AI・イノベーションセミナー第5回
AI技術を活用したマーケティングリサーチの効率化と可能性
リサーチ・イノベーション委員会
2024年9月27日の「AI・イノベーションセミナー第5回」では、楽天インサイト(株)の小川広大氏にご登壇いただきました。
楽天インサイトでは、専任のAIソリューションチームを立ち上げ、マーケティングリサーチにおけるAI活用の可能性を探索する中で4つの領域に着目し、新商品・サービス開発に取り組んでおられます。今回はそれらの中から「楽楽プロファイル(仮想プロファイルデータの生成)」と「AI画像解析(フォトサーベイを代替)」を紹介していただきました。過去データの蓄積と、楽天グループのサービス素材を有効に活用した取り組みであり、今後の展開が期待されます。
楽天グループではOpenAI社と提携し、25,000名の従業員がAIをセキュアに活用できる環境を構築し、実際に7,000名が毎日利用しているそうです。そのような中で小川氏のチームでは、①AIプロダクトの開発(お客様への価値提供、内部プロセスの効率化)、②各部門でのAI活用サポート(部門のワークフロー内でのAI活用支援、ガバナンス面の整理とルール作り)、③教育とトレーニング、④業界動向や技術研究 に取り組んでいます。
マーケティングリサーチにおけるAI活用の可能性については、「個人的妄想を含む」とのお断りつきながら、次の3点について現状と今後の予測が語られました。
- 1)これまでは手間や時間の制約から避けられがちだったリサーチ手法の復活と進化
- 大量のデータ処理、同時並行でのインタビュー、過去の調査結果の検索・収集など
- 2)リサーチプロジェクトのあり方の変化
- 調査企画・分析の効率化、質の向上(AI活用で空いた時間を品質向上に充てる)
- 3)人間に調査しなくても良くなる(?)
- 堅固な実態把握と、クイックな調査との二極化が進行(?)
開発事例として紹介された「楽楽プロファイル」(直近の9月リリース)は、実施したアンケート調査結果と過去に蓄積された「大規模価値観データ」とを照合し、ターゲット顧客層の生活意識や情報感度といったプロファイルを生成するもので、顧客は無料で利用できるそうです。工数削減や、アウトプットのスピードアップ効果が期待されています。
もう1つ紹介された「AI画像解析」は、大量のフォトサーベイを効率化するものです。こちらは楽天グループの「超ミニバイト」会員(約200万人)に、課題条件に当てはまる写真を撮影してもらい、楽天AIと独自開発システムを用いて画像分類と内容の文字化を行うものです。事例として報告された「5月5日(こどもの日)の夕食」解析では、料理の画像をかなり的確に読み取り、詳細な解説文を生成していたことが注目されました。
質疑応答では、「リサーチャーが現在バリューを発揮しているインサイトの発掘そのものについても、2~3年でAIが代替できるようになる可能性はどうか?」、「AIは、人間が今まで知的行為だと思っていたことを見直させる効果があり、そこに人間の方が知識を見出しているような側面があるのでは?」、「画像解析について誤った情報を読み取る可能性は?」など、活発な意見が交わされました。
最後の「調査課題に紐づけて、インサイトにつながる少数の尖った意見を拾ってくることが生成AIに可能となるのか、今後も注視していきたい」との意見が全体的な感想を表していたと思われます。今後の取り組みの進展が期待されるセミナーでした。
以上