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トピックスセミナー(2022.7.15)レポート
「リサーチャーなら読むべき本 2022」 第2回 『ストリートファッション 1980-2020』
講師 株式会社パルコ 「ACROSS」編集長 高野 公三子氏

広報セミナー委員会 中村 亜砂子


JMRA広報セミナー委員会が企画、運営するセミナーの開催レポートです。
『リサーチャーが読むべき本 2022 ― 著者が語るセミナー』と銘打った、業界で今、注目されている本の著者ご本人に登壇いただく全四回のシリーズセミナー。
第二回(7月15日(金)開催)にご登壇いただいたのは、『ストリートファッション 1980-2020 定点観測40年の記録』の編著者で、株式会社パルコ 「ACROSS」編集長 高野 公三子氏です。
東京の若者とファッションを40年間にわたり写真とデータで記録し続けてきた「定点観測」。長期間にわたる観測データに対する考え方とその価値、実際の実践方法について、高野氏から詳細にお話しいただき、我々リサーチャーの普段のリサーチ現場で活用できる考え方や方法論など、たくさんのヒントが得られた会でした。
当日は230余名の方々にご視聴いただき、講演後には質問も多く寄せられ、「定点観測」というアプローチに対するリサーチャーの関心の高さがうかがわれました。

高野氏は、「街はメディアである。・・・街をつくる、育む構成要素として、大切なのは、地主や権力者でなく、そこに集まる「ひと」。「ひと」が媒体するから<メディア>になる。」との考え方をベースに、「定点観測」とは“Street Fashion Marketing”と称している。

「定点観測」の学術的な背景として、今和次郎の「考現学」、「カルチュラルスタディーズ」、「フィールドワーク」、「エスノグラフィー」を挙げ、「定点観測」の調査対象を、M・ロジャースの「イノベーション曲線」における「Innovators」と「Early Adopters」と定義するなど、「定点観測」は確固たる方法論に基づいている。
その「定点観測」の手順は、下記のように綿密に練られ、関わるスタッフそれぞれの発見・気づき・振り返りを起点に、仮説を見出し、記録しインタビューし、分析・考察を行う。まさに、リサーチャーが行うことそのものである。

  1. プレサーベイとブレスト(話し合い): プレサーベイ結果から、実査する観察対象を発見し、その定義を明確化。そこから仮説を見出し、スタッフ用の「解説シート」を作成
  2. 実査(当日): 「解説シート」をスタッフで共有しテーマを理解。現地入りし、観察+撮影し、仮説を検証・発見。「着用者/通行人」を測定し、流行・トレンドの浸透率を数値化。当該アイテム着用者に声をかけてデプスインタビューも実施
  3. 分析/情報・気づきのダウンロード: 「インタビューシート」を整理し、「考察シート」に記入し、振り返りとその共有を行う
  4. 考察: 写真やインタビュー情報から、ファッションやインサイトを考察し、記録や情報を整理
  5. メディア「ACROSS」に掲載

また、「定点観測」からみえてくるもの、わかるものとして、詳細は割愛するが、ファッショントレンド、インサイト、さらには少し先の未来など、こちらも、まさにマーケティング・リサーチそのものである。

セミナーではさらに、具体的な「定点観測」データ、最近の活用事例まで、多岐にわたる内容をご紹介いただいた。

「考現学」をルーツとし、「イマ(時間)」と「ココ(空間)」を記録し続ける「定点観測」。
「変化する時代・社会に対して、一定の視点を提示すことの意味を再認識できた。」と語り、「そして、2030年に向けて、『ACROSS』編集室のスタッフは、今月も路上に向かう。」で、著書は締めくくられている。
リサーチやマーケティングの視点として参考になるだけでなく、40年にわたる“生の”ファッションの情報としても非常に興味深い、読み応えのある本著を、是非手に取っていただきたい。

シリーズ第三弾、8月4日(木)開催の『マーケティングは進化する』水野 誠氏も是非ご視聴ください。

2022.7.29掲載