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コロナ後の復調傾向が鈍化、3月度集中緩和の影響も?
‐経済産業省セーフティネット調査にみる業況の推移

ESOMAR GMR 日本アンバサダー 一ノ瀬 裕幸


本文
「2024年1~3月期は例年になく厳しかった!」
-景況の本格悪化か、3月集中緩和の影響か?
1.「経済産業省セーフティネット調査」「セーフティネット保証5号」とは?

コロナ禍を機に、JMRA正会員社の皆さまには「経済産業省セーフティネット調査」へのご協力をお願いしてきました。同調査は、コロナ禍など経営環境の激変によって苦境に陥った業界の中小企業を金融面で支援するための施策である、「セーフティネット保証5号(略称:SN5号)」への指定可否を判断する資料として活用されています。当業界も指定業種への申請(または再申請の迅速化)を行なうため、四半期ごとに正会員各社の業況等を調査し、業界推計値を提出しています。
「3923:市場・世論・社会調査」業界はコロナ禍真っ只中の2020年に業種指定され、その後の業況回復に伴っていったん指定を外れましたが、再申請の機会に備え、継続して調査に協力しています。会員社の皆さまのご協力により、政策的な中小企業支援制度の活用に道が開けていることはご理解いただけるものと思います。なお、「SN5号」の詳細や、具体的な手続きの方法については中小企業庁のホームページを参照ください。
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_5gou.html

2.2024年1~3月期の業況悪化の背景は?

5月29日のJMRA年次総会で、2023年度の従来型マーケティング・リサーチ市場は前年比99.8%と速報され、コロナ後の回復基調に水を差される結果となりました。セーフティネット調査からは資本金5000万円以下の中小規模層の苦戦がより明らかになっています。
なお、セーフティネット調査は回収サンプル数が毎回異なるため、各年の経営業務実態調査を参考に拡大推計を行なっています。第49回経営業務実態調査の詳細については来月号でご報告予定です。

注)経済産業省への報告に用いた資料はすべて元号表記となっています

 

緊急事態宣言の解除(2023年5月)以前から、市場調査業界では全体として着実な回復基調が続いていましたが、図表1によると2024年の1~3月期は久々の前年同期比割れとなりました。最も売上規模が大きくなる3月のマイナスが響いています。実は、変調は2023年12月から始まっていたとみられ、資本金5000万円以下の中小規模層に限ってみると、12月から前年割れが続いていることがわかります。特に中小規模層では、1~3月の四半期合計が92.0%と5%以上のマイナスとなっています。
なお、資本金5000万円超の大手・中堅規模層でも3月はほぼ横ばいにとどまっていますので、業界全体として振るわなかったことは確実と思われます。
注)政府の予算枠もあり、業種指定の判断は総合的見地から行われ、ある調査回の結果だけで判定されるものではありません。

一方で、注意が必要な点として、3月の売上集中度が減少していることを考慮しておくべきかも知れません。例年、年度末の3月に最も大きな売上が立ち、12月がそれに次ぐ傾向がありました。基本的な構造は変わっていないのですが、国際化の影響等により、1~12月を決算年度とするクライアントが増えたことなどから、年々10~12月期へのシフト(分散化)が進み、それに伴って3月度のウエイトが減少しています(図表2・図表3)。2024年3月の落ち込みには、こうした影響も加味されている可能性があります。
会員社ごとの業務や主要なクライアントの特性によって季節的な売上集中度は異なると思われますが、図表2・3のような傾向は今までにも「肌感覚」としては感じられていたことと思います。推計値とはいえ、具体的な数字が示されたのは初めてのことではないかと思われます。何らかの参考指標になれば幸いです。

3.国際的な環境変化の影響(参考値)

最後に、付帯項目としてお聞きしている「昨今の環境変化が業況に影響を及ぼしているかどうか?」について、図表4をご覧ください。回答社による感覚的なお答えになるため、統計的精度をうんぬんするものではありませんが、参考にしていただければと思います。設問の意図としては、ロシア・ウクライナや中東情勢の悪化、急激な為替の変動(=極端な円安)、物価高の影響など、今後も予断を許さない環境変化が続くとみられていることから、業況への影響度合いを推察することを目的としています。
直近3回(≒9ヵ月間)の結果をみると、「あまり影響は出ていない」という回答が3~4割あるものの、やはり「営業面への悪影響」や、「コストアップによる悪影響」がジワジワと効いている様子がうかがえます。
それらに対して、「(円安に伴う)海外からの引合い増加」はごくわずかにとどまりました。インバウンド旅行客の増加は大きく報道されている通りですが、当業界へは(まだ?)恩恵が及んでいないようです。

 

JMRAでは、今後とも経済産業省をはじめとする政府の施策に協力し、各種振興策のPRと普及に努めるとともに、当業界に関わる諸データの収集・分析に努めてまいります。

掲載日:2024年6月18日