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「マーケティング・リサーチ業界におけるリモートワークの実態」(その2)

ほんぶん

新型コロナ終息後のマーケティング・リサーチ業界の展望

 

JMRAインターネット調査品質委員会 委員長 村上 智章

今回も前回のメルマガでご紹介した「在宅勤務についてのチェックリストとアンケート」の内容をご報告させていただきます。今回はアンケート内の「新型コロナが終息した後に、調査業界はどのように変わるのか、リサーチャーの働き方はどのように変わると思いますか。」という質問に対して、40名の方から自由回答でご意見をお寄せいただきました。貴重なご意見をいただいた皆様にはこの場を借りて御礼申し上げます。その一部をご紹介しながら、これからのマーケティング・リサーチ業界における調査会社の方向性を考えるきっかけになっていただければと思います。
■寄せられた意見の分類
記入していただいた自由回答は大きく5つの内容に分類することができました。その中で最も多くの意見が寄せられたものが「オンライン定性へのシフト」でした。その次に多かったのが「働き方の変化」でした。

4月7日に緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出自粛が呼びかけられていましたので、どの調査会社も対面式のインタビュー調査が実施できない状況でした。このため、これまでオフラインで実施してきたインタビュー調査をオンラインで実施していかなければならないという考えが多かった人のではないかと思われます。また、前回のメルマガでもご紹介しましたが、回答者のほとんどの人がリモートワークをしていましたので、働き方の変化として‘リモートワークが主流になる’を挙げる人が多くいました。
■寄せられた自由回答意見の内容(一部抜粋)
①オンライン定性へのシフトに関する意見
  • 現在、web会議システムを用いた定性インタビューを行っているが、この方式がスタンダードになるかもしれない。[経営者・役員]
  • オンライン定性調査への切り替えが進んでいますが、終息後も引き続き、利用されるようになり、調査手法の幅が広がると思います。[事務系(法務・人事・経理・企画など)]
  • 私の会社は伝統的なリアル調査をメインとした調査会社ですがその弊社でもオンライン調査(定性、定量)しか実施出来ていない状態ですので、コロナ騒動が収束してもリサーチはオンライン化がメインとなるのではないかと思います。[リサーチャー(主に定量)]
  • リアルとオンラインのハイブリッドによる新たな手法が生まれる。[経営者・役員]
  • F2Fの実査をやる場合も、調査員も対象者もマスクをしたりすることがデフォルトになるかもしれません。人をあまり多く集めない、など。[事務系(法務・人事・経理・企画など)]
②働き方の変化に関する意見
  • リサーチャーの働き方は、在宅・出社勤務が半々でも対応できるなどあり方が変わるのではないかと思います。事務書類についてもペーパーレス化を進めるべきかと思います。[リサーチャー(主に定量)]
  • 遠方での打ち合わせや実査はオンラインで行う、というのももっと受容されてくると思います。[事務系(法務・人事・経理・企画など)]
  • 在宅化はフリーランスへの転換、副業を助長し、個々人の知識、スキルの拡張に繋がれば良いと思う。[経営者・役員]
  • 会社にこもって一日中パソコン打っている会社員リサーチャーは、在宅で心地よく感じる場合、フリーランスに転向するきっかけになるかもしれない。[経営者・役員]
③ビジネスインパクトに関する意見
  • 直ぐに対面式インタビューなどが蔓延前に戻せるのか不安である。[経営者・役員]
  • 日本全体の産業の不況がしばらく続くことにより、終息後も調査業界の売上減少が続くのでは、と懸念しています。[事務系(法務・人事・経理・企画など)]
  • リサーチのユーザー(クライアント)も変わる。人に移動を支えてきた業界は一定、縮小せざるを得ない。ユーザー業界が変わることによる、リサーチ業界へのニーズも変わる。[経営者・役員]
  • この2か月で対面調査が減少し、ビックデータが以前にもまして活用されています。個人としては、ビックデータだけでは分からないことは引き続きリサーチされるべきと考えますが、コストの面で引き合いがどれかであるか[事務系(法務・人事・経理・企画など)]
  • 訪問面接調査が消滅するかもしれない。[フィールドワーク]
④DX(デジタルトランスフォーメーション)・市場環境への適応に関する意見
  • 新型コロナは収束しないだろうし、今後も新型コロナと同等の災害は起きると思われる。そういった社会でも耐えられるビジネススキームを構築する必要あり。[リサーチャー(主に定性)]
  • レガシーな業界なので、オンライン化も含め、デジタル時代に順応するきっかけになったと思います。第3者/中立的立場でデータ提供しているだけでは一生下請けであるという事実に気付いて、一歩先(コンサル領域)に踏み込む会社が出てくると思います。[事務系(法務・人事・経理・企画など)]
  • システムインフラの整備が整っている会社が生き残るだろう。[経営者・役員]
⑤その他の意見
  • 基本的には以前と大きく変わらずに元に戻ると考えます。在宅勤務・オンライン会議・リモートでの業務などは、以前と比べてメリットが大きいので進展するかもしれません。しかし、心理的・慣習的・慣れの問題で「在宅」「リモート」をしていなかっただけのもの以外は元に戻るものが多いと考えます。[その他の職種]
  • 一時的には、定性リサーチのオンライン化がかなり進む。その反面、face to faceでなければ本来の定性の特質を活かしきれない、醍醐味が得られない、満足できないという揺り戻しが必ずありそう。オンラインを経験することで、定性調査の本質的なメリットがあぶり出され、業界が目覚める。技術に囚われて、本来の対面スキルが低下するリサーチャーやモデレーターが増えるので、アナログ対応できる人材が重宝されるようになるだろう。[経営者・役員]
  • 市場調査業務の役割と責任は変わらないので、終息後は特別な変化はないし、リサーチャーの働き方も変化はないと思われる。過去50年間を顧みてもオフラインにオンラインという選択肢が加わったこと、コンピュータ業務が増えたこと以外、意味のある変化はなかったので、コロナ禍ごときで変わるはずがない。[経営者・役員]
■調査実施概要
 調査実施期間:2020年4月14日~4月30日
 調査方法:インターネット調査
 回答者数:84名

厳しい意見も多いですが、それぞれが示唆に富むものと思います。いずれにせよ「すべてが以前と同じまま」とはならないと考えますが、いかがでしょう。それぞれの職場において、クライアントとの会話の中で、これらのご意見が、これからのマーケティング・リサーチを考えるきっかけになっていただければ幸いです。

2020.6.12掲載