい。:

  • インサイトリーダーとしてのあなたの野心
  • チームに対する野心
  • インサイトが会社の重要な一部となることへの野心
  • 組織そのものに対する野心

この分野でのあなたの考え方に影響を与えるかもしれないのは、他のインサイトリーダーが示す野心である。IMAのインサイトフォーラム、専門家団体、調査分析会議、オンライン・ネットワーキング・グループのいずれかを通じて同業者と出会ったとしても、彼らが組織におけるインサイトの役割について語るときに見せる野心について考えてみる価値はあるだろう。他のインサイトリーダーも同じ考えを持っていると思いがちだが、調査・分析部門長の発言に注意深く耳を傾けると、その機能に対する彼らの野心、あるいは野心の欠如を読み取ることができる。 最後に考えるべきことは、これを定義するのは少し難しいが、リーダー(とそのチーム)の組み合わせである。

  • 使命感
  • 伝統
  • 価値観
  • 文化
  • 望ましい影響力

これらを総称すると「私たちが望むゲームのあり方」と言えるかもしれない。あるいは、戦略に関する章で読むような言葉を採用するならば、「インサイトをより広い組織の生活にどのように参加させたいのか」ということである。これを考える一つの方法は、IMAのインサイト参画のレンズを通して考えることである。


図4 インサイトチームの参加マトリクス

サービス提供: インサイトチームが、個々のプロジェクトに分析やリサーチを提供することに重点を置き、そのリサーチや分析が、「いつ、どこで、誰が、なぜ、何が起きているのか」に主眼を置いている場合、彼らは主に「サービス提供」の役割を果たしている。多くのインサイトチームは従来このような役割を担ってきた。しかし、このアプローチだけでは組織のパフォーマンスを変革することはできない。

顧客の声: マトリックスの左上の象限に移ると、多くのインサイトチームが、特に市場調査の伝統を持っている場合、その役割を果たしたいと強く願っていることがわかる。彼らが「顧客の声(VoC)」になるためには、プロジェクト間の点と点のつながりを築き、結合された証拠に基づいて意見を形成することに重点を置きながら、プロジェクトの提供を組み合わせる必要がある。しかし、IMAはこれをインサイトチームが果たすべき最適な役割とは考えていない。ビジネス上の意思決定には常にトレードオフが存在し、インサイトチームが単に顧客調査で示された意見を単に増幅しているだけでは、顧客、財務、業務上の要因のトレードオフをどのように行うべきかを他人に委ねていることになる。これでは市場から資金へのマッピングとはいえない。

プロジェクト・コンサルタント: 左下のサービス提供の象限を避けたいと思うインサイトリーダーは、右下の象限にも引き込まれることがある。この象限は、「プロジェクト・コンサルタント」と呼ばれ、「顧客の声」とは逆の立場をとる。この「プロジェクト・コンサルタント」の役割は、より進歩的な分析に重点を置くチームにますます取り入れられるようになっている。彼らは、特定の意思決定に関連するすべてのデータ(顧客、市場、業務、財務など)を客観的に分析することに重点を置いているため、経営コンサルタントとの共通点が多い。上記の「顧客の声」の役割とは異なり、市場から資金までのマッピングを行うが、このようなアプローチで作業するインサイトチームは、その任務のもう一つの重要な部分を見落としている。

戦略推進者: 右上の象限は、「顧客の声」チームによる大局的な意見と、プロジェクト・コンサルタントによるソリューション重視の貢献を組み合わせようとするインサイトチームが占めている。このようなチームは「戦略推進者」と呼ばれ、市場の消費者がなぜ組織の顧客となり、組織の価値をどのように生み出すのかについて、意見を展開している。 もしあなたが本書の最初のセクションを読んで、「自分のチームにインサイトの知識を養わせたい」「市場からお金までの正しい地図を作りたい」と思ったなら、次のセクションに進み、「影響力とコミュニケーションを通じて変化を促進しなければ、そのどちらもやる意味がない」と思ったなら、このセクションはあなたにとって自然な場である。しかし、錯覚してはいけない。これらすべての願望を組み合わせることで、インサイトにとって究極の野望を生み出すことができるのだ。

成功するインサイトチームの23番目の秘密は、組織におけるインサイトの野心を明確にすることである。

重要ポイント:
  1. ビジョンを描くには、変化をもたらすチャンスと、そのチャンスをつかみ取る野心を理解する必要がある
  2. インサイトチームが示す野心は、リーダーの野心を反映することが多い。
  3. インサイトチームの参加マトリクスは、インサイトに対する野心を検討するためのレンズとなる。
  4. 先進的なインサイトチームは、「サービス提供」から離れ、「顧客の声」や「プロジェクト・コンサルタント」となりつつある。
  5. IMAは、インサイトチームの究極の野望は、他のすべての役割の長所を併せ持つ「戦略推進者」になることだと考えている。

 

エディタV2

これで、現状分析とチームの野心に関する考察に基づいて、インサイトのビジョンを描くことができるはずだ。インサイトのリーダーは、それだけで終わってしまうことが多いようだが、戦略をページ上の言葉以上のものにしたいのであれば、現実的な意味を考えなければならない。これが、次の章で行うことである。

2023.7.18掲載


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