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アニュアル・カンファレンス2019レポート 第2回

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前回に引き続き、JMRAアニュアル・カンファレンス2019の模様をお伝えします。

今回は立教大学 経営学部 教授キャリセンター部長 佐々木宏氏の「ワクワクするフレームを創ろうーフロントランナーは私たちだー」をレポートします。

まず「Society 5.0」についての話から始まりましたが、私は恥ずかしながら「Society 5.0」について全く知りませんでした。講演終了後に調べたのですが、日本の科学技術基本法の2016~2020年までのキャッチフレーズで、IoTやICTなどを活用して、社会が抱える様々な課題を解決するコンセプトとのことだそうです。
「Society 5.0」時代において、産学の共通認識として「論理的思考と規範的判断力をベースに社会システムを構想する力を備えた人材 」、要は専門分野が文系理系は関係なく、リテラシー (数理的推論・データ分析力、文章表現、外国語コミュニケーション力など)と、 論理的思考力 と規範判断、課題発見・解決力、 未来社会の構想・設計力、高度専門職に必要な知識・能力が求められているそうです。前回お伝えした会長挨拶の内容とも被りますが、全てを兼ね備えている人はおそらくいないため、その中で自分のポジションを見つけていかなければならないでしょう。

産学で推進しているコンセプトなので、学生の育成のためのインターンシップ、新卒一括に加えジョブ型雇用、また社会人に対しては生涯を通じた学び直し(社会人リカレント教育)と入った人材の育成手段を用いていくとのことでした。ジョブ型雇用とは、具体的には職務を明確にし、専門能力を磨いていく働き方、仕事に対して人が割り当てられる雇用形態です。日本の企業はこれまでメンバーシップ型雇用(採用後の職務割当て)が大多数でしたが、ジョブ型雇用は近年働き方改革の一環として議論されており、いずれ広まっていくのではと言われています。

ジョブ型雇用によって、ある特定の職種でのプロフェショナルの採用として考えられている職種が「AI人材」「データサイエンティスト」「マーケティング」です。
これらは全てマーケティング・リサーチに関係しており、講演のタイトル「フロントライナーは私たちだ」は、つまり、マーケティング・リサーチ業界の人間こそが、Society 5.0時代をリードしていく存在なのだと佐々木氏は主張しています。

データサイエンティスト協会曰く、ビジネス力、データサイエンス力、データエンジニアリング力がデータサイエンティストに求められるスキルです。この中でいうと、マーケティング・リサーチャーは、ビジネス力があり、マーケティングのスキルがあるというポジショニングとなります。マーケティング・リサーチャーの側から見ると、データの分析というデータサイエンス的なスキルが必要になります。つまりどちら側から見てもマーケティング・リサーチに関係しているというのが佐々木氏の主張の根拠です。

すでに業界にいる人やこれから業界へ進む学生はSociety 5.0を引っ張っていく人材に他ならないですが、どういうフロントランナーを目指すのでしょうか。

ここから佐々木氏は、昭和から令和までのマーケティング・リサーチの進化と将来像についての話に移りました。消費者動向を探るために、パソコンや汎用機が無く、紙を使った昭和の時代からWebなどを使用した平成の時代、そしてIoTのようにセンサーが仕込まれ人や車など全てのものからリアルタイムでデータを取れる令和の時代まで進化。また、分析手法も多変量解析や重回帰分析を手動で行っていた時代から、今ではソフトにアルゴリズムが組み込まれていて、調査ができれば分析ができてしまう時代へ。そして現代では、企業がERPを用いてデータを資産として扱い始め、リアルタイムに流通したデータを広告などで自動的に処理したりなど、マーケティング活動とマーケティング・リサーチが同じ軸で動き始め、そこでのアルゴリズムは、人間が考えるのではなく、AIが代替して処理を行うようになってきています。

これにより、佐々木氏は企業と市場が一体化し、リサーチャー、コンサルタント、代理店などが双方のデータをつなぎ、Society 5.0を作っていく原動力となっていくと主張しています。「Co-Creation」という言葉がありますが、これは様々な立場の人、企業がイノベーションの創出のために共同で物事に当たることを指します。佐々木氏はマーケティング・リサーチこそ、コアとして位置づけられると考えているようです。
そして、これからの組織(業界・企業・組織)としてのフレームをSociety 5.0時代にどのように創っていくことについは、次のように述べています。まず、新ビジネスの創出、全く新しいものをデジタルプラットフォームの上に作り上げてビジネスチャンスを創出し、これを企業にブレイクダウンしていきます。これをどう企画し、開発するかというところに、デジタルデータが使われます。そして、商品ローンチ後、マーケティング施策としてどのようにPRしていくかを考えるときに、またデジタルデータが使われます。これらのフェーズのコアとしてマーケティング・リサーチ必要となるフィールドが存在することになるとのことです。

佐々木氏は、今後、マーケティング・リサーチャーは自分の強みを理解し、どのフェーズにコミットしていくか、誰と組むか、どのような方法でデータを活用していくかを考え、それを意識した上でどのようにフレームワークを創っていくかが重要となると主張しました。さらに、組織のフレームだけでなく、リサーチャーのフレームについてもSociety 5.0に向かって各々が考えるべきで、まずどういうリサーチャーになりたいのかが問われることになるとも話していました。何がやりたいのか、強みは何か、どのようなキャリアを目指すか、これらのフレームを自分自身で創っていくことが、今後のフロントランナーとして活躍していくキーとなるのでしょう。

以上で講演は終了となりました。会場で聞いていたリサーチャーやリサーチャー志望の学生さんには、今後のキャリアプランについて考える良い機会になったのではないでしょうか。

次回は株式会社ZOZOの田端氏の基調講演についてお届けします。
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