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さぶたいとる

Global Market Research 2021への日本市場レポート(日本語訳)

ないよう

JMRA・JIS認証支援センター長
ESOMAR GMR日本アンバサダー
一ノ瀬 裕幸


他のアジア太平洋諸国と同様、日本ではCOVID-19の感染と死亡の症例数は欧米諸国よりはるかに少ない。しかし、日本でも経済・社会活動は大混乱をきたした。政府は緊急事態を数回宣言している。特に、対面調査の需要は2020年第2四半期 (4~6月) にはほとんど消滅し、フォーカスグループや個別インタビューはオンライン調査に急速に置き換えられ、その影響は第3四半期 (7~9月) まで続いた。JMRAでは、8月に実施した正会員社を対象とした特別調査結果に基づき、日本市場全体の売上高は約20%減少 (80%) するであろうと予測していた。

しかしながら、混乱と手法の移行が一段落した後、市場調査需要は堅調に推移し、10月以降は急速に回復して、2020年度 (2021年3月期) はインフレ調整前の前年比-4% (96%) の水準に至った。2021年度の成長率は+15%程度と楽観的であり、2019年度の水準以上に戻ると予想されている。
またJMRAでは、パンデミックの初期段階からCOVID-19に対する会員企業への感染防止対策の徹底を呼びかけた。その結果、これまでのところ市場調査活動を通じたクラスターの発生は報告されていない。

ここで、新しい「インサイト産業」カテゴリーの推計について補足しておかなければならない。上記の数値は、昨年と同様に「確立された調査領域」に限定したものになる。JMRAでは、ESOMARから提起されたいくつかの新しいカテゴリーについて調査しようとしているが、まだ推定途上にある。今回は、「業界特化型調査&レポート(3.0%)」と「デジタルデータ分析(3.1%)」のみを確立された調査領域の一部から分離している。従って、これらの数値は非常に限定されたものであり、米国や英国などと比較することはできない。「インサイト産業」全体の推計には程遠く、2021年度は他の新たなカテゴリーを探索することが課題となる。
おそらく私たちの業界は、今以上に「テクノロジー主導調査」を取り入れる能力を強化する必要がある。この市場を正しく推定することで、「インサイト産業」及び「テクノロジー主導調査」への転換を促進する契機になると考えている。

今、日本では二極化がたいへん大きな問題になっている。大手企業は着実に成長しているが、中堅・中小企業は年々売上高を減少させている。COVID-19危機がその流れを加速させた。2020年度の売上高を企業規模別にみると、大手企業の成長率は横ばい(100%前後) で推移しているのに対し、中小企業では前年同期比-20% (80%) と低下している。残念ながら、今回の危機で廃業を決めた中小企業もみられた。私たちの業界は、全体として弱体化していると言わざるを得ない。
もちろん、先に述べたような明るい予測は私たちの希望である。しかしその一方で、構造改革が遅れるのではないかという懸念もある。私たちは従来のプロジェクトを実施することと、新しいビジネス分野を開拓することのバランスを取るべきである。

クライアントのニーズも変化している。対面調査が完全に元のトレンドに戻ることは難しいであろう。特にFGIでは、ケースバイケースでオンラインと対面オペレーションの両方に対応することが望まれる。また、パンデミック期間中はオンラインに限られていた海外調査の回復も課題である。単純な調査だけでは需要が減退し、意思決定のための提言とコンサルティングがこれまで以上に必要になると予測されている。

この危機を逆に好機とすべく、JMRAでは関係するパートナー企業との連携を深め、「インサイト産業」への転換を図りながら活動を強化していくことを意図している。パートナーシップとコラボレーションがキーワードになるだろう。そのため、市場の再定義が特に重要であると思われる。

 以上

2021.7.13掲載