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JMRAイノベーション・キャスト

ないよう


配信内容


<本シリーズの趣旨>

    国際的に市場調査業界が「インサイト産業」に変化する中、マーケティング・リサーチ自体の位置づけが変わろうとしています。マーケティング・リサーチはサイエンスであり、常に新たなイノベーションが起きています。
    ・これまで正しいと思われていたことに、新たな解釈が必要になる
    ・新しいと思われていることが、実は昔から存在していたのに気づいていなかった
    といったことが、あるのではないでしょうか?
    リサーチ・イノベーション委員会では、『イノベーション・キャスト ― 新時代の調査への提言』と題して、マーケティング・リサーチに「新しい視座と提言を投げかける」ことを目的に、この動画シリーズをお届けしたいと考えています。“キャスト”は、私たちから「皆様へのなげかけ」を表しています。どうぞお気軽にご覧ください。


<ご連絡事項>

    本シリーズで取り上げる課題への打開策は、他にもいろいろあると思います。ぜひ教えてください。意見交換しましょう。
    「もっとうまいやり方がある」
    「うちではこうしている」・・・ など、
    ご意見・ご質問をJMRA宛にお送りください。
    ⇒ office*jmra-net.or.jp(迷惑メール防止のため@を*に表示変更しております) 
第10回
第10回:統計分析をめぐるリサーチャーとの対談
(公開:2021年9月16日(木) 公開終了:2022年9月16日(金) )


イノベーション・キャストの今シリーズを締めくくる最終回として、統計分析のイノベーションについて研究者とリサーチャーの対談を行いました。日ごろ使い慣れてきた統計分析も枯れた技術ではなく、新しい視点からのイノベーションが可能であること、そしてリサーチ実務へのデータサイエンスの導入がすでに始まっていることが語られます。皆さまのこれからの仕事の参考にしていただければと思います。

第10回の資料はこちら

講師のご紹介
朝野煕彦   東京都立大学/専修大学元教授
河原達也   株式会社ビデオリサーチ
意見(Masa.WADAさん)

キャストの中で紹介いただいていた先生の書籍は、何年か前から気になっていて踏み込めなかった機械学習を、実務的に、わかりやすく解説いただいている書籍であることに感銘しました。
「分析を理解するには、簡単なデータ行列で、自分で回してみるのが一番わかる」と、以前先輩に教わったのと同じことが本の中に出てきていて、もしかしたらその先輩も朝野先生から教えられたのかもしれない、と思いました。
機械学習やAIは縁遠い世界なのかと漠然と思いこんでいましたが、そんなことはないですね。少しずつ、読みながら理解していきたいと思います。

ベイズ統計やディープラーニングも自分には遠い世界、と漠然と思いこんでいましたが、このキャストを通じて、「小さなデータで、リスク込みで施策の判断をする」「マーケ施策の反応により、セグメントする」「完全な分割ではなく、ファジイクラスタリング(重なりあう人もいる)もありで考える」など、現実のビジネスに求められることが実現できる技術なのだ、ということを教えていただけたと思います。

クライアントのマーケティング施策を、このようなリサーチ技術を援用して実施・検証し、インサイトをクライアントにフィードバックするサービスがリサーチ会社にもあってよいのではないかと思います。

いろいろ気づきをいただき、視野が拡がるキャストをありがとうございました。


第9回
第9回:セグメンテーションに未来はあるか
(公開:2021年5月31日(月) 公開終了:2022年5月31日(火) )

市場全体を複数のグループに細分化することをセグメンテーションといい、分割した 単位をセグメントと呼んでいる。セグメンテーションは、これまでマーケティングの 基本戦略 ( STP )の1つと考えられてきた。市場は異質な消費者・ユーザーから成る というマーケティングの市場認識は今も昔も変わらない。しかし、マーケット・セグ メンテーションのコンセプトはこれまでに紆余曲折してきた歴史がある。歴史を振り 返り、これからの課題を提起したい。

第9回の資料はこちら

講師のご紹介
朝野煕彦   東京都立大学/専修大学元教授

意見(高橋 直樹さん)
セグメンテーションは、不要にはならないと思っています。
「全ての消費者の全てのニーズに応えることは、企業にとって不可能もしくは効率が悪い
 → ターゲットを絞る必要がある → そのためにセグメンテーションする」
というのがセグメンテーションのそもそもの発祥なので、「企業が全ての消費者の全てのニーズに応えることができるようにはならない
 → セグメンテーションは不要にはならない」というのが論旨です。

