広報セミナー委員 矢部裕紀子
本年度セミナーの第2回は、ユニリーバにてLUXやDoveなどのブランドマーケティングを経験、ユニリーバ・グループのラフラ・ジャパン株式会社代表取締役、ユニリーバ・ジャパンのスキンケアカテゴリーの統括などを歴任され、現在、株式会社Brandismの代表取締役である木村元氏にご登壇いただき、オンラインにて開催いたしました。
講義では、著書「ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」ブランド・パワー」の中から、ブランドのトラッキング指標とするべきブランド・パワーについてとてもわかりやすい解説をいただきました。
まず初めに、売上のロジックツリー・構成要素には、複数の考え方がありますが、今の日本の多くの企業では、ブランディングが概念のままとなっており売上要素に入っていないことが、問題なのではないか、数値化がないと投資の意思決定が難しい時代なのではないか、という問題提起をされていました。
そこで、売上を説明するのに、ブランド・パワー(メンタル・アベイラビリティ)と製品の見つけやすさ・買いやすさ(フィジカル・アベイラビリティ)という二つの要素を数値化し、特に、マーケッターはこのブランド・パワーをどう上げていくのかに注力することが、短期から中長期の売り上げを上げていく源泉になると説かれました。
木村氏は、ブランド・パワーとは、ブランド想起とブランドイメージの2軸から成り立つとされています。一見、シンプルすぎる概念に感じられますが、事業会社が継続的にトラッキングし、そこから示唆を出すことを重要とすると、いかにシンプルに考えるかが重要であるということです。
また、ブランドの健康状態を測定するようなトラッキング調査を実施している事業会社は数多くありますが、実は、数値をどう使えばよいのかがわからない、どう施策に活かすのかがわからないという話をされる事業会社が多いとお話しされました。従って、調査会社は、数値のトラッキングをするだけではなく、事業会社が数値を元に、次はどのようなアクションをすれば売上につなげられるのかを念頭に置きながら支援をすることが重要であるとおっしゃいました。
講義の中では、ブランド・パワーのケーススタディについてもお話をいただきました。それは数値の読み方・解釈だけではなく、どのような状況になっているかがわかったので、次、どのようなアクションをすればよいのかというところまでわかりやすくお話しされました。
また、リサーチはコストではなく投資、戦略を作る入口。リサーチがなかったらどのように戦略を作るのか?とリサーチの重要性も語っていただきました。本書は、事業会社の人でも調査設計のイメージがしやすく親切な内容となっており、また、本講義の至るところで、リサーチの活用の重要性をお話しいただいているように感じました。
今後も、課題を見極め、示唆を出し、如何にマーケティング活動や事業活動、ひいては人々の暮らしの質の向上に貢献できるかを考えながら、マーケティング・リサーチに携わっていきたいと改めて気が引き締まりました。
2024.10.3掲載