本文へスキップします。

フリーワード検索 検索

【全】ヘッタリンク
【全・SP】バーガーリンク
タイトル

消費者庁が不当な「No.1」表示を次々に行政処分
‐ 利用有無を問わないイメージ「No.1」へ措置命令続発!

広告表示問題専門委員会 委員長 一ノ瀬裕幸


画像

本文
1.「いわゆるNo.1調査」問題の現在地

2023年の夏以降、特に2024年に入ってから、景品表示法に基づく消費者庁の措置命令(行政処分)の中に、客観的な根拠のない「No.1」表示を摘発するものが次々に登場するようになっています。3月21日には、消費者庁として「No.1」表示に関する実態調査を実施することが発表されました(新井ゆたか消費者庁長官記者会見)。JMRAにも情報共有をいただき、協力を要請されています。
すでに、問題を指摘された(JMRA非会員の)調査会社の中には、「いわゆるNo.1調査」事業からの撤退を表明するところも出てきました。2022年1月に発したJMRAの抗議状から始まった一連の取り組みが、一定の功を奏してきたものと思われますが、まだ非公正な「No.1」が一掃されたわけではありません。この問題の現在地と、今後の取り組みについて整理してみました。
なお、措置命令の具体的な事例及び詳細については、消費者庁HPの「景品表示法関連報道発表資料」を参照ください。以下の具体例は、いずれも同庁の発表資料から引用しています。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/release/2023/index.html

(1) 判例確定「利用有無を問わないイメージ“No.1”」は不当表示
  • 23年 6月14日: ペットサプリ「7冠達成」
    「ウェブサイトの(利用有無を確認しないアンケートによる)イメージ調査」結果を合理的根拠とは認めず(以下同様)
  • 23年 8月 1日: オンライン家庭教師「利用者満足度No.1」ほか
  • 24年 2月27日: 太陽光発電システム機器「3部門No.1」
  • 24年 3月 1日: 地球の歩き方「イモトのWiFi 満足度3項目No.1」
  • 24年 3月 1日: 注文住宅5社「3部門No.1」
  • 24年 3月 5日: 家庭用蓄電池の販売・施工「3冠達成」
  • 24年 3月 7日: 蓄電池機器の販売・施工「くちコミ・満足度4冠」
  • 24年 3月15日: 健康食品の通信販売「品質・効能10冠達成」
    「No.1調査」関係では初の“業務停止命令”に
      注)本件は景品表示法ではなく、特定商取引法違反(誇大広告)

なお、各商品やサービスの「利用有無を聞いていない」ことのほか、「比較対象を恣意的に選んでいる(強力な競合社を除外するなど)」ことも断罪の対象となっています。個別の事例ごとに微妙な表現の差異はあるものの、「利用有無を問わないイメージ調査による“No.1”」が不当表示とされたことは判例として確定したと言ってよく、今後の行政指導や各団体の自主規制における指針になるでしょう。

(2)不当表示に関与した調査会社も(実質的に)社名公表

もう1つ重要なこととして、景品表示法が規制する事業者は(本来)広告主に限定されているのですが、措置命令の公開文書(「別紙」の添付資料)を見れば、どの調査会社が実施した調査結果であるかが、多くのケースで明らかにされるようになったことです。これは、不当表示に加担している調査会社の手足を縛る効果につながるものと思います。実際に、上記措置命令に頻繁に社名が登場した調査会社は、「No.1調査」事業からの撤退を公式にHPで表明するに至りました。

2.不当表示広告に関わる「3つの誤解」

さて、この「No.1調査」問題がここまで大きくなった背景には、いくつかの要因があると考えられます。

i) 過去に公正取引委員会が示したルールはあったものの、周知が十分ではなかった。また、ネット広告の伸長に伴い、判断が微妙な問題の「抜け道」を突く事業者が現れた。 
ii) 大手広告主の間では一定の規範が守られてきたが、中小の広告主の中にはコンプライアンスが不徹底なところがあり、確信犯的な「やったもの勝ち」が横行してしまった。
iii) まっとうなランキング調査や比較広告調査は取り扱いが難しく、採算も微妙な側面が(少なくとも従前は)あり、JMRA会員社があまり積極的には受注してこなかった。