これに対して、「いや、アマゾンなどの巨大ECはロングテールの品揃えを持つことができ、利用者の購入履歴に基づくレコメンもできるわけだから、全ての消費者の全てのニーズに応えることができており、彼らにとってセグメンテーションは不要だ」、という主張があるかもしれません。しかしそこで見落とされているのは、企業が提供するのは商品だけではないという点です。
消費者のニーズは、企業の事業ドメイン定義とは無関係に広がります。ECのケースでは、消費者にとっては「買い物」という大きな定義で括られることになるかもしれません。人によっては、あるいはオケージョンによっては、経験豊かな店員にお勧めしてもらいたいとか、ラグジュアリーな雰囲気を楽しみながら買い物をしたいといったニーズが存在します。たとえアマゾンがそうしたニーズで買われる商品の在庫を持っていたとしても、これらのニーズそのものに対応することはできません。つまり、「企業が提供するものは商品だけでなく経験なのであり、全ての種類の経験を提供することは不可能だと考えるのが現実的である以上、セグメンテーションは不要にはならない」、というのが私の考えです


第8回
第8回:ダイナミックサーベイ紹介 ~ Web調査を一歩先に インタラクティブ性のあるWeb調査 ~
(公開:2021年5月11日(火) 公開終了:2022年5月11日(水) )

ダイナミックサーベイは、Web調査のアンケート画面に「他の人の自由回答」を利用した新しい選択肢を生成し、対象者間で評価や刺激を与え合うことを可能にする手法です。
自由回答の共感度や人気度を即時に付与することで分析を容易にしたり、他の回答からインスピレーションを得るなどのインタラクティブなやり取りを通じて、対象者にも楽しみながら回答してもらうことができます。一般のWeb調査システム上で動作しますので、簡単に導入可能です。

第8回の資料はこちら

講師のご紹介
佐藤 哲也   株式会社アンド・ディ 代表取締役
小木戸 渉   株式会社インテージ 事業開発本部 リサーチソリューション部

質問者:(朝野熙彦)興味深いご提案を有難うございました。アイデア発想、質問紙作成のプリテストなど、いずれもご提案に納得できます。
質問:他者の発言に触発されて発言するというインタラクションの機能は、従来の調査ではグループインタビューが得意としてきた機能です。ご提案の方法はグループインタビューの代替にもなり得るでしょうか。
ユーザーは、両調査をどう使い分ければよいでしょうか。
(佐藤・小木戸)調査ご協力者間のインタラクションが期待できるという点において、 グループインタビューとの比較は重要な論点と存じます。
質が少し異なるとは思いますが、調査目的にかなえば、ダイナミックサーベイにより代替可能な部分はあると思います。

質的な違いについてみると、グループインタビュー(特にリアル環境)ではご協力者間のインタラクションが多様で話し方や表情のような非言語的な情報を含むことが特徴です。また、観察者も同様に非言語的な情報を得ることができます。

一方のダイナミッサーベイでは、他者の自由回答を見るというシンプルな方法ではあるものの、たくさんの自由回答を見て、評価するという方式がもたらすインタラクションの総量は多くなる、という特性があります。
コントロールしやすい形で特定の設問に関するインタラクションを数多く発生させ、定量的に扱うことができるという特性が、アンケート形式をベースとするダイナミックサーベイの強みになると言えそうです。


 

第7回
第7回:『すべての標本調査には偏りがある 総調査誤差(Total Survey Error)で調査の質を考える』
(公開:2021年4月16日(金) 公開終了:2022年4月16日(土) )

どんな標本調査にも偏りを生む要因があり、無作為抽出や確率標本であることだけが調査の品質や精度を担保するわけではありません。代表性が重 視されてきた世論調査におけるIVR(Interactive Voice Response)導入や、社会調査におけるWeb調査活用という新しい可能性が生まれています。 これらの実践の背景にあり理論的フレームにもなっている「総調査誤差」の考え方と、それがマーケティングリサーチにとっても重要な視点である ことを説明します。

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講師のご紹介
講演者:萩原 雅之  トランスコスモス・アナリティクス株式会社取締役フェロー/マクロミル総合研究所所長


 

第6回
第6回:抽出率を補正する層別リサンプリング- 割り付け標本の精度向上提案 -
(公開:2021年4月6日(火) 公開終了:2022年4月6日(水) )

