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タイトル

業界アンケートから見えた
インターネット調査の課題
―調査品質低下の最大要因は「回答負荷」にある

本文

  

インターネット調査品質委員会
山崎 圭一郎


インターネット調査を取り巻く環境は、近年、確実に厳しさを増しています。現場では「予定通りにサンプルが集まらない」「以前より回収が難しい」といった声が、日常的に聞かれるようになりました。
こうした状況にリサーチャーを始め業界関係者の方たちはどのように感じ、対処しているのかについて、JMRAインターネット調査品質委員会では、その実態を把握するため、2025年7月、調査会社および調査依頼企業・団体を対象に、業界アンケートを実施しました。本調査の結果は、2025年JMRA50周年カンファレンスでも一部発表しましたが、現状と課題を整理し、改めて業界全体で考えていきたいと思います。

1.現場で進行する回収難と、業界に広がる危機感

業界アンケートでは、予定通りにサンプル回収できなかった案件が増えていることや、アクティブモニター数の減少、新規モニターが獲得しにくくなっている状況について、強い問題意識が示されました。
サンプル回収が未達時の対応は「調査期間の延長」や「クライアントとの交渉」が中心で、現場負担の増加につながっています。実際、調査運用の負担を感じている層は65.8%に達し、リサーチャー、画面制作担当の負担感はとりわけ高くなっています。
特に調査会社の現場では、回収難がすでに日常的な課題となっており、コストや納期の問題にとどまらず、品質管理体制全体がストレスとなっています。 一方で、回収や運用の最前線に立つ立場と、調査結果を活用する立場とでは、危機感の持ち方には差も見られますが、 インターネット調査の基盤が揺らいでいるという認識自体は、業界内で広く共有されつつあります。 こうした状況は、結果として調査品質の低下につながる懸念をはらんでいます。

2.品質低下の原因は「調査の負担設計」に集中している

では、なぜ調査品質は低下しているのでしょうか。
業界アンケートでは、調査会社・調査依頼企業の双方に対し、「モニターの品質低下につながっている要因」を尋ねました。

その結果、立場を超えて上位に挙げられたのは、次のような項目です。

  • 質問数が多い
  • 真面目に回答しようという意欲の低下
  • 謝礼が安すぎる
  • 調査票が複雑である
  • 巨大マトリクスが多い

一見すると異なる指摘に見えますが、いずれも共通しているのは、モニターが感じる「回答負荷」に直結している点です。

調査品質の低下は、モニター個人の意識や姿勢の問題ではなく、調査設計や運用の積み重ねによって生じている構造的な課題であることが、定量結果から明確に示されています。

3.回答負荷は「気づかないうちに積み上がる」

回答負荷の問題が厄介なのは、一つ一つの判断が、現場では「やむを得ない」「現実的な対応」として受け止められがちな点にあります。

  • もう少し質問を追加したい
  • 定点調査なので設計は変えられない
  • 念のため、この設問も入れておきたい

こうした判断が積み重なることで、結果としてモニターを疲弊させ、短時間回答やストレート回答の増加を招くだけでなく、調査から離脱してしまうモニターを生む要因にもなっていきます。
そしてその影響は、回収の難化や調査品質の低下として現れ、最終的には調査結果の信頼性という形で、クライアント・調査会社双方に跳ね返ってきます。

定量結果だけでなく、自由回答からも同様の問題意識が示されました。
「負荷が高いと分かっていても、要件上どうしても削れない」
「設計を見直したいが、商習慣的に言い出しにくい」
といった声が多く寄せられました。

これらの声は、現場の個々人が問題に気づいていないのではありません。
予算や商習慣といった制約の中で、分かっていても止められない構造のもとで調査が行われている実態を示しています。
その解決には個々の企業の努力だけでなく、業界全体で考えていく必要性や透明性のあるルール作り、共通の品質基準・チェック体制を求める認識が背景にあることを示しています。

4.有効な対策も、すでに共通認識になっている

一方で、「モニター維持のために有効な方法」を尋ねた設問では、次のような対策が上位に挙げられました。

  • 回答負荷に見合った謝礼設計
  • 負荷の大きい質問の見直し
  • 質問数やマトリクスサイズの制限 など

これらは、特定の立場に偏った意見ではなく、業界内で広く共有されている認識です。
つまり、私たちは何を変えるべきかについて、すでに共通認識を持ち始めていると言える状況にあります。
一方で、インターネット調査品質ガイドラインで示されている「モニター負担の軽減」や「適切な調査設計」の考え方が、理解されているにもかかわらず、日々の業務や商習慣の中で十分に実行しきれていないという認識と行動のギャップも見えてきました。

5.「分かっているが変えられない」を超えるために

業界アンケートでは、モニター負荷や調査品質への影響を理解していながらも、商習慣や業務プロセス上の制約から、個別案件や各社の判断だけでは十分な見直しができていないという実態も確認されました。
現在の課題は、「何が原因か」を理解する段階から、「どうすれば業界全体として実行に移せるか」という段階に移っています。
個別案件ごとの判断や、各社それぞれの努力だけでは、この状況を根本的に変えることは難しいのが現実です。だからこそ今、調査品質とモニター体験を守るための共通の判断基準や行動規範が、業界全体で求められています。

JMRAインターネット調査品質委員会では、こうした問題意識を背景に、インターネット調査の持続性を守るための「サステナブル宣言」に向けた検討を進めています。今回の業界アンケートが、現状の困難さを共有するだけでなく、業界として行動に踏み出すための共通理解につながることを期待しています。

詳しくは、こちらからダウンロード可能です。

添付資料: 業界アンケート調査 結果のまとめ 

掲載日:2026年2月17日