実査管理
データ収集基準
本項では以下に掲げるデータ収集活動を対象とする。
調査員説明会(インストラクション)
- 実査作業に入る前に全調査員に対して作業の説明、指示、調査対象の割り当て、物品(調査票、謝礼品、呈示カードなど)の配布を行なうための指示集会を設け、その説明は調査担当 または実査管理担当者がこれを行なう。
- その際、実査作業の内容、手順を調査員に指示するための調査員指示書(内容は(1)調査の概要(2)実査作業の方法(3)調査票の仕組み、質問・記入方法など)を必ず作成し、調査員説明会の席上で配 布し、さらにその内容を口頭で説明、徹底する。
インスペクション(実査監査)
ここでの「インスペクション」とは、調査員バイアスあるいはミスや不正による事実でない回答を発見し、データへの混入を排除するための監査をいう。
- 1.インスペクションの目的と実施
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- すべての会員社は、責任をもってインスペクションを実施しなくてはならない。
その結果は調査の質の向上とともに、調査員の評価・教育に活用されるものと位置づける。
- 本目的より、回収時の対象者コールバックも広義にインスペクションに含まれる。
- 2.インスペクションの対象・数
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- インスペクションは、会員社の行うマスサンプルを対象としたすべての訪問面接調査(訪問・留置併 用を含む)について適用される。
- 原則としてすべての調査員が対象となる。
- 実施するインスペクションの数は、検証方法の如何を問わず、各調査作業の最低10‰について検証を実施しなければならない。(必定、不正票が発見された場合は当該調査員の担当した全票を 行なう)
- 3.インスペクションの方法・時期
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- インスペクションは、実査開始と併せスタートし、集計段階以前には完了させねばならない。
- その検証方法は、回答者に電話で、郵送で、または面接して、再接触の上で確認する。
- 実施担当するのは、職務を遂行するのに適切な知識を持った責任者がこれにあたる。
- 4.インスペクションの内容
- インスペクションは、以下の内容を網羅することを原則とする。
- 訪問日時(訪問の確認)とテーマ領域
- 調査方法が指示通りであったか(面接・留置など)
- 対象者が指示通りであったか
- カードなど提示物が指示通り使用されたか
- 調査員の態度・印象の確認(服装・言葉遣いなど)
- 事実に関する項目について、2問以上の再質問結果
- 調査所要時間の概算確認
- 謝礼品の受領確認(金券においては額面も)
- 5.インスペクション結果のフィードバック
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- インスペクションの結果は、適切な再トレーニングや研修のための資料として用いるため、調査員個人の業務経歴とともに記録、保管されなくてはならない。
- 重大なミスが発見された場合は、クライアントを含む関係者全員に報告されなければならない。
ミスした調査員が他の調査を並行して行っている場合、その調査についても全票の監査チェックをしなくてはならない。
- インスペクション結果をクライアントに報告する必要はないが、クライアントより実施有無の確認があったときは、その結果についていつでも報告を要する。 (報告内容は、実施数と総計での 結果を報告し、個の情報は開示しない)
- 調査員のミスが故意であったと判定されるケースでは、その調査員が再び調査業務につくことを許可しない。
- ミスが調査員の経験不足や認識不足など故意でないケースでは、当該調査員の再教育を徹底して行ない、充分に能力がついたと認められるまで調査業務につかせてはならない。
調査員評価・調査員トレーニング
- データの精度を保証するために、会員社はすべての調査員に対して、業務遂行に最低限必要な知識・実査経験が個別に備わっているかを評価管理する必要がある。
- その確認の手段として調査員評価は行われる。
- その評価結果により、備わっていないところをトレーニングする必要がある。
- また、新規に採用した調査員(以下、新人調査員)に対しては、すべての者に新人調査員向けのトレーニングを行わなければならない。
- 1.トレーニングに関する原則
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- 会員社は、すべての調査員が業務遂行するに適したトレーニングを受け、かつ実査経験を十分積んでいることを確認する責任がある。
- 調査員トレーニングは、新人調査員の他に調査員評価によって最低限必要な知識・実査経験が不足していると判断された経験のある調査員も対象とする。
- トレーニングは、ガイダンス・*1ロールプレイイング・実査実習・同行実査などの方法により行われる。
- トレーニングは、スーパーバイザーまたは実査スタッフのうち適切なトレーニングを受け、かつ充分な実査経験を積んでおり、トレーニングを実施するのにふさわしい者によって行わなければ ならない。
- 会員社で行ったトレーニングの詳細および過去の実績はその都度、記録としてファイルに保管する。
- 2.新人調査員向けのトレーニング
新人調査員トレーニングでは、最低限「ガイダンス」(2時間)、「同行実査」(最低3ケース)の基礎トレーニングを行わねばならない。
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- 1.ガイダンスの内容
- 新人調査員へのガイダンスの項目(業務遂行に最低限必要な知識)は以下のとおり。
- 調査の基本的な知識
- マーケティングおよびマーケティングリサーチの目的と価値
- JMRAと「マーケティングリサーチ綱領」の理解
- 調査の手続き
- 様々なリサーチ手法の概要
- マーケットリサーチの専門用語
- 調査の流れ(企画→実査→集計→分析→報告)
- 調査に用いる資材の説明(指示書・調査票・呈示カード・挨拶状など)
- クオリティコントロールの手順(指示、点検、回収、同行実査、インスペクション、調査員評価方 法など)