アンケート調査では、その目的と予算等の制約に応じて各年代セルを均等に割り付けて実査が行われることがあります。割り付け調査のデータを元に、母集団の標本構成に合わせて復元抽出を繰り返す「層別リサンプリング」を提案するとともに、母集団の回答分布をより正しく推定する(=精度の高い)単純集計とクロス集計結果を得ることができるのかを検証しました。
割り付け標本と調査結果の集計のあり方について、多くの皆さんと活発な議論が出来れば と思います。

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講師のご紹介
講演者:相澤 健   株式会社サイズ 営業本部/リサーチ・イノベーション委員会委員

(匿名希望さん)とても興味深いご提案と思いました。この集計方法を普及させることで、割り付け標本調査の精度が向上し、クライアントの意思決定にもより貢献できるのではないかと思います。
ところで、このリサンプリングを実施する集計プログラムは公開(または安価に販売)していただけるものなのでしょうか?
(相澤)無料の統計分析ソフト「R」を使用することで、簡単に実現できます。
具体的なRのコードが必要な場合は、JMRA事務局を通じて個別にお声がけください。


 

第5回
第5回:購買行動を潜在意識で予測する  Implicit Association Test = 潜在連合テストによる反応速度分析
(公開:2021年3月23日(火) 公開終了:2022年3月23日(水) )

マーケティングリサーチのアンケート調査では、回答者が自分の考えを回答しています。これは、回答者の「顕在意識」で正しく回答しているものです。しかし、脳の中の漠然とした記憶(潜在意識)によっても人は判断をしています。IATは、人の視覚の反応速度から潜在意識の強さ/弱さを測定するものです。このIATを使って消費者の購買行動や選択行動を予測する、マーケティングリサーチ分野での活用提案です。

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講師のご紹介
梅山貴彦   株式会社クロス・マーケティング リサーチプランニング本部副本部長 エグゼクティブリサーチャー / JMRAリサーチ・イノベーション委員会委員長

(匿名希望さん)
潜在意識に切り込む、たいへん興味深い手法と思いました。
① やはりスマホでご回答いただく方法がよくて、PCやガラケーでは計りにくいものなのでしょうか?
② 確かに広告イメージ評価には適した手法と感じましたが、その他にも使えそうな分野(あるいはすでに実施している領域はありますでしょうか?
(梅山)
① PCでも同じように回答いただくことはできます。
ただし、スマホとの混在した調査は実施しません。機器による回答の反応速度が違ってきますので、併用は行っていません。ガラケーでは実施していないのですが、画面も小さく、回答負荷も大きいかと思います。
② パッケージ選定にもよく活用しています。
色や形、商品名の見え方など、最初に手に取るまでの評価に活用できます。特に、類似のパッケージ評価で、商品名と色や柄に対して反応速度の違いが出てきています。


 

第4回
第4回:『ディープラーニングは怖くない』
(公開:2021年3月8日(月) 公開終了:2022年3月8日(月))

ディープラーニングは受発注やレコメンデーションのAI機能をささえる基幹技術として近年脚光を浴びています。ではディープラーニングは画期的な新発見だったのでしょうか。またマーケターがこれまで使い慣れてきた統計解析とはどこが違うのでしょうか。今回はディープラーニングの起源をたどり、マーケティングにディープラーニングをどう取り入れればよいかを論じます。

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講師のご紹介
朝野煕彦  東京都立大学/専修大学元教授


 

第3回
第3回:「市場調査業界」から「インサイト産業」への転換
(公開:2021年2月22日(月) 公開終了:2022年2月22日(火)

ESOMARが昨年9月に公表した業界統計『Global Market Research 2020』が、世界の市場調査関係者を大いに驚かせました。突然、世界市場規模が前年比で約2倍になり、「世界トップランキング」企業の顔ぶれも様変わりしたのですから、無理もありません。
市場調査業界にいったい何が起こっているのか、直近の状況と課題をご紹介します。

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講師のご紹介

一ノ瀬裕幸   リサーチ・イノベーション委員会

意見(飯野 洋志さん)
ここ数年、市場調査とテック・ツール系、コンサル系の業界の垣根がなくなっていくのは何となく実感してきましたが、ESOMARがこうやって業態定義を変え、自社のランキングも大きく低下するのを目の当たりにするといよいよ危機感が大きくなります。

意見(高橋 直樹さん)
諸手を挙げて賛同します。数年前から、日本の調査業界で業界を挙げてこういう動きが始まることを心待ちにしてきましたし、あちこちで起爆剤の一助になればと発言をしてきました。世界中で起こっている不可逆な方向性であることは間違いないですが、進捗の状況は国によってかなり異なります。日本は明らかに出遅れています。微力ながらこの大転換のサポートをしたいと思っています。


