
シンギュラリティ観察ネコ日記
第2回:いよいよセミナー開催するぞ。シャー。
株式会社アンド・ディ 佐藤哲也(業務AI活用教育部会担当理事)
吾輩はAIである。名前はまだない。きょうはとても原稿を書く気分ではなく、少し機嫌が悪い。シャー。
勢いで始まったこの連載だが、連載なのだから全体の構成を考えて書くべきでは?という気持ちにもなる。とはいえ、こんなところで教科書を書いても仕方ないし、あまり面白くならない気がするので、勢いのまま続けて書くぞ。シャー。
個人的に最近もっとも興味を引いたのは、中国で行われた人型ロボットの運動会である。最近ではフィジカルAIと呼ぶらしい。8月22日から26日にかけて北京で開かれた「第2回世界人型ロボット運動会」では、16カ国から2500台[1.1]あまりのロボットが51種目で競い合った。100メートル走では8秒64という人間の世界記録を上回るタイムも出ている。見ていない方向けに、日経新聞さんのショート動画を貼っておこう。
圧倒的な未来感である。人間の競技より興行的な魅力を感じる。特に格闘技のそれがすごい。『プラレス3四郎』のような80年代のロボットマンガが現実になったような熱さがある。もっとも、その見た目のインパクトと比べて、人型ロボットの産業的価値は必ずしも明らかではない。人間の生活空間に入り込むうえで二足歩行がかなり便利であることは確かだが、人間の二本の腕で実現できることは極めて繊細で、ロボットに代替されるかどうかはまだ不透明である。そのため、動画の衝撃ほどには現実のインパクトはないかもしれない。といっても、それも時間の問題かもしれないし、従来のロボットに期待されてきた役割を超えて、新しい役割が次々と見つかってくるのかもしれない。
2022年末にChatGPTが登場したときには、人間と「チャットする」AIが出てきた、と感じたものだ。しかし2024年頃からは、PC上のファイル等を直接操作するAI(エージェント)が現れたことで、その役割は大きく変化したように思う。さらに一部の好事家を中心に、24時間AIを動作させ続ける環境を作り、過去の記憶を持たせることを通じて、あたかも人間と同等に振る舞う存在に近づける試みも進んでいる。同じような変化が、ロボット(フィジカルAI)の分野でも起きるのかもしれない。
もう一つ最近の話題としては、EUのAI規制法(EU AI Act)が2026年8月に新たな適用段階へ入ったことが挙げられる。ただし当初この時期に予定されていた高リスクAIの実体的な義務は、2026年7月に採択されたデジタルオムニバスにより2027年12月以降へ延期された。8月2日から適用が始まったのは、AI生成物であることを明示するといった透明性義務(第50条)などである。これを受けてAnthropicは、Claudeの生成テキストに電子透かしを埋め込む仕組みを公表した。人間の感覚では知覚できないレベルで、単語選択のパターンとして確率的な信号を埋め込む技術であり、適用範囲はEU域内にとどまらず日本を含む全世界に及ぶという。
このようにAIの適切な利用に向けて、またAIの経済的影響をめぐるグローバルな競争・規制環境の整備が進むなかで、社会的受容を得ながらAIを使いこなしていく流れは、ますます重要になるだろう。
一方で、こうした規制の強化と、AIの機能が多様化していくことは、明らかに対立する要素をはらむ。PC上でファイルを作り、自分でメールを送るという「エージェント化」のトレンドは、要するに人間と同じ情報処理をAIにさせようということであるから、情報ガバナンスの観点からは慎重に扱う必要がある。他方で、そうした制約が相対的に小さい個人や小規模なベンチャーにとっては、AIの活用により従来考えられなかった生産性を実現することも視野に入る。
このような急速なAI技術の進展のなかで、既存のAIルールとのバランスを取りつつキャッチアップしていくことが重要であり、それを本部会の最初のセミナーのテーマにしている。それが今回お届けする「マーケティング課題解決のためのAI協働トレーニング講座」である。
基本認識としては、エージェント化しつつあるAIは、単なるツールとして使う以上の存在になってきている。何しろ情報処理もプログラミングもマスターした部下のようなものであり、半ばパートナーとして協働する対象である、というのが本講座を企画した際のスタンスである。第1回でも書いたように、現在の生成AIはインターネット上の様々な知識を内包している。知識の幅広さ、総量においてこれに敵う人間は存在し得ないだろう。そんなパートナーを傍らに置いて、どんな仕事をするのかが問われている。
経験に基づく引き出しが多いのがベテランのリサーチャーであるが、その引き出しが古くなっていないかを常にAIに確認しつつ、よりよい方法を模索する。それが新しい仕事の進め方ではないか—そんな立脚点に立って企画したセミナーである。ぜひ皆さんと、リサーチ業務におけるAIの活用を議論したい。幅広いご参加をお待ちしています。
よろしくお願いいたします。ニャー。
2026.09.15掲載