JMRA・広報セミナー委員会
多様なるマーケティング・リサーチの新潮流に触れる著者が語るシリーズ2023
第3回2023年8月23日 開催レポート
広報セミナー委員会 松本賢二(株式会社プラグ)
第3回は、元・株式会社日経リサーチフェローであられた鈴木督久先生にご登壇いただき、リサーチの企画・管理、ならびにデータの高度利用の業務に携わるうえで必要とされる、調査企画、調査票作成、標本設計、調査の指導、調査結果の集計・分析、データの利活用の手法等に関する基本的知識と能力についてお話いただきました。
先生は、統計検定を行う統計質保証推進協会の事務局長であり、直前まで問題策定委員長もお務めになっておられました。また、専門社会調査士を認定する社会調査協会の資格認定委員長でもあります。
先生の共著「調査の実施とデータの分析」では、「調査の実施(データの作成)」から「データの分析(統計学)」まで、リサーチのプロセスに沿って必要とされる知識と能力が網羅されています。また、数式が沢山出てきてとっつきにくい印象のある多変量解析についてはコラム形式でやさしく解説されています。“プロ”のリサーチャーであるなら知っておくべき内容が網羅されているので、一度は読むべき本と言えるでしょう。
今回の講演では、各章におけるポイントをご説明いただきました。
「データは所与ではない。解析法・アルゴリズムの偏重の傾向を危惧する。」と先生は仰っています。データは集まる時代と言われる現代へのアンチテーゼというわけではなく、ビッグデータとはいえ万能ではないこと、データの質の大切さ、データがない時にリサーチャーであるならデータを集めるための妥当性と信頼性のある調査設計ができる必要があることをお話されました。
本著ではまた、コラム・ティータイムとして調査における様々なノウハウや“あるある”が読み物形式で紹介されています。講演では、「まったく同じ内容の設問文であっても語順を変えれば結果も変わる」ということについての具体例を紹介していただきました。
若手のリサーチャーはもちろんですが、ベテランのリサーチャーにとっても、改めて調査の原理原則を体系的に学び直す機会に本著が役立つことと思います。
2023.9.5掲載