ESOMAR WIN2007ミーティング会議報告
JMRA倫理綱領委員会委員
(株)日経リサーチ 池田 達哉
WIN(World Industry Network)は、大手調査会社と大手クライアント、各国のマーケティング・リサーチの協会が年に一度集まり、業界としての活動方針を議論する会議である。 今年は32名が参加し、ジュネーブからスペインのバレンシアに場所を移し、2007年2月22日~23日にかけて開催された。
今回の会議でもっとも印象的だったのは、モエ・ヘネシー社のプレゼンテーションである。モエ・ヘネシー社の市場調査の予算のうち、およそ50%以上がいわゆる伝統的な市場調査ではないサービスに使われているという。具体的にはPOS情報やblogなどのデータなど。その他のクライアントでは、クレジットカードなどの購入履歴のデータサービスも広く活用されているようだ。
つまり従来であればマーケティング・リサーチが果たしていた役割を、新しい情報サービスが代替し、クライアントのニーズを満たし始めているという状況である。 その上、これらいわばマーケティング・リサーチの周辺に位置する情報サービスのほうが、マーケティング・リサーチより市場規模が大きく、しかも成長率が高い。
WINの議論では、これらの会社をESOMARのメンバーに取り込み、同じ品質基準をあてはめ、競争していこうという方針が採択された。
調査手法としてインターネットはどんどん普及しているが、品質その中でも特にアクセスパネルについて品質基準が必要との議論があった。 ESOMAR内で委員会を作り、検討することとなった。
ICC/ESOMARの倫理綱領の改訂が昨年来議論されているが、今年の第4四半期にESOMAR会員の投票を行い、早ければ年内、来年には新綱領発表というスケジュールが提示された。 また停滞していた自主規制の議論も再開されそうだ。特に欧州ではEUから強く求められているようだ。
調査協力率の低下、インターネット調査の普及、さらに新しい情報サービスの成長など、マーケティング・リサーチを取り巻く環境は大きく変化している。 ESOMARでは、倫理・品質基準を高く掲げ、自己規制をかけていくことで、対応しようとしている。
一方、参加していた各国の団体の代表者と話し合う機会があったが、それぞれの国で特有な事情もあり、ESOMARの方針に対して戸惑いが感じられた。 JMRAでも各国の協会との連携しながら、これらのESOMARの動きへの対応を検討していく必要があると思われる。(以上)
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