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ほんぶん

第3部 インサイトの戦略と人材をリードする
第24章 選択肢を見つける

JMRAインターネット調査品質委員
リサーチ・コンサルタント
岸田 典子


戦略を策定する際に重要なのは、まずビジョンについて少し次元の高い表明をした後に、その実際の具体的な決定へと移ることである。

多くのリーダーにとって典型的な次のステップは、チームと話し合うことだ。もしもあなたが外向的な性格でインクルーシブな意思決定をするのなら、ビジョンについて結論を出す前にインサイトの機会創出ややりたいことについてチームで話し合ったかもしれない。しかしすべての人がそうするわけではない。あなたは内向的な性格かもしれないし、チームにインクルーシブになれない理由があるかもしれない。例えば、あなたが大胆な変化が必要だと感じていて、上司と基本的な合意を得る前にチームと方向性について議論するのは適切ではない場合もある。

多くのIMAメンバーは、チームを巻き込むためにチームで策定したビジョンについて話し合い、チーム全体、シニアグループ、ワーキングパーティーのいずれかを招いて、ミッション・ステートメントの作成するのが効果的であることを理解した。実際に、インサイトリーダーはしばしばこのステップから始め、分析やビジョンの段階を飛ばすことがある。ミッション・ステートメントがあるに越したことはないが、前回の2つの章で、最初に本当に深く考えるべきことがたくさんあることを示した。

インサイトチームも、ミッション・ステートメントは通常、ビジョンの中核部分を取り入れ、チームが何を目指し、それがどのような効果をもたらすかを力強い文章で表現する。優れたミッション・ステートメントは、チームのやる気を引き出すだけでなく、その年にチームが何をするか、そして、それと同じくらい重要な何をしないかを決定する際の基準としても機能する。

近年IMAのメンバーが各社で作成したミッション・ステートメントには、次のようなものがある。

アビバ(ロンドンに本社を置く保険会社): ビジネスが今、そして明日必要とするものを提供することに集中し、収益性の高い顧客第一主義の提案とコミュニケーションを実現する。

ルコゼード・ライビーナ・サントリー(サントリーグループのイギリスの飲料ブランド): ゲームチェンジャー的マーケティングとイノベーションを巻き起こす。

ディクソンズ・カーフォン(イギリスの家電小売・携帯電話販売の大手):顧客が十分な情報を得た上で意思決定を行い、経費の節減を図ることができるよう支援する。

ブリティッシュガス: 意思決定への情報提供と推進を通じて、顧客中心主義を推進する。

スパイアヘルスケア: 根本的なビジネスの成長につながる、より良い意思決定を可能にする人材となる。

ドメスティック・アンド・ジェネラル(家電製品のアフターケア): インサイトは、組織に十分な情報に基づいた意思決定を行う能力を与え、ビジネスに挑戦するために存在する。

アビーム(コンサルティング): 先見性、自動化、科学的経験の促進を通じて、事業全体の成長の触媒となる。

ファースト・レート・エクスチェンジ・サービス(通貨両替業): インサイトをもってビジネスに関与し、意思決定を最適化し、ビジネスチャンスを積極的に捉えることで、組織的・商業的成功に貢献する。

NFUミューチュアル(総合保険会社): 既存および潜在的な顧客が現在、そして将来にわたって何を考え、何を感じ、何をするのかを明確に把握し、ビジネスにとっての価値を特定し、必要な対話に情報を提供する。

レナード・チェシャー・ディスアビリティー(慈善団体): 意思決定と行動に影響を与え、自社(LCD)の影響力、リーチ、インパクトを大幅に拡大し、あらゆる場所で障害とともに生きる人々の機会を広げる。

*企業名の( )内の注釈は訳者

このようなミッション・ステートメントは、ビジョンを現実のものにするための大事な第一歩ではあるが、最初の一歩に過ぎない。インサイトチームは、企業の他の部門と同様に特定の条件の中で活動し、予算内で一定の仕事を行い、さまざまな成果を出す。それは意識的に選んだことを戦略として文書にまとめたものでなければならない。

