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ほんぶん

第3部 インサイトの戦略と人材をリードする
第26章 人材がすべて

JMRAインターネット調査品質委員
リサーチ・コンサルタント
岸田 典子


何年も前のことだが、私は今まで聞いた中で最も耐えがたい退任スピーチを聞かされたことがある。その退職者は大ボスで、非常に有能なビジネス・リーダーではあったが、働く上では本物の怪物となる人物だった。彼は自らの野望のために、若手社員の幸せやワーク・ライフ・バランス、自己肯定感を犠牲にすることがしょっちゅうあり、彼が退社することを発表すると、統括していた事業部全体が非常に安堵した。しかし、最終日のスピーチで彼は、私たちがいなくなったらどれほど寂しいかと語り、『結局のところ、人材がすべてなのだから』と宣言して、皆を驚かせた。

何年も前のあの日、私たちが礼儀正しく拍手を送ることになっていたことを思い出すまで、気まずい沈黙が流れた。というのも、効果的なインサイト・チームの育成においては、まさしく人材がすべてだからだ。

効果的なインサイト・チームの育成

インサイトリーダーとして私たちはだれもが、できる限り効果的なインサイト機能を開発したいと考えている。この本では、そのための多くの方法をすでに説明した。

  • インサイトとインサイトを定義することの重要性、そしてインサイト・チームの真の目的は、組織の価値を明確にし、組織内の変革を推進することであるということを理解することの重要性。
  • 新たなインサイトを生み出し、顧客についての知識を深耕することで、インサイト部門が価値を明確にする能力を向上させるためのさまざまな方法。
  • 影響力とコミュニケーションを通じて変革を推進するために必要な考え方と行動。
  • すべてのインサイトリーダーが、インサイトがそれぞれ企業にもたらす違いを示すビジョンを含む、インサイトの戦略を明確にする責任を負っていること。

しかし、私たちの部門が何をし、どのようなプロセスに従っているかに焦点を当てることは、私たちの人材、そのスキル、そしてその人材の配置方法について考えることに代わるものではない。第21章で私は、インサイト戦略を持っている大企業は6社に1社にも満たないと述べたが、IMAのベンチマーク調査によると、インサイト人材について考えるための体系的な計画を持っている組織はさらに少ない。
これでは意味がない。新しいプロセスを採用する必要がある優秀な人材を選ぶか、プロセスは優れているが、スキルのバランスが悪く、仕事への適性がほとんどない平凡なチームを選ぶかという選択を迫られたとき、平凡なチームを選ぶリーダーはほとんどいないだろう。賢いアナリスト、鋭いリサーチャー、クリエイティブなインサイトマネージャー......こうした人材は、インサイト・チームで働く喜びをもたらし、顧客や市場の理解をビジネスの業績向上に利用したい組織の可能性を切り開くことができる。

では、インサイトリーダーはどのように状況を改善すればいいのだろうか?出発点は、関係する様々な側面をマッピングし、それぞれの領域についていくつかの重要な原則を確立することである:

  • インサイトリーダーとしての私たち自身の役割の本質:インサイト・チームを率いることは、他の企業部門を率いることと同じなのか、それとも認識して受け入れるべき独自の課題があるのか。
  • チームに所属する人材のスキルと特性: インサイト・チームが必要とする人材の役割として不可欠なものは何か。インサイトリーダーは、どのような人材を見つけ、育成することが最も難しいと感じているのか。
  • 採用すべきインサイトの視点:スキルや属性だけでなく、チームが世界をどのように見ているか、他部門とどのように仕事を進めているかについて、よく考えるべきだ。
  • インサイト人材を採用する最良の方法:私たちが求める視点と複数のスキルや属性を踏まえると、成功したインサイトリーダーはどのように、新しいチームメンバーを探したのだろうか?
  • チームワークに関する共通の課題:社員がどのように協力し合い、それが部門にとって最高の結果を生むようにするか。

 

これらの問題を振り返った上で、私たちは、自分たちがどこに到達したいのか、そして現時点で、そこからどの程度離れているのかを考えることができる。インサイトの人材育成のあらゆる面を完璧にマスターしているインサイト部門は、世界中どこを探しても存在しないが、一部のチームと一般的なチームとの間には、顕著な差がある。インサイト・リーダーシップの他の多くの部分と同様に、インサイト戦略を常に参照し、人材計画の策定方法がより大きな目的と一致するようにすることが重要だ。

最後に、毎日従業員をサポートし、鼓舞するように行動する規律と集中力の問題といえるだろう。この章の冒頭で述べた上司のように、自分のキャリアを振り返って同僚の重要性を説くのが好きなシニア・マネジャーも多い。しかし、ピープル・リーダーシップを成功させるとは、同僚との時間を日常的に優先し、それを絶え間なく繰り返すことでその原則を根付かせ、その上で同僚一人ひとりのユニークな立場と、提供できる思慮深いアドバイスや真のサポートを考えるということだ

成功するインサイト・チームの26番目の秘訣は、インサイト人材の育成の重要性を認識していることである。

重要ポイント:
  1. インサイトリーダーは、人材とそのスキル、そしてその配置方法について常に考えなければならない。
  2. インサイト・チームの社員を率いることは、インサイトの戦略を率いることと並んで、重要な責務である。
  3. 自分自身の役割の特殊性を含めて、人材リーダーシップの重要な側面をマッピングすることが出発点である。
  4. そして、企業におけるインサイトのビジョンに照らして、どこに到達しようとしているのかを決める必要がある。
  5. 私たちは、日々、自分の役割の人間的側面に取り組むために、真剣に時間と使い、注意を払う必要がある。

 

次章紹介

企業のリーダーの多くは、これらの原則はどの部門のどのような管理職にも当てはまると言うだろう。私もそう思うが、インサイトのリーダーはいくつかの特有の課題に直面しているともいえる。そこで次の章では、あなた自身の役割について考えることに少し時間を割いてみようと思う。


2023.10.17掲載


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