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たいとる

Withコロナ時代に向けたリサーチ業界の準備 第2回

ほんぶん

~オンラインFGIについてのオンライン・イベント~

JMRAインターネット調査品質委員
リサーチ・コンサルタント
岸田 典子

 4月23日(木)夜、リサーチャーの自主勉強会であるJMRXでは、緊急企画として【ONLINE定性2020】―オンラインでの定性調査、特にFGIについて考えようーと題してオンライン・イベントを開催しました。JMRXを主宰する牛堂雅文さんが全体のMC、オンラインFGIについてのプレゼンとディスカッションのファシリテーションを吉田朋子さん、Zoomのワークショップ・デザインを私が企画し、三人でZoomでディスカッションをしながら決めていきました。予定していた70名枠があっという間に埋まる盛況となり、終了後のアンケートも好評で、次回開催を希望する声が多く寄せられました。今回は、そこで得られたことをみなさまに共有したいと思います。
  新型コロナウイルスによる非常事態宣言により、定性調査、特に対面で行われてきたFGI(グルイン)をどうするかは喫緊の課題です。今回のオンライン・イベントを通じて、オンラインFGIは、どのようにしたらうまくいき、うまくいかないのか、広く参加者の経験をシェアし合って学ぶ機会を作りたい。またオンラインFGIを単にリアルの代替ではなく、オンラインならではのよさを明確にし、将来も新しい選択肢として使われるようになってほしいというのが企画意図です。
 参加者は、モデレータ、定性リサーチャーを中心に、定量リサーチャー、営業やシステム担当の方の参加もあり、オンラインFGIの進行、そのプラットフォーム、クライアントとのコミュニケーションなど幅広い関心をもった方が集まりました。

オンラインFGIについてのプレゼン(吉田朋子さん)より

 最初に、Qual Online : エッセンシャルガイド(Jennifer Dale & Susan Abbott著)という早い時期から盛んにオンライン定性調査が行われていた米国のオンライン定性のリーダー的存在の二人の著書をもとに「先達から学ぼう」と題し、吉田朋子さんのプレゼンから始まりました。Qual Online(オンライン定性)を考えるには以下の3つの軸があり、それぞれに適したプラットフォームがあります。またオンライン定性にも、オンライン掲示板、チャット・グルイン、オンラインFGI(Webcam Group)、オンラインIDI、オンライン・ダイアリー、ソーシャルリスニング、モバイルインタビュー、モバイルエスノグラフィー、インサイト・コミュニティ(MROC)など、さまざまな手法があります。リアルで行う調査と同じ発想で同じアウトプットを期待してもうまくいきません。私たちはリアルのFGIでやるのと同じ発想で同じことをオンラインでしようしているから、できないと言っているのではないでしょうか。もっと柔軟にオンラインに適した方法を考えて、オンラインならではの価値を提供していきませんか。そういう呼びかけでスタートしました。

自分たちでもZoomでオンラインFGI風にやってみた

 企画メンバー自身がまず「オンラインFGIの課題」をテーマにZoomでオンラインFGI風にやってみました。イベントの参加者に課題を意識していただけるよう、そのビデオから一部を紹介しました。その際、画面から参加者の反応がわかりやすいようリアクションを大きめにしてもらうことや挙手のサイン出しをしてもらうとよいという意見がでて、それを今回のイベントでのインストラクションにも生かしています。

体験談の共有

 続いて、当初のリアルFGIの予定が突然オンラインに切り替わってしまったモデレータの体験談の紹介。オンラインでFGIを行う際の適切な人数や時間、対象者の通信環境や機器の確認の重要性、対象者のエンゲージメントの低下、表情や間合いがくみ取れないもどかしさなどの課題とその対策案が共有されました。

グループ・ディスカッション

 今回は、Zoomで参加者を4~5名の16グループに分け、「1.オンライン定性の解決すべき課題と解決策」と「2.オンライン定性ならではの可能性」をテーマにグループ・ディスカッションをしてもらいました。企画メンバーは共同ホストとして、リアルのワークショップのようにグループ間を自由に移動することができます。各グループからディスカッション内容を発表してもらいました。その結果とアンケートの意見、吉田さんのプレゼンを参考に表にまとめたものがこちらです。(下表参照)

オンラインイベントについて

 オンラインでのイベントは、オンラインFGIと同様にテック・サポートと企画メンバーのチームワークが欠かせません。今回のJMRXイベントは、CCCマーケティングの淡田義樹さん、モデレータの新宅美樹さんと小野沢薫さん、テック・サポートとしてTeam Fの池田琴世さんにご協力をいただきました。改めて御礼申し上げます。
 イベント終了後はZOOM懇親会となり、30名近くの方が残って雑談となりました。そこでの会話も参考になることが多かったとの感想をいただいています。
新型コロナウイルスという危機によって、数多くの調査がキャンセルや延期となり、また初めてオンライン定性にチャレンジせざるを得ない状況になった方も多くいます。人々が自由に会うことができない環境下で、今回のオンライン・イベントは、同業の人たちが集まり語り合う貴重な機会となりました。
 今後も、オンラインFGIの実践を積んだモデレータやリサーチャーの方々からさらに新たな知見が共有されることを楽しみにしています。


オンライン定性の課題と解決策



オンライン定性ならではの良さ
掲載日

2020.5.19掲載