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ほんぶん

第4部 インサイトのインパクトを最適化する
第32章 インサイトブランドを開発する

JMRAインターネット調査品質委員
リサーチ・コンサルタント
岸田 典子


調査や分析は、変化を促すものでなければ意味がない。そのため将来を見据えたインサイトチームでは、自分たちのインサイトやアイデアをどのように広めるか注意深く考えている。第2部 「組織の変革を推進する」で述べたように、IMAの最も効果的な企業の会員は次のようなスキルを身につけている。

  • こちらの提案に従うよう特定の意思決定者を説得するのに役立つ影響を与えるスキルと計画
  • 顧客や市場に関する知識を組織全体で共有するためのコミュニケーションスキルと計画

マーケティングの例を借りれば、これはむしろ企業が主要顧客への販売に注力し、幅広い市場に自社製品の利点を伝えるための広告を展開するようなものだ。どちらも確立された戦術だが、企業が最初に定評のあるブランドを確立していればどちらもとても簡単なことである。

entrepreneur.comのウェブサイトによると:
「効果的なブランド戦略は、競争が激化する市場で大きな優位性をもたらす」。しかし 「ブランディング」 とは具体的に何を意味するのだろうか。簡単に言えば、ブランドとは顧客に対する約束である。何があなたの製品やサービスから期待できるかを伝え、あなたが提供するものを競合他社のものと差別化するものだ。簡単に言えば、あなたのブランドとは、あなたが誰であるか、誰になりたいか、人々があなたを誰であると認識しているかによる。

企業のインサイトの世界では、このフレーズを次のように言い換えることができる。
「インサイトとインサイトチームは、組織の他の機能と何が違うのだろうか。効果的なブランド戦略は、私たちの声を届ける上で大きな利点となる。簡単に言えば、私たちのインサイトのブランドは、社内の顧客に対する私たちの約束だ。それは、社内の顧客が私たちの製品やサービスに期待できることを伝え、私たちのサービスを他部署の機能と差別化する。私たちのブランドは、私たちが誰であるか、私たちが誰でありたいか、人々が私たちを誰だと認識しているかによる。」

私たちが気づいているかどうかにかかわらず、すべてのインサイトチームはすでに何らかのブランドを持っている。他部署は私たちが何をしているのか、その活動が自分たちにどのような影響を与えるのか、それが有益かどうかという見方をしているだろう。あなたが自分の部署に対する人々の認識を積極的に管理しようとしたことがないのであれば、おそらく彼らのインサイトという概念やチームに対する見方がかなり異なっている可能性が高い。そして、そのどれもがインサイトチームが自分自身に対して抱いているイメージや、おそらくより重要なこととしては、他の部署に今後抱いてほしいイメージと一致していない可能性が高い。

ここで重要なのは、インサイト戦略とインサイトが組織で果たす役割のビジョンとの関連である。第3部の 「インサイトの戦略と人材をリードする」 では、このビジョンは、インサイトが変化をもたらす機会と、その機会をつかむための意欲のレベルを分析することから策定するべきだと述べた。インサイトブランドを開発するには、ビジョンとミッションステートメントをもとに、潜在顧客の心にインサイトとその役割を効果的に浸透させる方法を考える必要がある。インサイト戦略がチームの企業戦略に相当するのであれば、ブランド開発は企業のマーケティングポジショニングを考えることに相当する。

ブランド開発の優先順位

インサイト部門の専門家の多くは、組織に関するブランドの概念に精通している。それが、提供されているものの将来性を理解するための近道であることも知っている。ブランドの開発には時間がかかり、構築には意識的で集中的な努力と投資が必要だ。

インサイトの専門家の中には、自社のブランドの開発と測定に積極的に関与している人もいるだろう。市場調査のリサーチャーには、ブランドの価値、信頼性、ポジショニングの調査に関わっている人もいるだろう。また、組織内のすべての人がその価値観に従っていることを確認するために、ブランドトラッキング調査に携わっているかもしれない。

しかし、ほとんどのインサイトチームは、組織のために何らかのブランド活動に関与しているが、ほとんどの人は、自分たちのインサイトチームのブランドについて考えたことがない。組織におけるインサイトチームのブランドプロミスについて、少し考えてみよう。ステークホルダーがインサイトチームをどのように認識しているかを理解することは非常に重要だ。その認識こそが、他の部署から見たチームのポジショニングを形成するのに役立つからである。

ブランドは製品が提供するものを差別化するべきか、ただ際立たせるべきなのか。バイロン・シャープは著書『How Brands Grow(ブランドはいかに成長するのか)』の中で、成功は単に差別化するよりもむしろ際だった存在であることから生まれると述べている。では、あなたのチームは他の機能と比べてどのような特徴的な資産を持っているだろうか。的確な質問と傾聴の方法だろうか。複数のデータソースを活用することだろうか。顧客データベースや消費者パネルへの独自のアクセスだろうか。業務やマーケット理解だろうか。どのような際だった特性をもつブランドとするかは判断が分かれるところだが、それらの特性のうちどれが最も重要で、チームを際立たせるのかを慎重に考えることが重要だ。インサイトのチームブランドはあくまで手段であり、そのために部署を宣伝するのではなく、その部署が何を標榜し、組織で果たす役割についての認識を管理することであることを忘れてはならない。

最後に考慮すべきことは、個人のブランドとチームのビジョンがどのように一致しているかということだ。強力なインサイトリーダーは、組織内で有名になることができ、これは非常に大きなメリットになる。IMAのインサイトフォーラムで最も進歩的なリーダーの中には、自分の部門の良いところをすべて体現している人もいる。しかし、インサイトの専門家のトップが個人的にあまりにも評価されすぎてその部門のブランドがリーダーの影としてしか存在しない場合は、デメリットになることもある。IMAのメンバーの中にはブランド開発で高評価をとったもののシニアリーダーが辞めてしまい、「(スージー)というブランド」は強かったが、 「インサイトというブランド」 がほとんどなかったということに気づくのが遅すぎたという人もいる。(*スージーは仮名)

だから、あなたが意識して取り組んだかどうかにかかわらず、チームにはブランドがあり、他部署の同僚もあなたの仕事について、ある種の認識を持っているはずだ。今こそ、インサイトに対する認識と潜在顧客の心の中での役割を積極的に開発し、管理する時である。

 

成功しているインサイトチームの32番目の秘訣は、インサイトとインサイトチームのブランドを社内で積極的に開発していることだ

重要ポイント:
  1. インサイトチームの地位を向上させたいのであれば、最も効果的な方法は、インサイトチーム自体のブランドに焦点を当てることである。
  2. どのインサイトチームにもブランドがあるので、現在のあなたのブランドはどのようなものか、また、それがあなたの望むものなのかどうかを振り返ろう。
  3. インサイトの専門家の多くは、顧客の企業ブランドに取り組んできた。その専門知識を活用して、自身のチームブランドを強化することができる。
  4. インサイトのチームブランドはあくまで手段であり、自分の部署を宣伝するためのものではない。
  5. 個人としても、私たちは自身のパーソナルブランドを意識し、自分自身のプロフィールを用いて適切な行動の模範として示すべきである。

 

次章紹介

すべてのインサイトリーダーは、組織におけるインサイトのブランドについて考える必要があるが、組織そのものと同様に、ブランドのニュアンスに何時間も費やしても、そもそも誰も自分たちのチームのことを知らなければ意味がない。場合によっては、認知度を高めることに焦点を当てた方が良いこともある。それについては、次の章で説明する。


2024.01.23掲載


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