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しりょう

JMRA・広報セミナー委員会
多様なるマーケティング・リサーチの新潮流に触れる著者が語るシリーズ2023
 第4回2023年9月21日 開催レポート

広報セミナー委員会 斎藤啓太(日本インフォメーション株式会社)


 第4回は、株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO、東京大学大学院情報学環 特任助教であられる安斎勇樹氏にご登壇いただき、開催いたしました。

 安斎氏は、ご自身の代表的著書である「問いのデザイン: 創造的対話のファシリテーション」「問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術」で、課題解決のためのチームの話し合いにおいて「良いアイデアが生まれない」「チームの一体感がない」と感じるとき、それはチームのメンバーやマネージャーの能力不足ではなく、チームで向き合っている「問い」がうまくデザインされていないことが原因である。そもそも何を解決すべきなのか、「本当に解くべき課題」を正しく設定できなければ、根本的に解決の方向性がずれてしまい、関係者に「創造的な対話」は生まれない、と提唱されています。

 講演では、企業の商品開発・組織変革・人材育成などの複雑な課題解決の現場において、問題の本質を見抜き、解くべき課題を正しく設定し、関係者を巻き込み、課題解決のプロセスをデザインするための思考法・スキル「問いのデザイン」について、お話いただきました。

 特に印象的だったのが、安斎氏の「思考の前提・価値観は目に見えない。発言と行動は目に見える。」という言葉です。その前提を踏まえて、目標に「動詞」を埋め込み言い換えることで文脈の発想を拡げる。いきなり答えを求めて問いをしてもうまくいかないので、問いかけの「主語」でファシリテートする。こういったリサーチャーが定性調査やワークショップのファシリテートですぐに活用できそうなポイントを多く解説いただきました。

 若手のリサーチャーでも明日の会議から試せるノウハウから、ベテランのリサーチャーが定性調査に付加価値を付与できるスキル習得まで、「問い」のスキルを体系的に学び直す機会に本著が役立つことと思います。

 参加者からの質問は、リサーチの現場で活かすにはどうしたらよいのか、スキルの習得の難易度はどの程度かなど、様々な角度からの質問があり、興味関心の高さが窺えました。

 私たちリサーチャーは、生活者のインサイトを探索し、それを価値ある情報に変換して企業のイノベーションに繋げてもらう為の架け橋になるべきです。アスキングデータの付加価値を高める為にも、「どんな問いを投げて、どんな情報を引き出すか」は、まさにリサーチャーの腕の見せ所です。その重要さについては誰もが認識しつつも、著者ほど体系的に掘り下げて考えられていなかったように思います。今回の講演は、改めてそれぞれのリサーチャーが「問い」に向き合う重要性を認識できる良い機会をいただけたように思います。

2023.9.26掲載