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Withコロナ時代に向けたリサーチ業界の準備 第23回

さぶtがいとる

多様性・平等性・包括性DEI(Diversity, Equality & Inclusion)グローバル調査 結果報告(1)

本文

JMRAインターネット調査品質委員
リサーチ・コンサルタント
岸田 典子


JMRAが参画しているGRBN(Global Research Business Network)では、「多様性・平等性・包括性(DEI: Diversity, Equality & Inclusion)」に関する調査を2021年10月~11月に実施しました。
その調査結果を今月と来月の2回に分けて報告します。

多様性・平等性・包括性(DEI)は、そこで働く人々の心理的安全性の元になります。「心理的安全性」とは、心理学者エイミー・エドモンドソンの定義によると、「自分のアイデア、質問や懸念、ミスをしたことなどを率直に話しても、罰せられたり、恥をかかされたりすることはないと信じられること」です。心理的安全性があって初めて、人は自分の意見を本音で発言し、行動し、安心して自分自身でいられるのです。チームメンバーが能力を発揮し、イノベーションを起こす組織にするためには、心理的安全性は不可欠なものです。世界レベルのイノベーションや世界に伸びてゆく企業は、このような多様性を受け入れ、生かす社会や組織から多く生まれるようになりました。

これからの日本の社会は、ますます多様性のある社会へと変化します。さまざまな考え方、習慣、宗教、価値観、バックグラウンドをもつ人々が共に働くためには、その多様性を少数派も含め、受け入れて平等に接していく組織になることが必要です。
まずは、みなさんに多様性・平等性・包括性DEIの重要性を認識していただき、日本のMR業界の現状と特徴をグローバル比較で理解し、自分の所属する会社や組織を振り返って考えるきっかけになればと思います。


<調査結果>

  1. 職場環境:昇進や報酬の機会の公平性
    あなたの職場では、誰もが昇進の機会を得て、公平に報酬を得ていると思いますか?

    ■日本では、海外の各国と比べ、すべての項目にわたって「公平だと思わない」とする比率が低く、調査対象国中で最も差別を感じる比率が低い。
    (項目平均:日本のMR業界 15%, 各国のMR業界 30%)
    特に【民族・人種】、【出身国】、【宗教】に関する差別は、日本は、調査対象国の中で最も低い。
    【障がいの状態】、【性的指向・性の自認】についても、日本は、公平ではないとする比率が他国と比べ非常に低い。

    日本のMR業界では、職場における不平等の理由の上位3位は、【年齢】、【障がいの有無】、【性別】。
     年齢(32%)、障がい(27%)、性別(21%)

    日本の【年齢】、【性別】に関する不公平感のレベルは、ヨーロッパや北米と比べ、非常に低い。

    実際のところ日本は、他国と比べるとまだ「年功序列」が残っており、特に男女平等に関しては、ジェンダーギャップ指数が 153カ国中の120位という、世界の中でも低いスコアであることが知られている。
    それにも関わらず、不公平感が低いのは、差別が少ないからというよりも、差別だと感じ問題視する意識が低いからかもしれない。不公平だと感じる人が少ないことはよいことではあるが、皆さんはどのように思われるだろうか。

    【全項目平均】公平だと思わない(%)
  2. 職場環境:DEI(多様性・平等性・包括性)への態度
    あなたの会社は、ダイバーシティ、インクルージョン、平等に関して、どのように対応していると思いますか?(項目提示)

    各項目の回答を5つの因子(【組織からの承認/機会】【組織への帰属意識/認められた実感】【全従業員に対する幅広い公平性】【従業員の多様性】【組織のDEIを推進する努力】)に分類し、分析した。

    ■職場が、DEI(多様性・平等性・包括性)に対して、どのように対応していると考えるかを測る質問では、日本は職場の企業文化に対して否定的な回答が非常に多い。
    特に、【組織への帰属意識/認められた実感】については、日本は調査対象国中、最も悪い結果となっている。
    日本では、MR業界も一般勤労者も、働きがいや公平さに関する不満が他国と比べかなり高いといえる。


    【組織への帰属意識/認められた実感】 同意しない(%)

    【全従業員に対する幅広い公平性】 同意しない(%)