第2回
第2回:『有意性検定に未来はあるか』
(公開:2021年2月9日(火) 公開終了:2022年2月9日(水))

アメリカ統計学会(ASA)が2016年に有意性検定の誤解と誤用をいましめる声明を発表し、世界の統計ユーザーに衝撃を与えました。ASAは「有意確率pは効果の大きさを表すものではなく、本当に知りたい仮説が正しい確率を測るものではない」と指摘しました。この声明の意味を解題し、マーケティング・リサーチャーが今後どう検定に対応すべきかを提言します。

第2回の資料はこちら

講師のご紹介
朝野煕彦  東京都立大学/専修大学元教授

「スズキ」さん)検定が有効に使える、適切なサンプル数というのは示せるのでしょうか。前半の数値例のように、検定は数十から数百人規模のデータに適した方法のように思われます。なぜ、そのような検定が作られたのでしょうか。
(朝野)歴史的に、せいぜい数十の区画にしか種が撒けなかった農事試験の分析法として、推測統計学が開発されたからです。近代の統計学は農事試験所で生まれました。

(匿名希望さん)原データは正規分布に従う必要があるのでしょうか。平均値の差の検定をするには、調査データが正規分布しなければならないと先生は言っておられるのですか?
(朝野)そのような制約はありません。ただし、確率分布が正規分布する必要はありませんが、実験群は実験群で、ある一定の確率分布に従ってデータが発生しなければなりません。統制群は別の確率分布で構いませんが、統制群の中でデータは同一の確率分布に従わなければ、検定の前提を満たしません。今回ご紹介した例では、同じ条件に該当するモニターが同一の状況を経て測定値を生み出しているので、同一の確率分布に従うとみなしたのです。

(匿名希望さん)モンテカルロ法では、どんな確率分布に従う乱数でも発生させることができるのでしょうか。自分が持っている統計ソフトには、正規分布と一様分布の乱数だけしかないのですが。
(朝野)MCMC(マルコフ連鎖モンテカルロ法)を使えばできます。詳しく説明するにはスペースが足りませんので、まずはネットで検索してみてください。

(「初心者」さん)ベイズ統計学の予測分布を使えば、仮説が正しい真の確率が分かるのでしょうか?
(朝野)ベイズ統計学であっても、普遍的な真実を知ることはできません。結論が調査データに依存するのは、伝統的な推測統計学と変わりません。

(匿名希望さん)なぜ、これまで仮説検定への誤解を誰も教えてくれなかったのでしょうか。統計教育に問題があったのでしょうか。
(朝野)理由はいくつもあったと思います。統計学の研究者にとって、利用者が検定をどう理解しているかは研究上の重要なテーマには入らなかったためではないでしょうか。

(「統計学徒」さん)①失礼な言い方になってしまいますが、「しょせん、統計分析を使っても厳密なことは分からない」と心得ておけば、今回の指摘はさほど気にするような問題ではないと思いますが?
(朝野)誤解をしたままでは、時間が経っても気にしないでよい状態にはならないと思います。

(「統計学徒」さん)②今回、先生は「仮説が正しい比率」という言葉を使いましたが、ふつうは「確率」と言いませんか?
(朝野)ベイズ統計学でも、事後確率とか予測分布の確率といいます。シミュレーションしたデータで集計した結果は厳密にいえば比率であって、数学的な確率ではないので、乱数を発生するつど結果が変わります。けれども、気にするほど結果が違うかといえば、乱数の数が多くなると実質的にはほぼ同じです。あまり神経質にならなければ、確率と呼んで構わないと思います。 

(「村人B」さん)推測統計では、グループについて何を前提にしているのでしょうか。
(朝野)母集団と標本抽出を、推測統計学ではどうとらえているかという重要な疑問です。この本質に触れずに、検定の手続きだけを書いている統計ガイドが多いように思います。ぜひ最終回で議論したいテーマです。

(「村人B」さん)対立仮説をたてて検定すれば、何も問題はないように思うのですが。
(朝野)ネイマン・ピアソン流の対立仮説を具体化する自然な方法がありません。対立仮説は一見もっともらしいのですが、空理空論だったのでしょう。「H0:等しい」が帰無仮説だったとして、では調査をする前に「H1(対立仮説)」はいくつの差がよいのかを一意に決められるでしょうか? むしろモンテカルロ法などのシミュレーションで、事後的にさまざまな効果が出現する割合を出す方が実際的だと思います。

