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「インターネット調査の品質の向上のために」(2025.07.25)開催報告

 

インターネット調査品質委員会
加藤 宏


2025年7月25日にインターネット調査品質委員会では、「インターネット調査の品質向上のために」というウェビナーを開催し、多くの方にご視聴いただきました。
近年、インターネット調査の現場では、アンケートに協力くださるモニターの獲得や維持が年々難しくなり、それに伴い調査データの品質低下が懸念されています。
本セミナーでは、インターネット調査の方法論を研究されている東洋大学教授・山田一成先生をお招きし、回答品質を高めるための実際の調査事例を交えながら、課題解決に向けたヒントや実務に役立つ視点をお話しいただきました。

講演では、良質な回答を得る方法として以下の3つの論点が示されました。

1.公募型Web調査における「回答の質」とは?

「質問量が増えるほど低質な回答が増える」ということは古くから知られている問題ですが、3種類の低質な回答である「無回答」「不正回答」「不良回答」の事例とそれらが発生する背景についての紹介がありました。この事例を見ると、回答負荷が高い調査票が低質な回答を招くことをあらためて実感しました。

2.低質な回答の生起条件とは?

調査回答における「最小限化(satisficing)」という概念についての説明がありました。Satisficingは造語であり、いい加減な回答や適当な回答を意味しています。最小限化による回答の生起確率の公式から、良質な回答を得るには、質問をやさしくし、量を減らし、回答への動機付けを高めることが必要であることが説明されました。

ジョン・クロスニックの最小限化による回答の生起確率
 

3.良質な回答を得るためには?

良質な回答を得るための対策としては、実査前に行う「不正・不良回答を防止・抑制」と、実査後に行う「不正・不良回答の検出・除外」があり、それぞれ事例の紹介がありました。前者では、回答負荷を与えない適切な質問量や調査設計が必要であり、その基準となるものとして、JMRA発行の「インターネット調査品質ガイドライン」を活用すべきと述べられました。後者では、トラップ(引っ掛け)質問を入れた調査の事例紹介がありましたが、こういった手法は、調査として不自然であり、不正回答者を意図せず作り出してしまう懸念もあることから、実査後の除外対策よりも、実査前に防止・抑制することの方が重要であるとのことでした。

調査に関係するすべての人に参考になる具体例や示唆に富んだ講演の後、質疑応答をもって本セミナーは終了しました。
この講演全体を通じて、インターネット調査の品質を高めるには、調査設計の工夫、回答者への配慮、不正・不良回答の防止や抑制といった多面的な取り組みが求められることが強調されていました。これらのことを調査に関わるすべての人が理解して、共通の認識を持ち、それを実践することが、今後のインターネット調査を継続してゆくために最も重要なことであると、あらためて認識させられました。

本セミナーを録画したビデオを公開いたします。
リサーチャーはもちろんのこと、調査依頼者や運用に関わるすべての方に見ていただきたい内容となっております。今まで感覚的に思っていたことが明確に提示されており、具体的な事例もたくさん紹介されておりますのでぜひご覧ください。

2025.8.19掲載