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「クライアントの取り組みを聞く」開催報告
シリーズ第7弾:イオングループ様(11/14実施)
- イオングループにおけるデータの価値化
      ~ データ戦略と事例の紹介 -

リサーチ・イノベーション委員会
一ノ瀬 裕幸

 

「クライアントの取り組みを聞く」第7弾は、イオン(株)のCDO(チーフデータオフィサー)データイノベーションセンター長の中山雄大氏をお招きし、対面式で実施しました。
※)今回はイオン様の内部データや事例をご紹介するため、特別に「対面(のみ)、Zoom配信・資料配布なし」とさせていただきました。共有可能な情報が限られることにつき、あらかじめご了承願います。

2023年11月14日(火)16:00~17:30 JMRA研修室にて対面式で実施
(話し手)中山 雄大 氏 イオン株式会社 チーフデータオフィサー 
(司会・聞き手)石原 聖子 氏 (JMRA賛助個人会員、リサーチ・イノベーション委員)


中山氏はイオングループの全国2万店舗、年間14億件の購買データを活用し、消費者の「買い物体験価値」向上とグループ内DXに取り組んでおられます。今回はそれらの中から ① ID-POSの活用、② チラシの最適化、③ 店長配属の最適化、④ イオン景気指標の開発 の4点を取り上げ、解説していただきましたが、その他にも ⑤ イオングループ社員の健診データに基づく医療アドバイス、⑥ SNSデータの商品開発への活用 ⑦ 物流の最適化 など、活動範囲は多岐にわたっています。
以下に、ざっくりとですが4つのテーマの概要をご紹介します。

① ID-POSの活用
商品分類AIにより、レシート情報(=お客様の購買行動)から棚割の最適化等を目指しています。それ自体は従来のバスケット分析と同様とも言えますが、何せレコード数が膨大なため、精度がケタ違いに向上しています。ネットスーパーとの親和性が高いことはもとより、実店舗でも様々な実験を行っているそうです。

② チラシの最適化
当初は「チラシはコストに見合う価値を出していないのでは?」という仮説から入ったそうなのですが、併売効果やカニバリの度合い、集客効果などを総合的に分析した結果、「チラシは価値があり、ROIも高い」との結論になったそうです。そこで最適化シミュレーションツールを開発し、現場に使ってもらってフィードバックを受けているとのことでした。

③ 店長配属の最適化
これはあまり詳細をご紹介できないのですが、店長の適材適所を実現するため、店舗特性や店長の特性、人事評価データ等をインプットした独自開発のAIを活用し、すでに配置転換の実験が始まっているとのことでした。

④ イオン景気指標の開発
こちらは内閣府の「景気ウォッチャー」に対抗し、より早く、より正確な景気動向指標を開発して、あわよくば外販までしたいという野心的な取り組みです。インプットデータは全国2万人のイオングループ店長に対する毎月の景況アンケート(OA)です。ここでも生成AIが活躍しています。

―――

質疑応答も大いに盛り上がり、たいへん貴重な機会となりました。イオングループ様ほどのデータ規模になると、実に多様かつ重層的な分析が可能になるのだということを、まざまざと見せつけられた思いです。

基本的にはデータ分析人材を自社で抱えて教育し、データ加工の内製化によってスピード・品質の向上、コスト低減を目指しておられるので、調査会社にとっては「仕事がなくなる」脅威でもあるのですが、中山氏ご自身は調査会社にさらなる提案や協力を求めておられ、私たちがどう食らいついていけるのか、が問われているのだと思います。
(本音を言えば、ここまでやれるクライアントさんはめったにないので、油断は禁物ですが私たちの仕事の場がなくなることはないと思います。ただし、AIや先進事例を貪欲に勉強していくことが、今までよりもさらに重要になっていると感じました)。

※)本シリーズは全7回の第1シーズンを無事完了しました。
リサーチ・イノベーション委員会では、引き続きクライアントの声やご要望をお聞きし、調査会社が果たすべき役割や機能の向上に向けた取り組みを企画していきたいと考えています。
ぜひ、メルマガ読者の皆さまからのご意見・ご要望をお聞かせください。

以上

2023.12.19掲載