    日本で、【組織への帰属意識/認められた実感】や 【全従業員に対する幅広い公平性】が低く評価されたことについては、皆さん自身の職場の企業文化について振り返ってみていただきたい。

    【組織への帰属意識/認められた実感】は、主に以下の項目と関係している。
    • 私の会社に帰属していると感じる
    • 自分は所属部門にとって評価され、不可欠な存在である
    • 自分は会社にとって評価され、不可欠な存在である
    • 職場で感情面でも社交的にも支援されている 私の会社に帰属していると感じる
    【全従業員に対する幅広い公平性】は、主に以下の項目と関係している。
    • 自分独自の特性、性格、スキル、経験、そして背景は、会社で評価されている
    • 仕事ぶりが十分認められている
    • 学習し昇進する機会と支援が与えられている
    • フレキシブルに働く機会とリソースが与えられている
    人間には、集団に帰属し、その一員として認められたいという欲求が生まれつき備わっている。職場での社会的苦痛の主な原因は、無視された、排除されたという感情が元にあるからこそ、インクルージョン(包摂性)が必要なのである。社員一人一人を仲間として受け入れる努力が欠かせない。会社や所属部門で自分自身が不可欠な存在だと感じられるかどうかは、働きがいに直結するものだ。

  3. 職場で差別を受けた経験
    現在の職場で、あなたは他の従業員から直接、差別を受けた経験がありますか?(項目呈示)

    職場で受けた差別の全因子の平均では、日本のMR業界は、(10%)は、各国平均(15%)よりも低い。
    評価項目を分類した3因子 <【組織の不公平な処遇】 (各国平均21% 日本15%)、 【同僚との関係】 (各国平均17% 日本6%) 【ハラスメント】 (各国平均15% 日本10%)>で、日本はいずれも各国平均を下回っている。
    特に、同僚との関係が悪いと答える割合が非常に低く、調査対象国の中で最も低い。
    日本では、民族・国籍・宗教による差別経験は極めて少なく、障害や家族状況による差別経験も少ない。

    同様に日本では、目撃経験でも性的指向/性同一性/民族/国籍/宗教/障がいの有無/家族の有無による差別を目撃することはほとんどなく、他の調査対象国と比べ低い。

    【職場で差別を受けた経験-全因子平均】 経験した(%)

    日本では、職場での差別の体験が少ない、差別の目撃経験も少ないという点で比較的よい結果だといえそうだ。ただし、そもそも少数派の人(民族、国籍、宗教、障がい、家族の状況など)の人数が少ないということにすぎないのかもしれない。少数派であるがゆえに数字として見えず、声をあげることができないだけかもしれない。少数派であることは弱い立場である。その少数の意見を大切にし、平等に扱うことが心理的安全性のある組織につながる。身近なところにいる少数派の人に目を配り、その人たちが安心して自分の意見を言える組織でなければ、新しい革新的なものを生み出す組織にはなれないだろう。

    (次号に続く)

<調査概要>

この調査は、日本を含む世界10カ国で、リサーチャー向けと一般勤労者向けのオンライン・アンケート形式で実施され、多様性・平等性・包括性に関する市場調査業界の現状と課題、一般勤労者の認識との差異等について分析を行った。
以下の2つの調査からなる。

■調査対象者
調査1 市場調査(MR)部門 
18歳以上の市場調査(MR)部門(市場調査、インサイト、データ分析など)で現在働いている、もしくは最近働いたことがある人
調査2 一般勤労者
18歳から64歳までの、現在被雇用者、自営業者、最近一時解雇された人、退職した人、自主的に仕事をやめたを含む一般の勤労者

■調査実施期間
2021年10月20日から11月22日

■各国の回収サンプル数


本レポートは、JMRAがGRBNの調査結果を元に、独自に日本版レポートとして作成したものです。
本調査結果に関するお問い合わせはJMRA事務局までお願いいたします。
著作権
©2021TheGlobalResearchBusinessNetwork(GRBN)andTheMarketResearchSociety(MRS)GRBNGグローバルDiversity,Equality&Inclusivity(DEI)Survey2021Reportの著作権は、 TheGlobalResearchBusinessNetwork(GRBN)に帰属します。

この調査の日本での実施にあたり、楽天インサイト様のご協力をいただきました。
ご協力に感謝いたします。

2022.3.14掲載