本文へスキップします。

フリーワード検索 検索

【全】ヘッタリンク
【全・SP】バーガーリンク
たいとる

Withコロナ時代に向けたリサーチ業界の準備 第4回

ほんぶん

~オンライン・ワークショップ、ウェビナーの企画と準備 ~

JMRAインターネット調査品質委員
リサーチ・コンサルタント
岸田 典子

Withコロナの時代になって、オンライン・ミーティングは日常のありふれた光景になりつつあります。また、オンラインでのワークショップやウェビナーも急速に広まっており、JMRAにおいても定性基礎セミナー、JMRAオンライン・ミニ・カンファレンスが行われます。

オンラインでのイベントは、リアルのイベントと比べると会場経費等が不要な反面、参加費を安くせざるを得ず、実施側にとって収益的に小さいものになります。オンラインでの実施は、参加者の満足度、理解度や交流促進で劣るイメージがあり、また新しいツールを使う準備の面倒さもあり、コロナの影響がなければあえてオンラインでやる必要は感じられてきませんでした。
しかし、今後コロナ対策をしつつ営業や研修を続けてゆくためには、リサーチ業界においてもオンライン化への対応は必須といえます。

海外のリサーチ業界のサイトを見るとオンラインの学習コンテンツが充実しており、コロナ感染者が急増しようとロックダウンがあろうと学びを止めることなくサービス提供が可能です。一方日本ではオンライン・コンテンツへの取り組みは始まったばかりです。もっとサービスを拡充する取り組みが必要です。

コロナが話題になり始めたころから、私は、オンラインやハイブリッド(リアルとオンラインの融合型)の企業やNPO、官公庁、学会などのワークショップ、アクティブ・ラーニングプログラム、アイデア開発プロジェクトに関わることが増えてきました。またJMRXのオンライン・ワークショップやウェビナーの企画・実施を通して学んだリサーチ業界にも役に立つ情報を共有したいと思います。

■Zoomのワークショップ(ミーティング)

オンライン・ミーティングではさまざまなツールが使われ、各ツールとも頻繁にアップデートされていますが、多人数でビデオ使用時の安定感、グループワークを自由に設定する機能の使いやすさなど、多人数が集まっての研修・ワークショップ用のツールとしては、今のところZoomミーティングが抜きんでています。
オンライン・ワークショップで参加者の満足度を高めるポイントは、参加者同士の対話にあります。
組織や職位の違いを超えて人が集まって会話を楽しむ、対等な人間関係、オープンで言いたいことが言える場というのは、コラボレーションやイノベーションのための土壌として欠かせません。心理学的なメソッドを使った心のケアや葛藤や衝突のミディエーション(調停)のための深い対話もオンラインで提供されるなど活用の幅が広がっています。単なる打合せ用としてしか活用していないとしたら、非常にもったいない話です。

<オンライン・ワークショップの成功のポイント>

・プロセスのデザイン(問の立て方)が重要

ワークショップのプロセスのデザインは、定性調査の課題の考え方と共通するものがあります。
課題の設定、目的と目標(アウトカム)の共有、グラウンドルールの説明から始めますが、どのような質問を問いかけるか、どのような順序で考えてゆくかは、リアル、オンライン関係なく極めて重要です。
香取一昭・大川恒著「ワールド・カフェをやろう」*では、問いを立てるポイントとして「経験を思い起こす問い」、「自分事として考えられる問い」、「ポジティブな発想を促す問い」、「本質を考えることを促す問い」、「思いがけない視点からの問い」をあげています。

・一人で考える時間をとる

グループ内で話し合った後、全体共有の流れを作りますが、その対話の質を上げるには、グループに入る前に、短くても個人で考える時間をとってあげることが大切です。後のディスカッションの質に影響します。

・ツールに溺れない

新しいツールが次々と登場していますが、参加者がストレスなく使えるツールかどうかが重要です。
ツールの種類は絞った方がよいでしょう。一般の方が対象の場合はツールの使い方の説明に時間がかかりますし、個人差はありますが年齢とともにリアクションが遅くなることも想定したほうが良いと思います。とはいえ、オンラインツールが一般化するにつれ、より効果の高いツールの出番が増え、使い方も洗練されてゆくので、常に情報のアップデートが必要となります。

■Zoomウェビナー

Zoomミーティングがコミュニケーションのツールであり、インタラクティブ性を重視するコンテンツに強みをもつ一方、ウェビナーは情報提供に適しています。参加者に影響されないので、教育用のコンテンツなどの繰り返し使えるコンテンツやオンデマンドの教材にしやすいといえます。また参加者にとっては、ウェビナーは耳だけ参加でもよいという気楽さもあります。
ウェビナーとミーティングのどちらにするかは、「情報の伝達」と「参加者の交流」のどちらを重視するかで決めるとよいと思います。ウェビナーの聞きっぱなしで終わらず、コミュニケーションにつなげたい場合、ウェビナーの終了後にミーティングに案内するなどの組み合わせも可能です。

<ウェビナーの成功のポイント>

ウェビナーは情報を一方的に流すコンテンツとなるため、参加者を飽きさせないために司会進行の元で複数の登壇者が語るスタイル、対談、ビデオやクイズ、Q&Aの時間を設けるなどの工夫が可能です。人気YouTuberやラジオ番組からも学べることが多いと思います。
情報を一方的に流すプレゼン・スタイルよりも会話形式の掛け合いで進行している方が、聞いている側にとって受け取りやすく内容も印象に残るものになるようです。またアクティブラーニング領域の学習者をいかに惹きつけるかという工夫にはリサーチャーにも役立つものが多くあります。情報の提供方法はますます進化しています。


JMRAもリサーチ業界も、コロナ下でも歩みを止めないよう、このようなオンライン・コンテンツを取り入れ、充実させてゆく必要があるといえます。海外のリサーチ業界 MRS(イギリス)AMSRS(オーストラリア)には、多数のオンライン・コンテンツがあり、大変参考になります。

次回からはこのような海外のオンライン・コンテンツについてご紹介したいと思います。


*ワールド・カフェをやろう 香取一昭・大川恒 日本経済新聞出版社

掲載日

2020.7.20掲載