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APRCカンファレンス 2025:JMRA 50周年イベントと併催
- 世界に目を向け、アジアと共に発展する業界を目指そう! -

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ESOMAR GMR日本アンバサダー 一ノ瀬 裕幸


JMRA創立50周年記念カンファレンス(10/2開催)まで、残り3ヵ月余となりました。本メルマガでもこれから特集記事を組んでいきますが、今回は併催されるAPRCカンファレンス2025についてご紹介します。アジア太平洋地域のリサーチャーも多数参加される見込みですので、絶好の国際交流の機会としていただきたいと思います。

1.APRCとは?

あまりなじみのない方も多いと思われますが、APRC(Asia Pacific Research Committee)は、アジア太平洋地域における市場調査協会間の国際的な連携を推進するための組織です。現在の会長には、JMRAを代表して細川慎一氏(GMOリサーチ&AI)が就任しています。
2009年4月に日本(JMRA)、中国(CMRA)、韓国(KORA)、豪州(TRS)の4カ国の市場調査協会が結集して設立され、その後、タイ、台湾、マレーシア、ニュージーランド、モンゴルが加わり、現在では9カ国で構成されています。主たる目的は、当該地域における市場調査の品質向上、相互理解の促進、国際協力の強化です。
APRCカンファレンスは加盟協会が持ち回りで開催する年次国際会議で、各協会に所属する調査会社やリサーチャー向けに、最新トレンドやケーススタディを共有してきました。今年はJMRAの創立50周年に合わせ、日本がホスト国になった次第です。従来も、各国協会の「○○周年」を共に祝う機会を兼ねてきています。

2.APRCとESOMAR/GRBNとの関係

本メルマガ読者の皆さんは、世界130カ国以上に会員を擁するESOMARのことはご存知だと思います。APRCはESOMARの下部組織ではなく、逆にESOMARをオブザーバーとして迎え入れ、連携しながら国際的な諸課題への対応にあたっています。また、欧州(EFAMRO)、南北アメリカ(ARIA)、アフリカ(AMRA)の各地域団体と連携し、GRBNという国際組織を結成することで、個人または法人単位で組織化されているESOMARを補完し、主にEU当局に対してロビー活動*を展開する関係にあります。ESOMARから発信される各種ガイドラインが、実は「ESOMAR/GRBN発行」となっていることに合点がいった方も多いのではないでしょうか。
* 日本では「ロビー活動」という言葉のイメージがあまりよくないかも知れませんが、「陳情または政策提言活動」とご理解ください。

ESOMARは80年近い歴史を有し、国際商業会議所(ICC)との協業をはじめとする国際経済活動における重要な業界団体ではありますが、やはり個人および企業単位の集合体であるのに対し、五大陸の各国を代表する組織で構成されたAPRCやGRBNのような団体が加わることで、「ESOMAR/GRBNのガイドライン」に重みを持たせていることは評価されるべきと考えます。

余談になりますが、APRCが設立された2009年当時、ESOMARのメンバーや活動はやはり欧米が中心で、アジア地域の市場調査関係者の声を集約または代表する場としては不十分でした。当時の諸先輩方がESOMARにケンカを売ろうとしたわけではないと思いますが、アジア太平洋地域ならではの課題を共有し、交流の場を作ろうとした問題意識はよくわかる気がいたします。また、当時は加盟各国協会間で、相互に会員社や業務を紹介しあうことも活発に行われたと聞いています。

現在では、国境をまたぐ多国間調査プロジェクトも一般化し、情報流通も時差なく活性化することで、欧州のGDPRをはじめとした個人情報保護法制に関する情報交換などが活動の柱となりましたが、対面およびオンラインでの交流の場を維持することも大きな存在意義となっています。

コラム: インドはアジアではない?
「インドはAPRCに入っていないの?」という疑問を持たれた方がおられると思います。インドの市場調査協会(MRSI)も、歴史のある大きな組織です。過去に何度も加盟を働きかけたらしいのですが、曰く「インドはインドだよ。私たちはアジアじゃないから」と、にべもないそうです。ESOMAR大会には多数のインド人が参加しているのですが、彼らにはアジアの一員という意識はないようですね。


