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No.1表示等についての景品表示法上の考え方

ほんぶん

 不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」とします)の第5条(不当な表示の禁止)は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次のいずれかに該当する表示を禁止しています。

  1. 優良誤認
    商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
  2. 有利誤認
    商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
  3. 指定表示
    上記に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
    ※具体的には、無果汁の清涼飲料水等についての表示や商品の原産国に関する不当な表示などの他、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(いわゆるステルスマーケティング表示)等が指定されています。

 No.1表示等については、その表示が合理的な根拠に基づかずに事実と異なることによって、実際のもの又は競争事業者のものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認される場合に、1.優良誤認表示に該当して景表法違反となります。

 そして、消費者庁の2024年9月26日「No.1表示に関する実態調査報告書」では、No.1表示等に際して「合理的な根拠」として認められるには、次の4点を満たすことが必要であることが示されました。

ア 比較対象となる商品・サービスが適切に選定されていること
イ 調査対象者が適切に選定されていること
ウ 調査が公平な方法で実施されていること
エ 表示内容と調査結果が適切に対応していること

 例えば「満足度No.1」等と表示しているが、主要な競合商品・サービスが選択肢から除外されたNo.1調査しか実施されていない場合は、「ア 比較対象となる商品・サービスが適切に選定されている」とはいえず、合理的根拠を欠くNo.1表示として景表法違反となります。
 また、「顧客満足度No.1」等と、実際に商品・サービスを利用したことがある者を対象に調査を行っているかのように示す表示をしているが、実際には単なるイメージ調査のみを行っているに過ぎない場合には、「イ 調査対象者が適切に選定されている」とはいえず、合理的根拠を欠くNo.1表示として景表法違反となります。なお、もし仮に「イメージ調査の結果、顧客満足度No.1」等と表示していても、「イメージ調査」では「『満足度』No.1」という表示に対応した適切な調査とは評価できないため、合理的根拠を欠くNo.1表示として景表法違反となります。また、「医師の○%が推奨」等と医師が専門的な知見に基づき「推奨」しているかのように示す表示をしているものの、実際には調査対象となった医師の専門分野(診療科など)と商品・サービスの評価に必要な専門的知見とが対応していない場合も、「イ 調査対象者が適切に選定されている」とはいえず、合理的根拠を欠くNo.1表示として景表法違反となることが「No.1表示に関する実態調査報告書」に明記されました。
 商品を選択させる場合に自社商品を選択肢の最上位に固定して誘導したり、恣意的なタイミングで調査を終了する等の恣意的な調査手法は、そもそも「不正行為」としてマーケティング・リサーチ綱領違反ですが、「ウ 調査が公平な方法で実施されている」ともいえず、合理的根拠を欠くNo.1表示として景表法違反となります。

 ご注意いただきたいのは、ここでいう事業者とは、一般消費者に対して商品又は役務を供給する事業者、すなわち「広告主」であり、調査会社にとっての「エンドクライアント」である点です。合理的根拠を欠いて景表法違反となる「No.1表示」が横行する理由の一つに、景表法違反として行政処分や刑事罰を科されるのはエンドクライアントであり、合理的な根拠を欠く調査結果を提供した調査会社は直接には何も罰せられないことがあると思われます。
 しかし、本来は、合理的根拠を持たない調査結果を提供すること自体、調査の専門家たる調査会社として恥ずべき行為です。JMRAには、「真っ当なランキング調査」の普及について、今後も消費者庁やJARO、広告業界の関連諸団体と協力しながら、より一層の広報・PRが期待されています。

掲載日

2024年11月19日

紹介

鈴木理晶(すずき まさあき) 先生
ターナー法律事務所所長弁護士。JMRA顧問弁護士。
早稲田大学政治経済学部経済学科卒。弁護士法人にて、訴訟業務の他に会社諸規程整備や個人情報保護体制の整備に従事した後、ターナー法律事務所を開設。得意分野は、会社法、個人情報保護法、著作権法。

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