~FGIとセミナーのオンライン化と新しいツールの活用~
JMRAインターネット調査品質委員
リサーチ・コンサルタント
岸田 典子
コロナウイルスによりリサーチ業界も大きな打撃をうけています。非常事態宣言が解除された後もいつ次の波がくるかわからず、Afterコロナではなく、Withコロナ、ウイルスと共に生活する時代となると言われています。リサーチ事業の今後について苦慮されている方も多くいらっしゃいますし、働く人のメンタルヘルスも重要になってきます。このような難局にあっても心が折れることなく、状況に合わせて立ち直ることのできるしなやかな強さ(レジリエンス)を私たちは持ち続けたいと思います。このような不安で予測のつかない状況を乗り越える一つの方法は、パニックにならず、自分が今できることだけにエネルギーを集中することと言われます。今回の危機の渦中にも、これからの兆しと私たちが急いで準備しなければならないことが、いくつか見えています。生活者の対面、密室、人との接触への不安感はしばらく続くでしょうし、残業を避け、時短や在宅勤務などの多様な働き方も定着してゆくでしょう。
オンラインFGI
リサーチ手法の中でも対面で行われていた調査が激減しています。インターネット調査、HUTなどの対面を伴わない調査や、オンラインであってもIDIはこれまで通り可能でしょう。課題となるのは、FGIです。複数人を同時に対象とすることによって、会話が促進され、効率的に複数の人から話が聞けることから根強いニーズがあります。しかしFGIに関しては、対面で行ってきたことをそのままオンラインでやろうとしてもうまくいかないことが多いでしょう。場の雰囲気、アイコンタクト、ラポールなど、これまで対面のFGIで重要と思われていた部分をどのようにオンライン上で解決するかに課題を感じる定性リサーチャーも多くいます。オンラインの調査対象者に集中力を維持してもらうには工夫が必要そうです。オンラインでFGIを行うのにふさわしい人数や時間は、オフラインの時よりも少なくなるでしょう。対象者のITスキルは様々なので事前の説明や通信環境の準備が大変重要になりますし、閲覧するクライアントとのコミュニケーションにも工夫が必要になるでしょう。
一方で、オンラインで行うことによって、これまで会場に来られなかった幅広い人をリクルートできるようになります。リサーチャーの経験、知恵や工夫を集めオンラインならではの良い点や可能性を広めるとともに、オンラインFGIの業界標準化とベストプラクティスの共有が必要とされています。
新しいテクノロジーの活用
コロナウイルスがきっかけとなり、ZOOMをはじめとする新しいオンラインツールの利用が急速に広がってきました。単なる会議ツールとしてだけでなく、ZOOM飲み会などのカジュアルな利用もひろがっています。
セミナーや講義、ワークショップにおいてもZOOMは活発に利用され、ブレイクルーム(グループ分け)機能により、多人数の参加であっても参加者同士の対話を生む成功事例が数多くあります。Youtube®などでの動画配信、タブレットによるグラレコとの連携など、自由な発想でさまざまな企画が可能になっています。オンラインFGIへの活用可能性もありますが、JMRAの数多くのセミナー・コンテンツについてもオンライン化を図ることができます。調査業界のみなさまとともに、新しい時代に向けた準備に舵をきっていきたいと思います。