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国際潮流シリーズ第7弾:GRBN『グローバル信頼度調査2024』(2024.5.21)

更新のお詫び
5月23日に、本文の更新を行っております。
以前に閲覧された方は、再度ご覧くださいますよう、お願いします。
タイトル

日本の市場調査会社に対する信頼度は「横ばい」
- AI利用には強い警戒感:『グローバル信頼度調査 2024』

 

ないよう

ESOMAR GMR日本アンバサダー 一ノ瀬 裕幸


世界各国の市場調査協会の連合体であるGRBN*1)では、2020年と2022年に続き、日本を含む世界10カ国で『グローバル信頼度調査 2024』を実施し、このほどその結果を公表しました。
*1) Global Research Business Network : APRC(アジア太平洋:JMRAを含む)、EFAMRO(欧州)、ARIA(南北アメリカ)、AMRA(アフリカ)の4団体で構成

1.調査の目的と結果をご覧いただく際の留意点

今回の調査は、市場調査業界を含め、各国の政府機関や専門組織が、一般市民からどの程度の信頼をかち得ているのかにつき、10ヵ国の協会と12企業の協力を得て、約9,500人を対象としたアンケート調査を実施・分析したものです。前回(2022年)データとの比較検討も行っています。
実査時期(今回は2024年2月中旬)は調査結果に影響を及ぼす要因のひとつで、国際的にコロナ禍は明けたものの、ウクライナやガザ地区での紛争や物価高、生成AIの登場などによって、世界の人々を取り巻く環境が大きく変わっていたことに留意する必要があります。日本では自民党の政治資金規正法違反が大問題となり、政府や政治への不信感が吹き荒れている時期と重なりました。そのため、政府への信頼度指数*2)は-14ポイントと失墜し、メディア企業(報道機関)も-10ポイントと厳しい結果になりました。
*2) 総合信頼度指数(=信頼する% - 信頼できない%)

なお、参加国が毎回微妙に異なること、国ごとの文化的背景の違いによって回答傾向に顕著な差がみられることから、国別の比較や全体のトレンドにはあまり意味がありません。全体平均及び他国のデータは、あくまでも参考情報としてご覧いただきたいと思います。
また、本調査のレポートには、「グローバル版」と「日本版」の2つがあります。同一の原データから、協力国全体と各国のデータを抜き出して作成された版の違いになりますので、抄録では「日本版」からのデータのみを扱っています。

図1 日本での組織/専門家への信頼度のレベル


2.調査結果のポイント(日本版)

日本版レポートに指摘されたポイントは、以下の5点に集約されています。

  • 日本での市場調査会社に対する信頼度は、今回分析された他の組織と比較して平均的な水準(信頼度指-8)にとどまっている。
  • 日本の消費者は市場調査がビジネスにもたらす価値を認識しているが、個人にも関連しているという理解を高めていく余地(必要)がある。
  • とりわけ調査に要する時間を短縮することによって、日本の消費者にとっての調査体験をまだまだ改善できるはずである。
  • 市場調査を含む各業界が、個人情報をどのように取扱っているかについての不信感が引き続き広がっている。データ・プライバシーの保護施策に関する知識不足が、こうした疑念を後押ししている。
  • 日本の消費者は、市場調査におけるAIの利用について、あらゆる側面で懐疑的である。

最初から4点の指摘は前回までと似通ったトレンドで、日本では特に「市場調査が消費者に利益をもたらしていると感じられない」こと、「調査に協力する時間が長すぎる」こと、「調査に協力しても楽しいと感じられない」こと、「個人情報の収集と使用方法に関する認知度が低く」、「個人情報保護の不正使用に関する懸念が強い」ことなどが引き続き示唆されています。

最後の指摘は、今回の調査でトピックス的に追加された5つの質問への回答結果によっています。AIを市場調査の実務に取り入れていくときに、メッセージを一歩間違えると調査への信頼性に悪影響を及ぼしかねないリスクをはらんでいることがわかります。各種マスコミやSNS等の影響により、AIの普及に対する恐怖感や不信感が浸透しているのではないかと思われます。 国際的にもほぼ同様の傾向があり、今後のAI活用にあたっては消費者の誤解を解きつつ、データ保護策等を適切に説明しながら進めていく必要があることが示されています。

図2 AI利用に関する市場調査会社の信頼度への影響

図3 市場調査会社によるAI利用に関する信頼度


=> 日本版抄録 レポートはこちら 
=> 原文(英語版)レポートはこちら (グローバル版)
=> 原文(英語版)レポートはこちら (日本版)

なお、今回まで3回連続で、日本の市民対象の調査にご協力をいただいた楽天インサイト株式会社様にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

以上

 2024.5.21掲載