JMRAインターネット調査品質委員
リサーチ・コンサルタント
岸田 典子
世界経済フォーラム（WEF）が2021年3月31日公表した「ジェンダーギャップ（男女格差）リポート」で、日本は156カ国中120位でした。「政治」「経済」「教育」「保健」の4分野の中で、特に「政治」、次いで「経済」の分野での遅れが目立ちます。
G7（先進7カ国）では、11位のドイツがトップ。以下フランス（16位）、英国（23位）、カナダ（24位）、米国（30位）、イタリア（63位）と続き、100位圏内に食い込めなかったのは日本だけでした。
経済分野は117位。男女の収入格差や管理職の割合などで世界平均を下回っています。
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00982/
日本政府は男女共同参画推進を後押ししていますが、日本の女性の間では、男女格差が大問題になっているようにはあまり感じられません。不平等はあるが、それが不幸というわけではない。今の男性と同じ働き方がしたいわけではないと感じている人もいるようです。
リサーチ・インサイト産業の世界的組織であるESOMARでは、このほど2021年カウンシルメンバーの改選があり、世界中のESOMAR会員による投票で新しいメンバーに替わりました。
新しいPresident、Vice Presidentともに女性です。
WIRe WOMEN IN RESEARCH という組織をご存知でしょうか？
https://www.womeninresearch.org/
リサーチ・インサイト業界で働く世界中の女性のための非営利組織です。2021-2022年の新しいESOMAR のPresidentは、WIReの創設者でもあります。WIRe会員は、それぞれの本業のリサーチの仕事の傍ら、会社組織を超えてボランティアベースで活動を行い、北米、ヨーロッパ、オーストラリアに広がっています。この組織はリサーチ・インサイト業界の男女平等の実現を目指し、女性へのメンタリング活動や情報発信、企業の協賛を集めたり、イベントを企画したりとさまざまな活動をしています。カンボジア、ケニア、グァテマラ、スリランカの女性リサーチャーへの奨学金を提供する活動もしています。2018年に行われたJMRAカンファレンスでもWIReの東京支部セッションが開かれました。
リサーチ・インサイト業界の平等に対する意識について、私が強く感じたのは、ESOMAR APACのカンファレンス委員になったときのことです。パネリストの男女構成比、登壇者の地域・出身国、クライアント、リサーチ会社、アカデミックその他のバランスなど、ダイバーシティ（多様性）とインクルーシブ（包摂性）であることに大変気を配っていたのが印象的でした。
ESOMARでは過去カンファレンスのパネルディスカッションでパネリストが男性のみだったとき、「男性だけの意見で決めるのか」と業界の女性たちからSNSで猛反発を受けたことがあります。女性からだけではなく男性からも厳しい意見が出されました。リサーチ・インサイト産業では連携して、このような不平等を絶対に許さないという強い意志を示しています。
日本のリサーチ・インサイト業界はどうでしょうか。
戦後からリサーチの現場のフィールドワークの調査員は主に女性が担ってきました。モデレーターを始め業界には多くの女性のプロフェッショナルがいます。では調査会社の役員や管理職に占める女性比率はどうでしょうか。不平等を感じますか？「こんなものだ」「別に問題ない」と思っている人が多いのでしょうか？
「適任の女性がいないから」という前に、チャンスと教育の機会は平等に開かれているでしょうか。また、女性自身が上昇志向をもつことをためらう風潮がないでしょうか。身近に適切なロールモデルやメンターがいるでしょうか。個別のリサーチ会社を超え、女性たちがもっと交流を広げてメンターを見つけていくことが必要だと思います。
ESOMARの新しいカウンシルメンバーになられた大嶋バニッサさん、これまでWIReで活動されてきた山崎恵理さんと一緒に日本でのWIReの活動の再活性化を計画しています。
まずは、リサーチ・インサイト業界で働く女性たちへのネットワークづくりとメンタリング活動から始める予定です。
今後の日本でのWIReの活動に関心のある人は、吉田朋子・岸田典子までご連絡ください。
吉田 朋子 tomoko.yoshida＊myad.jp
岸田 典子 kishida＊jmra-net.or.jp
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2021.6.10掲載