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解説1

第47回経営業務実態調査結果解説

業界統計:新セグメントを考慮すれば市場規模は1.4倍に(暫定値)
-第47回 経営業務実態調査結果を解説(後編)

ESOMAR GMR日本アンバサダー 一ノ瀬 裕幸


1.新セグメントの拡大推計値公表にあたって

(1)日本の「インサイト産業」は「市場調査業界」の1.4倍(暫定値)

    JMRAでは第47回経営業務実態調査結果に基づく例年の市場規模算定と並行して、ESOMARの新定義による拡大推計を試行中です。暫定値ではありますが、マーケットが約1.4倍に拡大すると見込んでいます。まだ公式数値としてオーソライズするには至っていないものの、業界の内外でたいへん興味を持っていただき、日経新聞社の『日経業界地図 2023年版』*(8月25日発行予定)で取り上げていただけることになりました。数値の妥当性に関する議論を呼びかける意味合いを込めて、下表をご案内させていただきます。
    (* 同書では「マーケットリサーチ(インサイト)」として扱われています。JMRAからは資料提供のみで、文責及び著作権は日本経済新聞社に帰属します)。

(2)暫定拡大推計値に関する注意点

    この拡大推計はESOMARの国際統計との整合を図り、世界各国との比較・考察を可能にするための取り組みです。そのご理解と、今後の精緻化にご協力いただくためにも、以下の諸点にご留意ください。
    ① ESOMAR提唱の「インサイト産業」の定義
    • 「さまざまなデータを収集・分析し、クライアントにインサイトを提供する」産業
    • 従来の(狭義の)市場調査に「テクノロジー主導調査」と「レポーティング」を加えているが、インサイト抽出に関わる調査及びデータ分析業務売上高のみを対象として集計している
    ② 拡大推計の方法はESOMARに準じているが、限界がある
    • ESOMARの国際統計を参考に、日本市場における対象候補企業をリストアップ
    • 既存統計資料に当たり、部分的に帝国データバンク社の信用調査データも購入(しかし、外資企業の日本の情報はほとんど得られなかった。国際統計はニューヨーク等に上場している企業の全世界売上高を基にしているが、国別データは開示されていない)。
    • JMRA執行部(理事)の紹介を通じ、各分野の企業及び識者にヒアリング調査を実施
    • 過大な推計とならないよう、一定の確証を得られた最低ラインの数値のみを積上げた
    ③ 日本市場のプレイヤー特性が十分に解明されていない
    • 日本では「d.デジタルデータ分析(MarTech)」の領域の多くを「e.経営コンサルティング/シンクタンク」に属する企業が担っているとみられ、境界を見きわめられていない。


(3)拡大推計精緻化へのご協力のお願い

    今回の拡大推計の試みは、私たちの業界の事業領域をより広く捉え、新たなビジネスチャンスに積極的に取り組んでいく指標の1つになるとともに、その進捗状況を評価していくためにも重要な位置を占めるものです。
    ESOMARの国際統計改定には約5年の準備期間を要したと聞いており、日本市場でより詳細なデータを得ることは非常に難しいとは思われますが、JMRAとしてはあえてチャレンジを続けたいと考えています。来年度にはより確度の高い値を、前年比とともにお出ししたいと考えております。よい情報またはデータ、調査手法等の知見をお持ちの読者の方々がおられましたら、ぜひ事務局までご一報ください。皆さまのご意見・ご協力をよろしくお願いいたします。
2.2020 → 2021年度のその他の特記事項

(1)低迷が続いた海外調査プロジェクト

    世界的なコロナ禍の影響を受け、前回(2019→2020)に引き続き海外調査は振るいませんでした。
    • 海外受注取引は取扱社数(2020→2021:31社→27社)、受注金額(同:4,952億円→4,476億円)ともに減少が続いています。
    • また、海外への発注取引の取扱社数(同:25社→20社)、発注金額(同:2,254億円→2,226億円)についても同様でした(表3-4)。

    しかし2022年には、もともと調査需要の大きな欧米先進国を中心にコロナ規制はほぼ解除されており、ウクライナ情勢への懸念等はありつつもビジネス系航空旅客の復調が伝えられていることなどから、一定の復活が見込めるものと期待されます。


(2)質的調査のオンライン化が進展

    従来型調査市場においては、新セグメント導入に伴う「その他」の定義変更による変動を考慮しても、全体のトレンドに大きな変化はみられませんでした。しかし細かくみると、質的調査の分野でもオンライン化が急速に進んだことが明らかになっています(表6-3-1-2)。

(3)2022年度の展望と課題

    2020→2021年度の日本市場の復調(対前年比107.0%)に、2020年の落ち込みに対する反動という側面が含まれていることは間違いありません。しかし、調査時点(4~5月)では2021→2022年も105.3%と堅調な見通しが示されています(表7:上海市ロックダウンや原油・物価高の影響が顕在化する前)。



    一方、当面する経営上の問題点(表8)としては、「中堅リサーチャー不足(54.8%)」がコロナ禍による影響を抜いて最上位に浮上しました。業況復活を下支えするためにも、人材の確保・育成が急務となっていることがうかがえます。


    なお、業界統計とは別に、経済産業省からの依頼で継続している直近の「セーフティネット保証5号指定に係る業況調査」からは、業界全体としては好調を持続させているものの、大手企業と中小企業との間の二極化が進み、中小規模層での回復は遅れていることが鮮明になっています。こうした点も今後の大きな課題となっていますが、詳細な分析はまた別の機会に譲らせていただきます。

-> 過去の経営業務実態調査結果についてはこちら (報告書のページへ)
http://www.jmra-net.or.jp/activities/trend/investigation/

2022.08.23掲載