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【レポート第1回】インサイト産業を展望する ~マーケティング・リサーチ2021

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宮寺 一樹(ウェブ・メルマガ分科会委員長)

今年も昨年に引き続き、オンライン開催となったJMRAカンファレンス。
3回に渡ってレビューをお送りします。

まずはJMRA会長の内田俊一氏からのオープニングメッセージをご紹介します。
主に、今後のマーケティング・リサーチ業界とそれを取り巻く世の中の動きについて語っています。

■コロナ以降、世界はどう変わっていくか DX、IOT、5Gなどのキーワードで読み解く

「先端技術が世界を変えるというテクノロジー主導型の発想が多い。海外では今頃DXが重要だと言っている企業はすでに消滅していて、もうそういったことを言っているのはあまり耳にしない。5Gに関して言葉を発していることすら聞いたことがない。
海外ではそういった個別の話から入るのではなく、非常に大きなフレームから話を始める習慣があるように思う。」と内田氏は言っています。

「Technology」「Systems」「People」「Planet」のイメージ

この図は内田氏いわく、星の数ほど出回っている図とのことですが、すいません筆者が不勉強で初めて見る図です。
「Technology」はオートメーション、AI、データの力、テレワーク、「Systems」は地方自治と中央政府のありかた、グローバル企業の力、制度上での健康関連、「People」は不平等・貧困の問題、民族間の摩擦、メンタルヘルス、人と人・人と社会の距離感、ソーシャルディスタンス、「Planet」は気候変動、環境問題、資源の枯渇、人口問題。
海外ではこれらのことを大きなフレームとして捉え、確実に変わるもの、不確実なもの、自分たちへのインパクトの大きさや対処できるかできないかで分けて細分化していき、準備を始めているそうです。

これらの変化は以前からあったもの、コロナで顕著になったもの、いろいろありますが、マーケティング・リサーチ業界でも、もう少し枠組みを大きく捉えようとする動きがありました。周辺産業をいれると、枠組みが倍以上になるのでは、という話が国内外を問わずあり、ESOMARがそれを可視化したとのことです。
その中で挙げられていた「インサイト産業」、彼らの言葉でいうとData、Research、and Insights Communityだったり、Data、Research、Insights and Analytics Professionというような呼び方をしているそうです。このくくりだと、市場規模が倍になり、世界で10兆円市場になるとのこと。当然競合も増えますが、かなり大きな額となります。

「TOP20社」のイメージ

この枠組での上位20社で、リサーチ会社は「Nielsen」「Kantar」「IPSOS」「GfK」「IRI」「Dynata」の6社となります。その他業界に特化したデータ収集コンサルサービスが「Gartner」など4社、テクノロジー系の企業が「Adobe Systems」「Salesforce」などプラットホームを主としたコンサルサービスを提供している会社が5社(いずれも年率30%の成長をしているとのこと)、戦略支援型経営コンサル企業「Mckinsey」「Accenture」などが5社、様々ありますが、最終的には最後の経営支援型コンサルにつながっていき、その他はそれを支える一部だ、というのが内田氏の意見です。
大きな経営戦略が描かれ、必要に応じて業界のデータを購入したり、カスタムリサーチを行ったり、データを利用するためにプラットホームを利用するというのがこの枠組なのではないか、とのことです。
この下部構造に陥ることを避けるために、これからのマーケティング・リサーチ業界は、戦略経営のマインドを持ってデータや情報を扱っていかなければならないし、そうでないとマーケティング・リサーチ業界は戦略支援型経営コンサルの下請けになってしまうのでは、と内田氏は危惧しているようです。

■SDGs・ESG指標について

これらはテレビなどで盛んに叫ばれており、若者の間でも関心が高いことを新卒の面接などで感じているそうです。メディアで取り上げられる回数も飛躍的に伸びてきていることもあり、認知度が大幅に上がっているのでしょう。
企業のメッセージも日本人の感覚からするとやや過剰になってきていて、若者の認識は「国がやってくれないことを企業が代弁している」と受け止めているようです。
ESG指標(Environment Society Governance)という、企業価値をランキングしているものがありますが、日本企業は総じて低いそうです。世界の投資会社はこの指標を参考に投資先を決めているようで、これはそのまま株価に直結しているとのことです。
株価がCEOの成績表と捉えられている海外では、この指標の重要性は高いのでしょう。

■これからのマーケティング・リサーチ業界について

これまでのマーケティング・リサーチは、「P案よりQ案のほうがいい」「改善策はこうしましょう」でした。しかし、今後は、市場のシェアにどれくらいの影響を及ぼすのか、それにより流通がどうなるのか、材料の手配は、生産キャパの問題は、ブランドを補強するためのメッセージなど、最終的には調査結果から経営に与えるインパクトについての助言・提案を行えるようにならなければなりません。これからのマーケティング・リサーチ業界は、経営視点で数字が読めて説明ができるというスキルが必要になってくるのでは、というのが内田氏の締めの言葉でした。そうでないと前述のように、今後マーケティング・リサーチ業界は戦略支援型経営コンサル企業の下請けになる恐れが大いに有り得るのかもしれません。

2021.6.14掲載

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