3.日本の未来はアジアとともに

さて、世界はコロナ禍を脱したものの、地政学的混乱や貿易摩擦といった激変の波に引き続き翻弄されています。しかしそうした中にあって、いよいよアジアの時代が本格的に到来しています。世界の経済成長の重心は、今や欧米からアジア太平洋地域へと確実にシフトしており、消費市場としてもイノベーションの舞台としても、その存在感は日増しに高まっています。とりわけ、人口減少が加速する日本にとって、地理的にも文化的にも近接するアジアとの連携強化は、これからの未来を切り拓く鍵になると思われます。

市場調査業界においても、この流れは顕著です。昨年までのESOMARの国際統計によれば、欧州の市場規模はほぼ横ばいで、北米では従来型の市場調査領域から新たなセグメントへの移行が急速に進んでいます。その一方、アジア諸国では堅調な伸びが見られ、地域内での受発注の増加も確認されています。詳細は9月に発表される2024年調査の結果を踏まえて改めて論じたいと思いますが、アジア各国のプレゼンスが高まりを見せていることは疑いようもなく、多様性と潜在力に満ちたこの地域こそが、新たな成長の源泉として期待されているのです。 しかし、にもかかわらず、日本発着のアウトバウンド/インバウンド調査市場には、依然として伸びが見られません。追って公表されるJMRAの「第50回経営業務実態調査」によれば、全体としては前年比105%程度の成長を記録しているものの、海外売上高や受注高に限るとマイナス成長となったようです。海外事業を手がける会員社がさほど多くなく、年度によって数値のブレも大きいと思われますが、大局的にみて日本の調査業界が世界の潮流に乗り切れていない現状がうかがえます。

JMRAが創立50周年の節目を迎える今年、アジア太平洋の仲間たちとともにAPRCカンファレンスを開催できることは、まさに時宜を得た国際協働の機会と思います。生成AIの活用などは、まさしく世界同時進行の課題となっています。日本の調査業界はこれまで、正確さや誠実さを重んじて独自の信頼を築いてきましたが、今後はその強みを活かしながら、アジア諸国との協働をよりいっそう進めていくことが求められていると思います。相互理解を深め、課題や知見を共有し合うことにより、単なる「受発注の関係」を超えた、真のパートナーシップが育まれ、次代の成長が紡がれていくことでしょう。

4.JMRA 50周年イベントと併催されるAPRCカンファレンス2025

10月2日のカンファレンスでは、公益社団法人 日本マーケティング協会(JMA)の恩蔵直人 理事長(早稲田大学教授)をお招きすることをはじめ、当業界の次の50年を展望した新産業ビジョンの発表などに続き、3つのトラックに分かれたコンテンツが企画されています。その中にAPRCトラックを設け、海外のスピーカーにも登壇していただく予定です。 すでに、以下のような発表者とタイトルが確定しています(詳細は順次、本メルマガ等で公表してまいります)。国際的なデータ品質向上や生成AI活用に関する取り組みは、JMRAの委員会企画とも連動させることになっていまして、世界と日本の状況を見比べることが可能になると期待されています。

  • グローバル・データ品質の取組み
    - Debrah Harding氏 (英国MRS事務局長, GRBN会長)
  • Original voice : Nothing is more important in an AI world -
    - Dave McCaughan氏 (タイ・TMRS副会長)
  • 中国最大のEC(JD.com) による市場調査のAI革命
    - Huang Jia氏(中国・京東商城 JD.com)

※)なお、急速に進展するAIの力を活用し、当日は同時翻訳字幕を投影する予定です。

アジアの仲間とともに未来を描く。そのために、まずは10月2日、会場でアジア各国のリサーチャーと語り合ってみませんか? 日本からの積極的な参加と発信が、次の50年を動かす力になることを信じてやみません。

以上


2025.06.17