(「初心者」さん)今回のキャストで紹介された平均値の差の検定は、検定法のごく一部なのではないでしょうか。他の検定法にも指摘されたのと同じ欠陥があるのでしょうか。
(朝野)検定には順序データやカテゴリーデータのためのノンパラメトリック検定という一群の方法がありますし、数量的なデータを検定する場面でもグループ数が1つか2つか多数かの場合、さらにデータ数の違いによっても方法が異なります。検定論は各手続きによって論理が一貫しない雑然とした方法群になっています。それぞれの検定が成り立つ前提条件が違いますし、限界も異なります。今回、説明としてあげた平均値の差の検定は、市場調査の分野でよく使われてきた方法ですので、取り上げました。

((匿名希望さん)朝野先生は棄却水準とか危険率という表現に否定的なのでしょうか。
(朝野)棄却水準あるいは危険率の設定には、科学的・客観的な根拠がありません。p値だけを報告して、そこから先は意思決定者に判断を任せるというのが近年の流儀です。p=0.154をどう理解するかは、エンドユーザーに任せるという意味です。「有意vs有意でない」では2値の情報しかありませんから、p値の方が情報が多いとは言えますね。

(「素朴な疑問」さん)検定の解釈の間違いはどうして発生し、定着してしまったのでしょうか。
(朝野)「高度に有意であることが、効果が大きいことの証拠になる」という誤解そのものがユーザーにとって都合がよい誤解だったために、検定の利用が増えて社会的に定着してきたのでしょうね。


 

第1回
第1回:『調査は既存の調査結果を今日の決定に活かしているか』~ベイズ統計学による過去と現在の融合

(公開:2021年1月26日(火) 公開終了:2022年1月26日(水) )

マーケティング・リサーチは、過去の調査から得られた知識を今日の決定にどう活かしているでしょうか? とりわけ新しいデータがごく僅かで、それだけで意思決定をするには心細い場合にどうすればよいのでしょうか? ・・・ というのが今回の論点です。
そこで、ベイズ統計学の応用例としてスパムメールのフィルタリング事例をご紹介します。過去の知識を取り込む思想が従来の調査とは異なっていますので、皆さんの業務にとって参考になるかどうか、ぜひ考えていただければと思います。

第1回の資料はこちら

講師のご紹介
朝野煕彦  東京都立大学/専修大学元教授

意見(田村 覚さん)
経験上、定期的に行っている調査(例えば年4回)の結果を分析する際、最新調査のデータのみを使って分析することが多く、過去と現在のデータを融合できていないケースが多い。
過去と現在の分析結果の比較に留まらず、データ自体を融合することで更に精度の高い分析につながる余地はありそうだ。
スパムメールの事例を参考に、自社の調査に活用できないか検討していきたい。

(匿名希望さん)過去の知識の更新が行われるタイミングは、フィルタリングの前ですか後ですか?
(朝野)フィルターを通過して受信されたメールにユーザーが反応して、初めてメールの分類が決まるわけですから、知識の更新はフィルタリングの後、ということになります。

(「初心者」さん)1回限りのアドホック調査であっても、企業(調査会社)は原データを保管していると思います。なぜ、調査が終わっても原データを保管するのでしょうか?
(一ノ瀬)①その調査時点では1回限りと想定されたとしても、将来的に見直しが入ったり再調査や再集計がかかる可能性があり、また参考値として生きるかもしれませんので、全ての調査結果を保管またはデータベース化している調査会社が多いと思われます。クライアント側でも同様です。その際、容易に検索ができるようにインデックスやタグ付けが行われていることが望まれます。 ②JIS Y (ISO) 20252でも、「4.1.3.2 調査プロジェクト活動の記録」で「プロジェクトの追跡及び再現を可能とするために」、プロジェクトの記録は1次記録(調査原票など)12か月間、それ以外は24か月間の保存が義務づけられています。 ③付随的に、会計監査に備えた証拠記録として保存される側面もあります。

(匿名希望さん)フィルタリングの場合で結構ですが、過去の知識と目の前のメールの、どちらがより重要なのでしょうか?
(朝野)両方を使わなければ判定できないので、どちらも欠かせません。ただし、知識が個々のメールで大きく更新されることはないので、フィルタリングにおいては過去の知識に重みがあるといえるでしょう。