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さぶたいとる

国際潮流シリーズ第2弾:ESOMAR大会参加報告
●国際的に安定成長に回帰-AIを「どう使うか」が話題に

ESOMAR GMR 日本アンバサダー 一ノ瀬裕幸


本文

9月に開催されたESOMAR Congress 2023は、オランダのアムステルダムに過去最高の1,200名超のリアル参加者を集め、インサイト産業の本格的な復調を体感する場となりました。ESOMAR会長のRay Poynter氏も(日本語で)「自己ベストです!」と喜んでいました。

1.生成系AIへの対応が最優先課題に

コンテンツ的には、「AI一色」とまでは言えませんでしたが、主な発表のほとんどに生成系AIの話題が登場し、国際的な関心の高さを示していました。論文応募の段階では、ChatGPTはほとんど話題になっていなかったはずなので、多くの登壇者が発表に間に合わせるように追加準備したものと思われます。また、メタバースやDX関連の発表も、以前と同様に散見されました。
複数の知人に聞いたところ、欧州では皆がChatGPTをはじめとする生成系AIをある程度使うようになり、効果も限界もわかってきたことから、熱狂の段階はすでに過ぎ去り、これから「どう使う(べき)か?」が重要との認識が一般化しているようです。ただし、資金力やノウハウの蓄積度からみて、今からMicrosoftやGoogleのような大資本に対抗するすべはなく、「これから登場するであろう有用なツールをどうカスタマイズするか?」が現実的な路線であるとの意見が聞かれました。

2.Fraud(詐欺回答)対策を含む品質向上対応組織の発足

また、データの品質確保がますます重要となり、Fraud(詐欺回答)との戦いが焦眉の課題として提起されました。日本ではアクセスパネル(モニター組織)登録時の本人確認がしっかりしているためか、それほど重要な問題として(表には)出てきていませんが、欧米諸国では近年の技術進歩(ボット等)とともにますます巧妙化し、「謝礼詐取目当ての虚偽回答」が深刻化しているとのことです。
今大会を機に、GDQ:Global Data Quality組織(英国、米国、豪州の協会+2団体で構成)の発足が発表され、Fraud対策を含むデータ品質向上への取り組みを開始し、最初のガイダンスを公表したことが報告されました。
https://esomar.org/newsroom/esomar-releases-new-material-for-the-global-data-quality-initiative


3.GMR 2023など3本の統計/調査資料を公表

開幕と同時に発表されたGlobal Market Report 2023では、テクノロジー主導調査(MarTech)の伸長を軸に、前年比(実質)3.5%の成長を維持したことが示されました。

世界のインサイト産業市場規模(2022年)は 1,292億ドル(前年比実質3.5%増)

また、GMRレポートからデータ分析(MarTech)領域を取り出した「Global Data Analytics 2023」と、「Global Users and Buyers of Insights 2023(クライアント調査の第3回結果報告)」が合わせて公表されました。これらの統計/調査資料の詳細については次月以降に解説していきます。

GMR 2023のダウンロードはこちらから(ESOMAR会員は無料)

4.雑 感
  • オランダでは「紙やペットボトルをなくす」が徹底している?
    名刺もパンフレットもデジタル化が徹底し、紙の名刺が超少数派になっていることに驚きました。また、大会会場での飲料水はガラスのグラスで提供され、ペットボトルが一掃されていました。そのためか、会場のあちこちでガラスが割れる音が響き渡り、その都度清掃係員が飛び回っていました。理念はわかりますが、たいへんだなぁと・・・?
  • アムステルダムの物価は東京の約3倍?
    コロナ以前から欧州主要国の物価は「日本の2倍くらいか?」という印象がありましたが、今回は円安の影響も大きく、「ほぼ3倍」感がありました。懐が寂しく・・・。

以上

2023.10.17掲載