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開催レポート 著者が語るシリーズ2024_第1回(2024.8.29)
内田和成氏
「AIに代替されない自分になるために。ベストセラー『仮説思考』『論点思考』『右脳思考』3部作の著者が送る「アウトプットから始める知的生産の技術」」

ほんぶん

JMRA・広報セミナー委員会
多様なるマーケティング・リサーチの新潮流に触れる著者が語るシリーズ2024
第1回2024年8月29日 開催レポート

日本インフォメーション株式会社 斎藤啓太


JMRA・広報セミナー委員会 多様なるマーケティング・リサーチの新潮流に触れる著者が語るシリーズ2024

本年度セミナーの第1回は、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG) 日本代表を務め、2006年度には「世界の有力コンサルタント、トップ25人」に選出された早稲田大学名誉教授、東京女子大学特別客員教授の内田和成氏にご登壇いただき、オンラインにて開催いたしました。

講演では、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)を中心に活躍されてきた内田氏より、クライアントに価値あるアウトプットを生み出すための情報収集の方法や思考についてお話いただきました。AIが進化し、活用が進む現代では、どう頑張っても人間がAIに情報収集力で勝つことはできません。そのため、アウトプットの質を高めるには、インプットの質を意識した情報収集が重要だと説きました。

内田氏は、ご自身の近著である「アウトプット思考 1の情報から10の答えを導き出すプロの技術」の内容を基に、人とは違う視点を持つために必要なこととして、「一次情報・アナログ情報を大切にする」「キョロキョロする好奇心を持つ」「問題意識を持って引き出しを増やしていく」ことを挙げられました。また、1のインプットで10のアウトプットを出すためには、まずアウトプットのイメージを持ち、そのために必要な情報のみを収集し、少ない情報で仮説を立てて検証するプロセスを数多くこなすことが重要と解説されました。

特に印象的だったのが、内田氏の「作業を仕事と勘違いしていませんか?」という言葉です。作業はあくまで目的達成のための手段であり、「AIや安い労働力に代替されるもの」と話され、ドキッとしたリサーチャーは多いのではないでしょうか?クライアントから「提言・示唆を出して」と言われながら、膨大なデータを前にしてグラフ作成やコメント付与など報告書の体裁を整える段階で息切れし、「さあ要約と提言を!」と思った時には納品日まであとわずか。何とか作成したものの思慮不足が否めず、クライアントに十分満足いただけなかったといったような経験はありがちかと思います。

そのような状況に陥らないためにも、相手の求めている情報は何か?期待される役割はどんなものか?から逆算してインプットしていくことが重要です。そのためには発想を逆転して、アウトプット←インプットから入るアプローチが重要だと説かれました。

また、多くの人は、情報が多ければ多いほど良いと誤解していることが問題で、意思決定する場合、「情報とはマイナスのエントロピーである」と話されました。大量のグラフを作成して論点が定まらない分析をするよりも、仮説や調査課題に対してストーリーが構築された数枚のサマリーが重宝されることとも似ているなと感じました。リサーチャーには、期待されるアウトプットから逆算して、不必要な情報を削除する眼力が求められるでしょう。

参加者からは、さまざまな角度からの質問があり、内田氏の思考への興味関心の高さが窺えました。

私たちリサーチャーの仕事の多くは、地道な積み重ねが求められます。特に繁忙期には、目の前の案件推進が作業になりがちです。しかしJMRAによりインサイト産業として再定義された私たちリサーチャーに、クライアントが期待する役割は、生活者のインサイトを探索し、それを価値ある情報に変換して企業のイノベーション創出を支援することです。この役割を果たすことが、私たちの使命だと感じています。今回の講演は、AI時代にリサーチャーが持つべき思考法についてヒントを得られる良い機会をいただけたように思います。

エディタV2

2024年9月20日掲載