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ESOMAR Congress 2019(9/8~11:エジンバラ)参加報告

ないよう
ESOMAR Congress 2019が、2019年 9月 8日(日)~11日(水)にイギリス・エジンバラ市において開催されました。

2019.9.17
報告: JMRA事務局長 中路 達也
JMRA ISO/TC225国内委員会委員長 一ノ瀬 裕幸


1.トピックス:演題から”Research”が消えたESOMAR大会
 今回のESOMAR大会のタイトルは”The Global Data & Insights Summit”であり、統一テーマは”TRANSFORMATION”でした。具体的には、「AI技術が促すリサーチ市場の変身」ということになるでしょう。
 取り上げられたテーマの大半がAIをはじめとする新技術とそれらへの対応に関するもので、60本以上のプログラムが走る中、演題に”Research”という言葉がついたものがほとんど見当たらなかったことが印象的でした。プログラム委員会の意思が反映されていたことはもとより、世界中で市場環境変化に対応した「変身」への模索が続いていることを象徴していたと思います。
 中でも、以下のようなテーマの発表が各所で目につきました。

 ・ ソーシャルリスニング(SNS等)、音声認識(Alexa、Chat Bot等)、画像解析(Instagram等)、感情解析等にAI技術を活用したデータ収集・解析手法の革新 
 ・ ストーリーテリング、シナリオクリエーションといった、解析結果を元にどう提案を組み立てるかにAI技術を活用する試み
 ・ それでもなお、「最後に(提案を)wonderfulにするには、人間のintelligenceが必要」なこと
 もう1つのキーワードは、「世界同時並行」でした。一般に新興国とみなされている国からの発表内容も欧米先進国となんら遜色なく、「横一線」の競争が繰り広げられていることが感じられました。

 ただし、残念ながらいずれの発表も試行錯誤の真っただ中で、興味深い成果も現れつつあるものの、当業界の将来を確実なものにするだけの決定打になり得るかは、まだ何とも言えない状況と思われました。また、生産性を画期的に向上させる期待が寄せられてはいるものの、現状ではまだコストが高く、パイロット的な取り組みとして研究段階の域を出ないものが多かったと思われます。
 率直なところ、これから何が本流になるのか、まだ全くわかりません。確かな果実を獲得できるまで、継続的な投資が必要と考えられます。

 
 今回のコンテンツを概観する限り、マーケティング・リサーチは伝統的な消費者行動調査の枠組みを大きく超え、以下のように顕著な変化の傾向がみられると言ってよいと思われます。

(1) 事業構想・企画・開発までを対象にした、デザインサイエンス領域の包含(拡張)
(2) AI・マイニング技術・インフラ整備など、先端テクノロジーの適用
(3) 新規事例(ベストプラクティス)の共有(の仕組み構築)

 これらのことは、企業レベルと人材レベルのそれぞれの境界部分において、例えばIT業界vsマーケティング・リサーチ業界、データサイエンティストvsマーケティング・リサーチャーというように、競争がより激化していくことを意味していると考えられます。このような状況下で、当業界はどのようなビジョンを持ち、どのようなポジショニング獲得を目指していくべきでしょうか? 
 私たち全員に問われている課題と感じられました。

   
(写真:発表者との質疑応答風景)

2.各国協会代表者会議(9/8)の概要
 大会の開幕に先立って、ESOMARと協力関係にある(JMRAを含む)各国の市場調査協会の代表者会議が行われました。アジア地域からは、昨年発足したばかりのミャンマーの協会(15社参加)が新たに加わりました(ただし、出席された代表者はドイツ出身の方でした)。
 代表者会議では、この間に取り組んできた以下のような課題に対する最新の報告がなされました。
 ・ 若者を当業界に招き入れるための”Research Got Talent”の取り組み(香港・インド) 
 ・ 各種規制への対応を支援するWebプラットフォーム”SERENE”の公開
  (今のところ英語対応のみのため、日本での活用策は今後の検討課題)
 ・ 国際的に市場調査業界をアピールするための”Global Presentation”の取り組み
 ・ ESOMARのホームページに国別のアピールページを設け、各国協会に内容を委ねること
 その後、「各国の協会のベネフィット」を再確認するグループ討議が行われ、プライバシー保護に関わる積極的な活動(政府機関へのロビー活動等を含む)に取り組むべきことなどが確認されました。  


(写真:各国協会代表者会議で挨拶するESOMARのJoaquim Bretcha会長)

3.ESOMAR会員年次総会(AGM)の概要
 大会初日の夕刻、恒例の年次総会(Annual General Meeting)が開催され、会計報告の後に、以下のような今期の方針(及び決議案)が提起され、承認されました。

 ① 北米を今期のESOMAR重点活動地域として支援する。同地域は世界市場の45%を占めるにもかかわらず、会員比率は11%にとどまっている。また、カナダでは2年前に当時の協会が破産・解散してしまい、新しい組織の再構築が進んでいる。
 ② 引き続き従来の取り組みを進める。日本にとって重要と思われる課題は以下の通り。
  ・  データサイエンス領域の人々との連携
  ・  ESOMAR版GDPR行動規範
  ・  ガイドラインの改訂
  ・  e-Privacy法関連のロビー活動
 ③ 会員規約の改定。主要なポイントは以下の通り。
  ・  対象領域を「市場・世論・社会調査」から「市場・世論・社会調査及びデータ分析」に拡張
  ・  懲罰委員会の権限強化と活動手順の明確化(トラブル増加への対応?)


(写真:年次総会で発表するESOMAR執行部メンバー)


※)今回のような大会に限らず、今後もJMRAの会員(正会員・賛助会員)向けにESOMARの各種イベント参加費の15%割引サービスが提供される予定です。ご希望の方にはその都度、JMRA会員専用のプロモーション・コードをご案内いたしますので、事務局までご連絡ください。

 

以上