- 対象者の選定方法
- 実査技術
- インタビュアーの心得(*2プロービングの方法など)
- リクルート手法
- 割当手法
- その他事務手続き
- 2.同行実査
- 新人調査員はできる限り最初の任務の開始間近に同行し、単独で業務を遂行できる能力の確証が得られるまで、十分な実地研修を受けさせなければならない。
- 3.トレーニング期間の目安
新人トレーニングは、あくまでそれぞれの研修内容が習得された時点で完了とするが、最低限の期間をガイダンス2時間、同行実査最低3ケースとする。
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- ガイダンス ・・・・・・・・・ 2時間
- (ロールプレイイング ・・ 30分)
- (実査実習 ・・・・・・・・・ 5ケース)
- 同行実査 ・・・・・・・・・・ 最低3ケース
- 3.調査員評価・再トレーニング
すべての調査員が請け負った調査を如何なく行うことができるように、適切なトレーニングを受けているということを、会員社は確認しなければならない。
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- 1.調査員評価の原則
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- 調査員評価は、すべての調査員に対して、継続的に行われなければならない。
- 調査員評価は個別調査においてその都度、初票点検・回収点検・インスペクション、もし同行実査を行った場合は同行者の記録などから評価を行う。
- 評価は、スーパーバイザーまたは実査スタッフのうち適切なトレーニングを受け、かつ充分な実査経験を積んでおり、トレーニングを実施するのにふさわしい者によって行わなければならない。
- 2.評価の頻度
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- 最初の評価は、最初の同行実査の日から6ヶ月以内に行わなければいけない。
- その後、6ヶ月のインターバルで年2回、少なくとも年に1回は評価を受けなければならない。
- 3.調査員評価の基準
- 調査員の評価は、以下の項目について行うものとする。
- 適切な対象者に調査を行っているか
- 訪問時の挨拶などの *3ラポールができているか
- 調査票の質問通りに行っているか
- 記録は正確か
- 助成物の呈示は手順通りか
- OA質問のプロービングは的確か
- 記入漏れ、ロジックエラーなど、調査結果の内容
- 4.評価結果のフィードバック
評価結果は、できるだけ早く調査員にフィードバックし、今後必要と判断されるトレーニングは何かを知らせなければならない。
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- 5.再トレーニング
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- 評価は同時に、適切なフィードバック、ガイダンス、研修を行う貴重な機会である。
- その調査員に備わっていないと判断された箇所があった場合には、再トレーニングを行う。
- 再トレーニングは少なくとも同行実査・ロールプレイイング・実査実習・研修のいずれかを行い、実査の実践的技術の習得レベルをみなければならない。
- 6.評価結果、保存の必要性
評価結果は、その調査員が登録を抹消するまで時系列的に保存する必要がある。
保存する内容として以下のものがある。
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- 評価の方法(同行実査・インスペクション・初票点検・回収点検など)
- 評価日時
- 評価結果の内容
- 今後必要とされるトレーニング
- トレーニング実施とその結果
*1「ロールプレイイング」とは、実際にフィールドを想定して行う調査員と対象者(役割演技)の模擬面接のこと。
*2「プロービング」とは、自由回答の質問で対象者の回答が不十分な場合にもっと詳しく教えてもらうように追求の質問を行うこと。
*3「ラポール」とは、調査員と対象者の間に生じる「親和関係」をいう。
ラポールを作ることによって調査をやりやすくし、またタテマエでなくホンネの回答が得やすくなる。
調査結果の記録・管理
- ここでの「記録」とは、実査にあたり行われた事実とその環境を的確に把握し残すことであり、調査品質の保証とすることを目的とする。
- また万一問題が発生した場合に於ても原因に速やかに遡及できるようなデータを残すこと、および実査環境の変化を把握する上で会員社共通のフォーマットとしてその基準を示すものである。
- 1.調査目的・テーマ
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- 調査種別(市場調査・世論調査・その他)
- 調査対象・サンプル数(設定・回収数)
- 調査方法(II.3.2に準ずる)
- 調査ボリューム(例 A4版5頁、B5版10頁等)
- 調査地域
- 日程(指示日、実査期間、回収日)
- 調査対象者への謝礼品
- 2.実査の記録項目
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- 抽出台帳(住民基本台帳、選挙人名簿、電話帳、住宅地図等)
- 抽出方法(層化二段無作為抽出法、性年代別割当法等)
※実施に当っての変更があった場合、その理由と内容
- 地点別一覧(地点数、地点名住所、地点別対象数)
- 動員調査員の種別(男性・女性・学生等)および人数
- 事前挨拶状発送の有無
- クライアント名の告知有無
- 初票点検・中間回収の有無
- 回収数(正規完了数、抽出済予備完了数、現地補充数)
- 回収率および「不能」内訳別数(※II.5.2 参照)
- 調査員稼働記録
例:
- 平日・休日、午前・午後・夕刻
- 行動日時別訪問件数(現地アタック数含む)
- 行動日時別完了数
- 完了1件当りの平均面接時間
- 備考(計画と実績のズレ、トラブルの有無と内容)
外部委託のケース
実査を外部業者に委託する場合でも管理運営の責任は会員社にあり、本ガイドラインが適用される。
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