[教育内容]
マーケティングの視点から消費者の消費態度・行動を分析しようとする時、態度・行動の差は、性、年齢、未既婚、学歴、職業、家族構成等の個人属性の差異や各々の生活環境、ライフスタイルや志向性等の心理的要因により影響を受けていると考えられます。またこれらの消費者の態度・行動は、一つの要因が影響した結果生じている場合もあれば、複数の要因が複雑重層的に影響した結果生じる場合も考えられます。なお個人属性の多くは調査によらなくても判然とする事項がありますが、個人属性の一部とライフスタイルや心理的傾向は、調査しなければ判然としません。このため、マーケティング戦略の計画立案にとって、マーケティング・リサーチは必要不可欠な手法といえるでしょう。
マーケティング・リサーチにより入手したデータの分析にあたっては、消費者の態度・行動に多数の要因が複雑重層的に関与しているために、「クロス集計」等の基礎的分析技法のみでは解明できないでしょう。このような状況に応じて、消費者の態度・行動に対する各要因の関与度や、多数の要因間の複雑重層的な構造を解明する手法が「多変量解析」の各手法です。
「多変量解析」の手法は、「予測要因分析」と「構造分析」の手法に大別できます。
消費者の消費態度・行動(「多変量解析」では「目的変数」、「従属変数」等と呼ぶ)に影響を与える要因(「独立変数」、「説明変数」等と呼ぶ)の関与度を検出したり、要因の条件を変えて、消費態度・行動の変化を予測しようとする手法が「予測要因分析」です。本講座で学習する手法の中では、「重回帰分析(ダミー変数化と「数量化Ⅰ類」を含む)」、「判別分析(ダミー変数化と「数量化Ⅱ類」を含む)」、「コンジョイント分析」等が該当します。解析に用いる各データ(「目的変数」と「独立変数」)の「尺度」の種類によって、利用できる手法が制約されます。この手法によるデータの制約は、調査票の質問・選択肢の設計を制約することになります。
マーケティングの視点からは、検出された各要因(「独立変数」、「説明変数」)のどの要因が、どのように消費者の購買態度・行動(「目的変数」、「従属変数」)に影響を与えているのかが判明しますので、マーケティング戦略に大いに活用することができます。
ところで、先に述べたように、消費者の態度・行動の背景には、情報、経験や心理等消費者がもつ多くの要素の複雑重層的な構造が存在していると考えられます。この構造を解明しようとする手法が、「構造分析」です。本講座で学習する手法の中では、「主成分分析」(及び「因子分析」との違い)、「コレスポンデンス分析」(及び生データによる「数量化Ⅲ類」)、「クラスター分析」等が該当します。これらの「構造分析」もまた、「予測要因分析」と同様、解析に用いるデータ(「説明変数」)の「尺度」の種類によって制約され、したがって調査票の質問・選択肢の設計を制約することになります。
マーケティングの視点からは、消費者の態度・行動の背景にあり、その基となる複雑重層的な要因構造を探索・究明することは、製品・サービスのターゲット層を見出し、そのターゲットをどのようなコンセプト、どのような素材や効能(コンセプト付きプロダクト)で攻略するのかというマーケット戦略の構築に大いに役立つと考えられます。なお、このターゲットを抽出するために、消費者のニーズを分類するために広く用いられている方法が、本講座で学習する「クラスター分析」になります。
このような講座内容ですので、クライアント・調査会社双方のマーケティング・リサーチ計画・分析担当者に、是非受講することをお薦めします。なお、コンピュータ上で解析モデルを運用する担当者にとっても、本講座の受講は作業内容の理解と品質向上に役立つことでしょう。
なお、本講座で登場する統計手法や解析手法の一部について、統計・解析のフリーソフト「R」を用いた処理方法と結果を紹介します。「R」のダウンロード方法と処理のためのコマンド(パラメータ)も提示しますので、受講生が実務で活用することを期待しています。
<使用するテキスト>
「第2分冊」:『マーケティング・リサーチに従事する人のためのデータ分析・解析法』
①「調査票の設計とデータ分析」の概説
・「第2分冊 Ⅰ-4 調査票の設計とデータ分析」(pp.8-11)
②「予測要因分析」の概説
・「第2分冊 Ⅲ-1 予測要因分析とは」(pp.48-49)
③「回帰分析」の詳細
・「単回帰分析:第2分冊 Ⅲ-2-(1)」(pp.49-52)
・「単回帰分析による分析例:第2分冊 Ⅲ-2-(2)」(pp.52-53)