 

JMRAでは特に iii)に着目し、まっとうなランキング調査や比較広告調査を会員社から提供していただくことを期待しています。そのためにも、会員社ではないメルマガ読者の皆さまを含めて、以下の「3つの誤解」を解いておきたいと思います。

(1) そもそも「No.1調査」などというものはない
   ランキング調査や比較広告調査の結果として、No.1なり「第〇位」があるにすぎません。「No.1調査やりませんか?」といった営業トークが横行することが、まず論外です。
(2) JMRAはまっとうな調査結果に基づくNo.1を推奨している
    ランキング調査等の結果、クライアント(広告主)の商品やサービスがNo.1に輝くことは、マーケティング活動の成果であり、勲章とも言えるものです。正当な評価に基づくNo.1は、大いに宣伝・広告されてしかるべきです。
(3) JMRAは「イメージ調査」そのものを否定していない
         企業イメージやブランドイメージを正しく測定し、継続的にその向上を図っていくことは重要なマーケティング課題であり、市場調査にとっても必要かつ重要な領域です。それを恣意的に悪用しようとする一部の不心得者が悪いのであって、私たちは健全なイメージ調査を伸ばしていくべきです。

また、まっとうなランキング調査や比較広告調査には、相応の時間と費用がかかります。クライアント(広告主)の皆さまにも、ぜひその点はご理解をいただきたいと思います。

3.今後の課題: 健全な広告表示の発展のためには?

現行の景品表示法では、不当表示か否かを決めるのは「表示された内容と、実際とが不一致である」かどうかとされています。つまり、広告に記載された表示では「あたかも〇〇であるかのように受け止められる」のに対して、実際には「違っていた」または「合理的根拠に欠ける虚偽の表示であった」場合に罰則が適用されています。
ただし、現実にはとても微妙なケースがあり、一筋縄ではいかないようです。1つ1つ、実態に即した議論を尽くし、提言や判例を積み重ねていくしかありません。
JMRAでも、たびたび消費者庁やJARO(日本広告審査機構)からの相談やヒアリングを受けていますが、次のような判断の難しい課題が残されています(もちろん、これら以外にもまだあります)。今後、クライアント(広告主)の皆さまを含めて議論してまいりたいと思います。

※)それは事実かもしれないが、「市場の真実と言えるか?」問題
(1)  瞬間風速問題
      「2024年〇月〇日調べ」→ たった1日だけでの「No.1」とは?
商品カテゴリーによると思われますが(以下同様)、せめて1カ月とか1年間であるべきでは?
(2) タイムラグ問題
  2020年〇月調べ」→ コロナ最盛期の調査と今とでは市場環境が大きく異なる?
1年以内などにすべきでは? また、何年以内なら有効と考えられるか?
(3) エリア限定問題
  「〇〇商店街でシェアNo.1」、「〇〇ECサイトでNo.1」→ ???
少なくとも行政区域(都道府県・市区町村)単位の広がりは必要では?

JMRA広告表示問題専門委員会では、2024年度中に『ランキング広告表示に使用する調査データ開示ガイドライン』及び『比較広告のための調査実施の手引き』の続編ないし改定版の作成を検討しています。皆さまのご意見、ご協力をよろしくお願いいたします。

JMRA広告表示問題専門委員会では、今後とも消費者庁やJAROの活動に 積極的に協力するとともに、2024年度中に『ランキング広告表示に使用 する調査データ開示ガイドライン』及び『比較広告のための調査実施の 手引き』の続編ないし改定版の作成を検討していきます。皆さまのご意見、 ご協力をよろしくお願いいたします。

掲載日:2024年3月26日