しかし、インサイトチームの対応範囲、規模、活動、アウトプットに対して、組織が常に明確な選択をしていると答えているのは、インサイトリーダーのうちわずか6人に1人にすぎない。インサイトチームは、これまでやってきたことを続ける傾向がある。どのような選択が可能かを最初の原則から検討して、どの選択肢を取るべきかを判断することはない。それどころか追加の仕事を引き受けなければならなくなったり、予算や人員を削減しなければならなくなったりするとインサイトチームはしばしば新たな選択を迫られることになる。

最も効果的なインサイトリーダーは、こうした問題に積極的に取り組み、将来のビジョンに基づいた提言を行う。こういった提言を文書化することは非常に重要だ。なぜなら文書化することで、リーダーは妥協したり、そうしなければ脇に追いやられた課題に直面せざるを得なくなるからだ。

以下は、検討すべき重要な側面である:

- 影響を与える意思決定の規模:IMA会員にはグローバルな意思決定もあれば、ある都市にしか影響しない意思決定もある。また、あらゆるチャネルから会社が提供するすべてのサービスに関連する場合もあれば、1つのブランドや製品に限定される場合もある。

- インサイト機能の範囲:あなたのチームは、社内で唯一のインサイトチームだろうか? 分析、調査、競合情報、経営情報などを提供している他の部署があるだろうか。なぜそのような条件が設定されているのだろうか?

- 活動のタイプ:活動は、データの収集、構造化、操作から解釈、コミュニケーション、行動計画の連続体である。あなたの仕事はどこで始まり、どこで終わるのだろうか?

- チームからのアウトプット:それはデータ、情報、真のインサイト、意見、提言のどれなのだろう?

あなたはそのアウトプットを報告書、プレゼンテーション、ファクト集、イントラネット・ポータル、またはより幅広いコミュニケーション・デバイスなどにまとめるのだろうか?

- そのために必要なリソース: チームの規模は?チームにはどんなスキルがあるのか?予算規模は?

あなたはその使い道にどのような裁量をもっているのか?

- 他部門との関係: あなたのチームは、他部門からサービス部門と見られているのか、信頼できるアドバイザーと見られているのか? データやリサーチの調達は、他部門に依存しているのか? 意見や提言の提供を提供する際、他の部門と競合しているか?

- 成功の尺度: 年度末にはどのように評価されるだろうか? あなたのインサイトに対するビジョンとあなたの1年間の評価で取り上げられる項目に整合性はあるだろうか。


ビジョンを策定するプロセスと同様に、創造的に考え、ものごとを大きく捉えることが重要である。なぜならこの段階で思考を制限してしまうと、実際にはより野心的でないものを実行に移してしまう可能性があるからだ。しかし、選択肢や提言は、現実的なものでなければならない。なぜなら、ここは戦略策定プロセスにおいて、大きな願望から具体的で目に見える問題へと移行する段階だからだ。そのため、私たちはチームの主要な前提条件、リスク、依存関係についての見方を含めて考える必要がある。

成功するインサイトチームの22番目の秘密は、
インサイトに対するビジョンをどのようにチーム運営するかという選択肢に置き換えることだ。

重要ポイント:
  1. インサイトに対するビジョンを策定し、それをページ上の言葉として残すだけでは意味がない。
  2. 多くのリーダーは、ミッション・ステートメントを作成することで、チームにモチベーションと 参照すべき共通の目標を与えている。
  3. インサイトチームが働いている条件を調べ、それがビジョンとどのように合致させるかを決めることが重要である。
  4. 重要な問は、インサイト活動の規模や範囲、リソース、他の部門との協働方法と関係がある。
  5. 思い込みを避ける。これは真の変化を実現するチャンスかもしれないが、現実的な影響と妥協案を 考慮しよう。

 

次章紹介

インサイトに対するビジョンとその根拠を文書にまとめるだけでなく、今後の部門運営に与える影響について批評することができれば、あなたは素晴らしいポジションに立つことができる。しかし、このようにどんなに広範囲の戦略であっても、やはり実行する必要がある。次の章では、その点について考えてみたい。

2023.9.19掲載