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ほんぶん

JMRAマーケティング・リサーチ綱領
改訂にあたって

マーケティング・リサーチ産業VISION策定委員会
綱領および規程類アップデートチーム(チーム3)


2025年9月26日臨時総会において、JMRAマーケティング・リサーチ綱領が改訂されました。本稿では、10月2日の「JMRA アニュアル・カンファレンス 2025」の中でもご紹介しました主な変更点とその背景について改めてお伝えするとともに、カンファレンスではご紹介できなかったプロセス等の内容もご紹介できればと思います。

[1] 改訂に至るプロセス

今回の改訂は、2024年11月に、「JMRAマーケティング・リサーチ産業VISION策定委員会」にチーム3「綱領および規程類アップデートチーム」が発足し、スタートしました。
以降、以下のような工程を経ております。

2024年11月~2025年7月

  • 綱領改訂に向けた各種検討の実施(内容、工程等)
  • 他の規程類の洗い出しと内容把握
  • 改訂素案の作成

2025年7月

  • 理事会、コンプライアンス委員会、MR産業ビジョン策定委員会での意見募集

2025年8月

  • 総務委員会での説明
  • パブリックコメントの実施(8/19~8/25)
  • 最終改訂案の策定

2025年9月

  • 臨時理事会で承認(9日)
  • 臨時総会で承認、施行、公表(26日)

2025年10月

  • JMRA アニュアル・カンファレンス2025にて説明(2日)
[2] 改訂の理由・背景

改めてご紹介しますと、マーケティング・リサーチ綱領は、リサーチに携わるすべての人々が社会的信頼を維持し、倫理的かつ専門的な行動を実践するための自己規制の枠組みです。今回の改訂は、産業ビジョンが変更され、我々の産業が拡大していくことを綱領面から下支えしようとするものであり、また直近の社会的・技術的変化にも対応しています。主なポイントは以下のとおりです。

  • 新産業ビジョンに基づき、従来の調査業界以外からの新規加盟社も想定し、分かりやすい内容に刷新
  • 生成AIや画像解析など、高度な情報技術の導入に伴う新たな法的・倫理的要求への対
  • ESOMAR国際綱領が改訂されたため、その内容を一部反映
[3] 主な変更点のご説明
  1. インサイト産業への拡張と周辺業種の加入への対応
    誰がこの綱領を守る必要があるのか、その適用範囲を明確にするとともに、リサーチの定義を拡張し、「データに基づくインサイト導出も含む」ことを明確にしました。この変更は、今回の綱領改訂の象徴的な箇所ということができます。
    また、変更前の綱領の記述も踏まえながら、ESOMAR国際綱領の内容も参照し、基本原則の再整理を行いました。具体的には、「適法・公正、透明性、誠実さ」、「調査対象者の保護」、「個人情報の保護」、「倫理的行動」、「調査に対する責任」として構成しています。
    その他、新規加盟社を想定し、プロモーション活動等、個人に向けて調査以外の活動を行う場合は、対象者にそれが調査であると誤認させてはならないこと、本綱領自体の啓発普及を進めることを、より明確にしております。綱領の啓発普及は当協会定款第4条(事業)の筆頭項目に上がっている重要な要素です。
  2. リサーチプロセスの分業化・内製化への対応
    リサーチプロセスの分業化・内製化に対応して、「リサーチャー」「クライアント」の定義を明確化し、リサーチの企画・設計や実施に関わる限りクライアントもリサーチャーとしての義務を負うことなど、役割に応じた責任を整理しました。なお、この項目については内容をわかりやすくするために記載を変更しましたが、従前の綱領の内容から変更はありません。
  3. AI等の高度な技術利用への対応
    マーケティング・リサーチに生成AIを利用する場合、学習に使われた情報の作成者の知的財産権を尊重し、侵害しないことを明確にするために追記を行いました。生成AIの利用も含め具体的な対応方法は事案により異なると考えますので、クライアントとの契約書その他の個別の条件を確認し、適切に判断してください。
    また、新たにAI等の利用に関する条項を設け、公平性・説明責任・データ改ざん禁止といったことを規定しました。ご承知のとおりAIは進化のスピードが速く、現時点で具体的な制限を置くと自由な活用の足枷になりかねないことから、どのように定めを置くべきかかなり議論がありましたが、まずはマーケティング・リサーチにおいて普遍的な禁止態様について記載することとなりました。必要に応じ、今後この条項は改訂・追加等がありうると考えています。
  4. 関連法令との整合への対応
    対象者の回答に依らない“受動的データ収集”について、定点カメラによるデータ収集などを念頭に、事前に対象者の同意が取得できない場合に実施すべき代替手段を明確化しました。
    また、AI等を利用した高度なデータ処理技術によって、調査データから対象者の身元が追跡され、特定されることのないよう注意喚起する文言を追記しました。
[4] その他綱領改訂関連のお知らせ
  1. パブリックコメント回答一覧の公開(11月14日)
    8月に実施したパブリックコメントにおいて会員の皆様からお寄せいただいたご意見とそれに対する回答を公開させていただきました。
    【JMRA】新産業ビジョン策定に伴うマーケティング・リサーチ綱領の改訂に関する意⾒募集寄せられた意⾒及び回答⼀覧表
  2. 綱領解説編の作成・公開
    個別の条項についての説明を記載した解説編を現在作成中です。完成しましたら追って公開いたしますので、そちらもご参照ください。
  3. 綱領以外の規程類の見直し
    新産業ビジョンに基づく周辺業界企業の新規加入を想定し、入会資格など関連規程類の見直しを行っています。
[5] 皆様とともに綱領も歩む

これからの我々の産業の新たな時代を切り拓くためには、私たち会員社の一人ひとりの知恵と力が不可欠です。その際、新たな産業ビジョンと綱領は、私たちの羅針盤となるものだと期待しています。社会にとって、未来にとってかけがえのない価値を持つ我々の仕事を、誇りを持って共に進化させ、前進させていきましょう。
それにあたっては、綱領の改訂内容については十分にご理解いただき、日々の業務にご活用いただけますようお願い申し上げます。

[6] 最後に

改訂に際し、多くの皆様にご協力・ご支援を賜りました。
五十嵐会長をはじめ各理事の皆様、和田事務局長をはじめJMRA事務局の皆様、産業ビジョン策定委員会・コンプライアンス委員会の皆様、当協会の監事である弁護士の鈴木先生、パブリックコメントでご意見を寄せてくださった皆様、その他ご協力いただいた皆様に深く感謝いたします。
また、案の作成・検討・調整に尽力いただいたチーム3のメンバー、株式会社インテージ吉田様、JMRA菊池様、誠にありがとうございました。また、各回のミーティングにご参加いただき、多大なご支援をいただきましたコンプライアンス委員会野口様にも厚く御礼申し上げます。

2025.12.16掲載

りんく