・「重回帰分析:第2分冊 Ⅲ-2-(3)」(pp.54-55)
・「重回帰分析による分析例:第2分冊 Ⅲ-2-(4)」(pp.55-69)
・「ダミー変数による重回帰分析:第2分冊 Ⅲ-2-(5)」(pp.70-76)
・「数量化Ⅰ類(概説):第2分冊 Ⅲ-2-(6)」(pp.76-82)
④「判別分析」の詳細
・「判別分析とは:第2分冊 Ⅲ-3-(1)」(pp.82-84)
・「マハラノビスの距離に基づく判別分析: 第2分冊 Ⅲ-3-(3)」(pp.87-90)
・「判別分析による分析例: 第2分冊 Ⅲ-3-(5)」(pp.90-94)
・「ダミー変数Ⅱよる判別分析:第2分冊 Ⅲ-3-(6)-①」(p.94)
・「数量化Ⅱ類(概説):第2分冊 Ⅲ-2-(6)-②」(pp.94-100)
⑤「コンジョイント分析」の詳細
・「コンジョイント分析とは:第2分冊 Ⅲ-4-(1)」(pp.100-103)
・「直交計画:第2分冊 Ⅲ-4-(2)」(pp.103-105)
・「コンジョイント分析による分析例:第2分冊 Ⅲ-4-(3)」(pp.105-108)
⑥「構造分析」の概説
・「構造分析とは:第2分冊 Ⅳ-1」(p.110)
⑦「主成分分析」の詳細
・「主成分分析とは:第2分冊 Ⅳ-2-(1)」(pp.110-112)
・「相関行列と共分散行列に基づく分析の違い:第2分冊 Ⅳ-2-(2)」(pp.112-113)
・「主成分の求め方:第2分冊 Ⅳ-2-(3)」(pp.113-116)
・「主成分数の決定:第2分冊 Ⅳ-2-(4)」(pp.116-118)
・「主成分分析による分析例:第2分冊 Ⅳ-2-(5)」(pp.118-125)
・「主成分分析と因子分析の違い:第2分冊 Ⅳ-3-(3)」(仮説検証との関係を含む)(pp.128-130)
⑧「コレスポンデンス分析」の詳細
・「質的データの数量化:第2分冊 Ⅳ-4-(1)」(pp.146-147)
・「コレスポンデンス分析:第2分冊 Ⅳ-4-(3)」(pp.150-153)
・「コレスポンデンス分析による分析例:第2分冊 Ⅳ-4-(4)」(pp.153-157)
・(生データ(raw data)による)「数量化Ⅲ類(概説)」:第2分冊 Ⅳ-4-(2):第2分冊Ⅳ-4-(2)」(pp.147-150)
⑨「クラスター分析」の詳細
・「クラスター分析とは:第2分冊 Ⅳ-5-(1)」(pp.157-158)
・「クラスター分析法の種類:第2分冊 Ⅳ-5-(2)」(pp.158-159)
・「類似度と非類似度(ユークリッド距離):第2分冊 Ⅳ-5-(3)」(pp.159-162)
・「階層クラスター分析法の種類:第2分冊 Ⅳ-5-(4)」(pp.162-163)
・「階層クラスター分析法の結果の解釈:第2分冊 Ⅳ-5-(5)」(pp.163-165)
・「階層クラスター分析法による分析例:第2分冊 Ⅳ-5-(6)」(pp.165-169)
・「非階層クラスター分析法(κ-menas法):第2分冊 Ⅳ-5-(7)」(pp.169-171)
・「κ-menas法による分析例:第2分冊 Ⅳ-5-(8)」(pp.171-174)
[受講前の習得が望ましい関連知識]
①「測定法」と「尺度」の種類及びその特性
『マーケティング・リサーチに従事する人のための調査法・分析法』(第1分冊の)76~79ページ
②調査票の「回答形式」の設計
同書の90~97ページ
③「代表値」と「分布の散らばり」
同書の123~128ページ
④「統計的仮説検定」
同書の180~202ページ
※本講座受講の前提として必要な知識については、受講者のレベルに応じて不足する知識を補足・説明しますが、受講者にはできれば事前に上記の知識を習得しておくことを望みます。
なお、<マーケティング・リサーチ ベーシックコース>と<マーケティング・リサーチステップアップコース>の講座を受講した方は、これらの知識を既に習得済みと思います。これらの授業を受講していない方のうち知識が不足していると思われる方は、参考書籍『マーケティング・リサーチに従事する人のための調査法・分析法』(第1分冊)の該当部分を一読しておくと、本講座の授業内容を理解し易いと考えられます。
そこで、参考書籍『マーケティング・リサーチに従事する人のための調査法・分析法』(第1分冊)をご希望の方は、お申し込み時にその旨をご記入ください。テキスト(税込2,640円)を加えてご請求させていただきます。