● 日本の調査市場は前年比101.8%、実質ではマイナス成長
-AI対応が経営課題として急浮上
Esomar GMR日本アンバサダー 一ノ瀬裕幸
1.従来型調査市場の概況
6月24日、JMRAでは第51回経営業務実態調査結果を公表しました。
報告書はこちら=> https://www.jmra-net.or.jp/activities/trend/investigation/
2025年度の日本の調査市場規模は2,775億円で、前年比101.8%でした。2025年の消費者物価上昇率は、総務省統計局の全国CPI総合指数ベース(≒ IMF等の国際統計で用いられるCPIベースのインフレ率)で前年比+3.2%でしたので、残念ながら実質98.6%(1.4%減)となりました。2024年度が105.1%(実質+2.4%)であったことに比べれば、足踏みの年であったと言えるでしょう。
実は、正式な統計表にはまとまっていないものの、「2024年にあった大型の公的調査が、2025年には発生しなかった」ことが背景事情の一つとして確認されています。全体の平均値を動かすほど、大型業務の有無の影響は大きいのです。

調査手法別では、パネル調査(101.4%)、アドホック調査(100.9%)、その他(101.1%)と、いずれもほぼ横ばいという結果になりました。海外との受発注(インバウンド/アウトバウンド)も前年並みで、市場を押し上げる明確な牽引役を欠いたという見方ができると思われます。2026年度の見通しも101.8%と小幅な伸びにとどまっていて、あまりよい材料が見通せていない状況です。


なお、海外取引は2023年度に一時的に急伸したことがあった(インバウンドがシェア5.1%、アウトバウンドが同3.1%)のですが、2024年度と2025年度データではインバウンドが3%強、アウトバウンドが1.5%と「平年並み」に戻っています。構造的な変化が起こったわけではなかったとみられます。
2.模索が続くAI対応
毎年聞いている「経営上の問題点」の選択肢として、今回「AIの実務導入」と「AI活用のガバナンス」という2項目を加えました。結果的に「人件費高騰(48.2%)」と「中堅リサーチャー不足(45.9%)」に続き、「AIの実務導入」は44.7%となり、3位に入りました。「AI活用のガバナンス」も25.9%を占めました。AI対応が一気に経営上の重点課題へ浮上したことが分かります。
また、Esomarからの要請を受けて追加質問として聞いた「AI関連に支出または投資した金額」では、回答社ベースで前年比2.2倍に達しており、回答した会員社ではAI対応が急速に進んでいるものとみられます。


3.インサイト産業8セグメントの状況
JMRAでは引き続き、Esomar提唱8セグメントへの拡大推計を行なっており、インサイト産業全体としての日本の市場規模は5,038億円(従来型調査市場の1.82倍、前年比105.0%)と推計されています(次月号で詳報予定)。

4.その他のトピックス
(詳細データについては『第51回経営業務実態調査』報告書をご参照ください)
(1)
新セグメントへの移行は、なお限定的(報告書 表0―3)
Esomar提唱8セグメントへの拡大推計を行う基礎データ収集の一環として、会員社内でのセグメント別売上情報についても聞いています。 表0―3は会員社の回答内容を尊重し、申告値をそのまま集計しています。細分化すると各セルの回答社数が少なくなるため、あくまでも参考データにすぎませんが、2025年には「h.確立された市場調査」から「a.企業内フィードバックシステム」へ、「g.サンプルパネル提供」から「b.セルフサービスプラットフォーム」への移動がみられました(後者は継続的なトレンドと言えます)。それらを考慮したとしても、「c.」から「g.」の各セグメントが前年比マイナスに落ち込んでいることは、構造変化がまだ十分に進んでいないことを示していると考えられます。
(2)従来型アドホック調査の構造にも大きな変化なし(報告書 表6―4)
例年注目を集め、ご質問をいただくことの多い表6―4(従来型調査手法中のアドホック調査の内訳)ですが、昨年から目立った変化はありませんでした。近年、インターネット調査の比率が漸減していましたが、昨年の54.4%から今年は55.0%と持ち直し、下げ止まりの兆しを感じさせる結果となっています。
(3)弱含みながら、極端な悪化は見込まれていない(報告書 表7)
全体として力強さを欠く状況ですが、先行きが極端に暗いという結果でもありません。
表7によれば、2026年度の調査事業売上高は前年比101.8%と、回答各社は全体として小幅な増収を見込んでいます。

5.所感
(以下は筆者個人の見解であり、JMRAを代表するものではありません)
経営業務実態調査に直接連動するものではありませんが、経済産業省の依頼を受け、四半期ごとに実施している「セーフティネット保証5号に係る継続調査」があります。2025年10~12月期には、企業規模を問わず業況が落ち込み、「2025年度通年でも前年割れとなるのではないか」と身構える局面がありました。2026年1~3月期に盛り返し、名目ベースでは何とか前年比プラスを確保しましたが、業界の勢いに陰りが差した年であったことは間違いありません。
国際情勢は依然として不透明であり、国内では物価高が企業や生活者の景況感を押し下げています。さらに、生成AIの急速な発展も、当業界の先行きを見通しにくくする一因となっています。
しかし一方で、ピンチの時にこそ、次のチャンスの芽がひそかに育っているものです。視点の転換と拡張をこころがけ、新しい芽を見つけ出して、引き続きレポートしていきたいと思います。
※)次月号では、国際的な視点を織り交ぜつつ、リサーチ周辺領域の動向に着目していきます。
以上
2026.07.22掲載