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第4部 インサイトのインパクトを最適化する
第35章 業務プロセスと意思決定を尊重する

JMRAインターネット調査品質委員
リサーチ・コンサルタント
岸田 典子


この第4部「インサイトのインパクトを最適化する」では、インサイトのポジショニングによって影響力を最適化するために可能な3つの方法について考えてきた。私たちの願いと一致するブランドを開発すること、インサイトの認知を高めること、そして、私たちとの協働経験によって生み出された評判が悪ければ、ブランドと認知度の双方がいかにダメージを受けるかを見てきた。

しかし、バイロン・シャープのマーケティング効果に関する優れた研究は、多くの消費者の意思決定を後押しするのは、物理的な可用性、単にあなたがそれをほしい時にそこにあれば買うということであると思い出させてくれる。それは、組織内のインサイトにも当てはまる。シニア・エグゼクティブは、その時点で必要なサポートやアドバイスが得られるかどうかに関係なく、意思決定を行う。彼らには彼らなりの時間の尺度があり、企業には企業なりのどのように行うかの業務プロセスと意思決定がある。厳しい現実として、目の前にインサイトがあり、それが適切なタイミングで付加価値を生むと思われる場合には、インサイトを取り入れることが多い。しかし、そうでない場合は、それとは関係なく話を進め、その日の終わりにインサイト・チームに事実や数字の確認を求めてくるだけかもしれない。その頃には、私たちがその問題に否定的であるかのようには見えず、主要な議論に影響を与えるには遅すぎることが多い。

つまり、インサイト・チームの地位を向上させる4つ目の方法は、内部に集中するのをやめて、外に目を向けることだ。会社業務プロセスと意思決定に慣れてから、インサイトが意思決定にいつ、どこで、どのように介入できるかを理解しよう。

どの業務プロセスを考慮すべきか?

最初のステップは、組織内で行われている最も重要なビジネス上の意思決定を特定し、それ関連するプロセスを調べることだ。事業計画サイクル、売上報告サイクル、予算策定サイクル、主要な委員会がいつ開催されるかによって推進される活動プログラムがあるだろう。またこれと並行して、新しい経営情報が入手可能になる日や、提出が必要になる日があるだろう。

あなたの会社の業務プロセスと意思決定はどうなっているだろうか。正式な業務プロセスは何だろうか。それは変更不可能なものなのだろうか、それとも事業再編のたびに変更されるものなのだろうか。あなたの組織は意思決定の方法に関して、正式なプロセスが十分に開発されているだろうか、それともはるかに非公式で、混沌としているだろうか。さらに認識することが重要かもしれないのは、非公式なプロセスやネットワークを考慮することだ。第12章で見たように、上級意思決定者の世界をよく理解すればするほど、彼らが私たちに何を求めているかを理解できる。IMA(元小売業ハルフォーズ)のエマ・ジョーンズは、私たちは次のように考えるべきだと言う。

a) どのような大きな決断が下されるのか 
b) 誰がこれらの決定を下すのか
c) どのくらいの頻度でこれらの決定がなされるのか
d) どこで大きな決断が下されるのか

どの組織も、どのように意思決定を行っているかはそれぞれ異なるだろうが、特に同じ業界で事業を展開している企業には共通点がある。

  • 事業計画:小売業では、多くの場合、年次計画プロセスを持っており、財務計画の前に取引計画がある。優れたケースでは、財務計画の前に顧客計画がある。ジョン・ルイス&パートナーズ傘下のスーパーマーケット、ウェイトローズでは、インサイト・チームが毎年、顧客計画の策定に非常に大きな労力を費やしているが、それは会社の事業計画のための年に一度の機会と捉えている。
  • 新製品開発プロセス(NPD):FMCGの世界では特に、多くのインサイト・チームが新製品開発サイクルの中で認知された地位を確保しようとしており、分析や調査を重要な段階での意思決定に反映させている。ある企業では、チョコレートメーカーのソントンズ社(現在はフェレロ・グループの一部)が、新製品開発プロセスにおいて相談されるのが遅すぎることが多いことに気づき、製品への資金調達が合意される前に、インサイト・チームが、製品アイデアが十分な市場規模を確保できるかどうかをハイレベルで確認することを義務づける「ゲート0」という新しい段階をプロセスに含めるよう主張した。
  • マーケティング・プランニング:インサイト・チームのもうひとつの典型的な役割は、マーケティング・プランニング・プロセスにおいて、アナリストが顧客セグメントを特定し、リサーチャーが顧客ニーズを調査することである。市場調査は、戦略的なブランドプランニングと、より戦術的な広告展開の両方に関与することが多い。インサイト・チームの中には、さらに踏み込んで、ダイレクトメールやEメールのターゲットを特定する重要な役割を担っているところもある。それは基本的には悪いことではないが、インサイト・チームがCRMやダイレクト・マーケティング活動と同義になってしまうと、戦略的な意思決定に十分な注意が払われなくなる。戦術的・業務的な活動に責任を持ちすぎると、インサイトアナリストではなくデータアナリストを採用することになり、インサイトという言葉自体が、重要な戦略的意思決定を推進するのではなく、データに基づく業務の略語になってしまう。

では、どの方法が最も重要なのだろうか? その答えは必然的に、インサイト・チームの現在のポジションと、あなたが目指すポジション次第だということになる。しかし、10年前、シドニーで開催されたカンファレンスで講演した際、私は、もし方法を1つだけ選ぶことができるとしたら、それは最後の方法、つまり、組織の意思決定プロセスを理解することと述べた。その後何年か経ってから、私たちはIMAの2つのインサイト・フォーラムで投票を行った。ロンドンではIMAメンバーも「プロセス」に投票したが、マンチェスターでは「評判」が支持された。

 

成功するインサイト・チームの35番目の秘訣は、組織の主要な業務プロセスにおける役割を改善すること である。

重要ポイント:
  1. 最初の3つの方法は、インサイト・チームのブランド、認知度、評判に焦点を当て、4つ目は組織全体に焦点を当てている。
  2. インサイトは、組織がまず自分たちの市場に焦点を当てるよう奨励している。同様に、インサイトチームは、自分たちの市場である「組織」に焦点を当てるのだ。
  3. どの企業にも独自の業務プロセスと意思決定があるが、多くの場合、同じ事業分野では類似していることが多い。
  4. 目的は、インサイトがデフォルトの選択肢として協議されることだ。プロジェクトごとにインサイト・チームの参加を主張するよりもはるかに容易だ。
  5. 社内に確立した業務プロセスがほとんどない場合は、重要な段階でインサイトが関与するようなプロセスを構築するのがベストプラクティスである。

 

エディタV2

インサイトのポジショニングについては第41章で触れるが、その前に「インパクトの最適化」のもう一つの側面を見ておく必要がある。それは営利性であり、もしあなたが非営利組織で働いていると考えている場合は、財務や事業目標との整合性だ。


2024.02.20掲載


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