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ほんぶん

第3部 インサイトの戦略と人材をリードする
第27章 チームの中ではなく、チームのために働く

JMRAインターネット調査品質委員
リサーチ・コンサルタント
岸田 典子


インサイトリーダーの実際の仕事とは何だろうか?インサイトフォーラムでの議論によると、私たちの役割は非常に忙しく、ますます多様化しているようだ。異なる組織におけるインサイトリーダーの役割には、確かに多くの共通点があるが、重要な違いもある。その違いの中には、所属する組織や企業の業種によるもの、職務の性質によるもの(例えば、市場調査ベースのインサイト・チームを率いるのか、それとも主にアナリストのグループを率いるのか)などがある。しかし、私たちがしばしば無意識のうちに行う選択から生じる違いもある。ここで私が注目したいのは、自分の役割をどのように定義し、どこに時間と注意を向けるかについての選択だ。

この問題を2つの軸を組み合わせて6つのボックス・モデルを作ることを提案したい。最初の軸は、インサイト・チーム内での仕事に費やす時間の長さに関するもので、文字通り、親しい同僚に囲まれて机に向かっていることもあれば、そうでなくとも、部下と話をしたり、部下と同じプロジェクトに取り組んだりしていることもある。インサイトのリーダーは皆、ある程度はそうしているが、中には一日の大半を「社内」リーダーとして過ごす人もいる。

それとは対照的に、他のインサイト、調査・分析の責任者は、ほとんどの時間を「社外」リーダーとして過ごすことを選択する。彼らの業務は、他部門とのミーティングや、カスタマーインサイトが意思決定の原動力となるオペレーション現場や店舗の視察に費やされる時間で溢れている。インサイトリーダーは皆、その両方を兼ね備えているが、そのバランスは大きく異なる。

現段階で最も重要なのは、私たちの役割の内的側面か外的側面かということではない。なぜなら、効果的なリーダーにとって最も価値があることが証明されているのは、この軸の組み合わせを通してこれらの問題を見ることだからである。

インサイト・チームの運営は中小企業の経営に似ている

IMAに入会して間もなく、私はしばらくカナダに滞在してトロントにある優れた製薬会社のインサイト戦略に携わる機会を得た。私は旅行中、夜に読書をするのが好きなのだが、自分がいる場所と普段働いている場所が物理的に離れていると、自分の仕事に対して違った視点を与えてくれることにいつも気づく。今回の旅では、中小企業の経営について書かれたマイケル・ガーバーの『E-myth』という本を読んでいたのだが、読めば読むほどガーバーの重要なフレームワークのひとつがインサイトのリーダーにも役立つと感じるようになった。このフレームワークには、中小企業の経営者が果たすさまざまな役割が書かれていた。

  • 技術者的役割
  • 経営的役割
  • 企業家的役割

ガーバーによれば、一般紙では中小企業の経営者を企業家と表現することが多いが、実際にはそのほとんどが有能な技術者であり、これまでの役割の技術的側面をマスターし、製品やサービスを高い水準で提供する能力を実証しているからこそ、そのような仕事をしているのだという。もしあなたがパン屋を経営しているのなら、パン作りの才能がある可能性が高いし、小さな花屋チェーンを経営しているのなら、花を生けるのが得意だろう

しかし、パン屋のオーナーがパンを作ることに時間を費やしたいと思ったり、花屋の社長が販売業としてではなく、花屋のように振る舞いたいと思ったりすると問題が生じる。成功する中小企業の経営には中小企業で働くのとはまったく異なるスキルが必要であり、時間と集中力の配分についてもまったく異なる選択が求められる。他の従業員の監督、品質管理、帳簿の管理、適切なプロセスの確保などだ。しかし、それ以上に重要なのは企業家としての側面だ。企業のエキサイティングな未来を思い描き、市場機会を見極め、新しい提案を開発し、市場の脅威を敏感に察知し、組織を成功に導く。ガーバーは、成功する企業家は「会社の中ではなく、会社のために働く」のだと言う。

なぜなら、私たちの多くは、市場調査リサーチャーやアナリストとして発揮した技術的能力によって、現在の責務を与えられているからだ。そして残念ながら、インサイトリーダーとして成功するためには、インサイトマネージャー、アナリスト、リサーチャーとして成功するのとはまったく異なるスキルと集中力が必要であることを、あまりに多くの人が理解していないように思う。

そこで、社内と社外という軸をガーバーの技術者、経営者、企業家の領域と組み合わせ、インサイトリーダーが時間を費やす場所について、しばしば無意識のうちに行う選択について考えてみよう。


図5:インサイトリーダーのフレームワーク

社内的な技術者:リサーチプロジェクトの運営や分析が含まれるだろう。リサーチサンプルの選択についての決定や、分析の一部を自分自身で行うなど、研究者や分析者であったなら常に得意としていたことかもしれない。

社外的な技術者:他部門との会議で、他の人が行った研究を発表したり、どのような研究手法が使われたのか、なぜそのような分析が行われたのか、技術的な理由を説明したりすることはないだろうか?もしそうなら、あなたはこのスペースで時間を過ごしていることになる。

社内的な管理職:インサイトの同僚を直接指導し、進捗状況をチェックし、規約を監査し、技術的なスキルを指導する。また、人事(業績管理、給与・報酬、採用、トレーニングの手配など)にも時間を割く。

社外的な管理職:他部署のマネージャーとのリソース配分に関する話、どの仕事をいつやるかの優先順位付け、期待値の管理、上司へのプロジェクトの最新情報の提供など。

社内的な企業家:インサイトの戦略についての考察、リーダーシップの動機づけ、インサイトの同僚のために成功のイメージを描く時間、同僚の時間を再優先するための新しいプロセスや仕事の進め方の考案、価値の特定と変革の推進に最大限の努力が払われるようにすることなどが含まれる。

社外的な企業家: これは、他のインサイトリーダーから学んだり、この本を読んだりすることだ!インサイトのビジョンを会社の経営幹部に売り込むことであり、私たちの部門を宣伝し、どのように付加価値を与えることができるかを示す新たな機会を常に探し求めることだ。

これらの役割のどれが正しくて、どれが間違っていると言うつもりはない。すべてのインサイトリーダーは、おそらくそれぞれの役割にある程度の時間を費やす必要があるだろう。しかし、私が皆さんに問いたいのは、自分の時間を精査して、技術的なことや管理的なことに集中しすぎていることに気づいたら、自分自身を厳しく批判することだ。成功するインサイトリーダーは、成功するビジネス企業家と同じように、時間の大部分を部門内で費やすのではなく部門のために費やす必要がある。

成功するインサイトチームの27番目の秘訣は、インサイトリーダーのさまざまな役割を振り返ることである。

重要ポイント:
  1. インサイトリーダーは、自らの役割の社内的・社外的役割のミックスについて考えるべきだ。
  2. 技術畑出身者であれば、技術者のように振る舞い続けたいという誘惑が常につきまとっている。
  3. インサイトリーダーは、経営者と同様に、仕事の優先順位をつけ、同僚を監督する優れた管理者である必要もある。
  4. 卓越したインサイトリーダーは、企業家のように行動するというチャレンジも受け入れる。
  5. 自分の時間と優先順位を振り返る。