●インサイト産業全体は前年比105.0%、成長を維持
- 課題は世界と同時進行
Esomar GMR日本アンバサダー 一ノ瀬裕幸
1.インサイト産業8セグメントの概況(2025年度)
JMRA第51回経営業務実態調査結果報告の続編です。
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引き続き、Esomarが提唱する8セグメントへの拡大推計を行なった結果、日本のインサイト産業全体の市場規模は5,038億円と見積もられました。これは従来型調査市場セグメントの1.82倍、前年比105.0%となります。

従来型市場調査セグメント(2,775億円)の前年比は名目で101.8%、実質では98.6%(1.4%減)でしたので、8セグメント計ではインフレ率を飲み込んでなお成長を維持したといえますが、市場の勢いにはやや「足踏み」感がうかがえます。
さて、以下は「e.経営コンサルティング/シンクタンク」領域のヒアリング結果等から得られた定性的な分析です。
海外では、生成AIの普及を背景に、経営コンサルティングファームによる人員削減が相次いでいると報じられています。一方、日本では「AIの導入・活用」に関するコンサルティング需要が急増し、コンサル各社の業績も堅調に推移しているとの見方が聞かれます。しかし、「その特需の波が過ぎ去った後はどうなるのか?」が懸念されるところとなっています。AIには代替できない価値を、コンサル業界が継続的に生み出せるかが焦点になることでしょう。
JMRA会員社からも、「コンサル会社からの発注が減っている。AIに代替されているのではないか」という不安の声が聞かれるようになりました。上表の「g.サンプルパネル提供」が前年比95.0%と落ち込んだ背景には、市場全体の伸びの鈍化に加え、案件の一部が「b.セルフサービスプラットフォーム」に移行していることがあるとみられます。「h.確立された市場調査」についても、現時点での比率はまだ小さいものの、同様の傾向がうかがわれています。インサイト産業全体としても、AIやプラットフォーム化の進展に伴い、各セグメントの境界はますます曖昧かつ流動的になっていくものと考えられます。
なお、外資系企業の日本法人については、引き続き情報収集に制約があり、残念ながら今回もテクノロジー主導分野の推計精度を高めるには至りませんでした。率直なところ、突破口を見いだせていない状況が続いていると言わざるを得ません。この点は、今後の統計整備に向けた重要な課題として残されています。
※)今回ご紹介した推計値は、『日経業界地図2027年版』(2026年8月12日発行予定)にも引用される見込みです。
2.『Esomar Top Insight Companies 2026』にみる国際的な概況
Esomarの国際統計『Global Market Research (GMR) 2026』の公表は9月になる見込みですが、同じ元データを用いた『Esomar Top Insight Companies 2026』が(暫定推計として)先行発表されましたので、そのポイントを押さえておきたいと思います。
1) 世界市場は引き続き「リサーチソフトウェア」分野が牽引している
2025年の世界のインサイト産業規模は、暫定で約1,665億ドルと推計されています。その内訳は、従来型市場調査が約600億ドル(前年比104.1%)でシェア36%、リサーチソフトウェアが690億ドル(同111.0%)で41%、ビジネスサービスが約375億ドル(同106.9%)で23%でした。すでにソフトウェア分野が金額・伸び率ともに最大であり、伝統的な市場調査は全体の4割に満たなくなっています。
(ここでいう「リサーチソフトウェア」には、デジタルデータ分析、ソーシャルリスニング、セルフサービスプラットフォームなどのほか、DaaS/SaaS、顧客体験管理などが含まれています)。
世界のインサイト産業売上高(2025年、暫定推計値)

従来型市場調査も世界のインフレ率を上回る成長を維持しましたが、構造的な成長エンジンは明らかにデータ・テクノロジー側へ移っています。
なお、市場調査分野の上位20社を見ると、20社合計の売上高は284億ドル、成長率は5.8%、市場調査分野全体の47.5%を占めています。上位寡占型の構造に大きな変化はありませんでした。

2) 避けて通れないパネル品質問題とAI対応
アクセスパネルを活用したオンライン調査は従来型市場調査分野の最大手法ですが、不正回答や回収率の低下など、パネル品質の劣化に加え、AIの急速な進化への対応という課題を抱え、市場調査分野が抱える弱点の一つとみなされています。クライアント側からの要求も厳しくなっていることは周知の事実です。調査品質は依然として産業の基盤をなすものですが、品質問題への対応と新しい技術の活用を同時に進めなければならない困難な状況が共有されています。
3) 日本市場の位置
日本企業では、インテージが市場調査会社ランキング11位で、インサイト産業全体では44位に入りました。前年のトップ 10からは外れましたが、売上高は年間平均為替レートで米ドル換算されることから、為替変動(今回は円安)の影響が大きいため、順位の単純比較には注意が必要です。国別の主要市場調査会社としては、インテージ、マクロミル(市場調査会社17位)、クロス・マーケティングの3社が掲載されています。
国別のランキングは9月に公表されますが、米ドル換算となるため(円安の影響により)、日本の市場規模や順位は低めに表れる可能性があります。
世界では、個別案件ごとの調査にとどまらず、データ資産、分析ソフトウェア、業界知識、コンサルティングを巧みに組み合わせた事業モデルが成長していると分析されています。これを日本市場に引き寄せて考えると、調査会社には「調査を正確に実施する会社」にとどまらず、データ統合、継続利用型のプラットフォーム、AI活用、顧客企業の業務への実装、経営課題への助言までを含めて、事業領域を再設計することが求められています。パネル不正対策や品質管理は、今後も欠かすことのできない産業としての土台ですが、それだけではソフトウェア企業やコンサルティング企業との成長差を埋めることは難しいでしょう。品質を守り続けることを前提に、そこからどのように新しい価値を生み出すかが問われていると考えられます。
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JMRA国際・産業統計委員会では、今後も統計の精度向上に努めてまいります。関係企業・団体の皆様からの情報提供、ご協力をお待ちしています。
以上
2026.08.18掲載
第51回経営業務実態調査結果解説<前編>はこちら
過去の経営業務実態調査報告書はこちら
『Esomar Top Insight Companies 2026』レポート(英文)はこちら